103 奇妙な生物
26階層に辿り着いた。27階層までもう少しという所で俺達は物陰に隠れていた。
「変異種ですわね」
「もしかして、遭難したのはあれが原因……」
「多分そうと思う」
リザードマンのような体に、蛸の脚のような複数の尾。八メートルに届きそうな巨体。ヤツメウナギのような頭。口の部分に人の衣類のようなものが残っていた。
「行く」
「援護するよ」
走りながら<飛雷>を放つ。魔物がシオリの方を向いた。柔軟に体をねじり、それを避ける。
奇妙な避け方をしているのもかかわらず、その態勢のまま腕が伸び、鋭い爪で反撃してきた。
フランが土の壁を作る。伸びる腕を止めた。さらに<束縛する氷>を使用し、足元に氷を作ってつま先を固定し、動きを止める。
既に逆側から接近していたライラが、<フレイムストーム>を放った。炎の竜巻が周囲に発生した。これだけ巨大ならライラの得意分野だ。魔物は巨大な尾を五本伸ばし、それを防ぐ。
「焼き切れましたわね!!」
どうやらあのミミズのような炎を防ぐ効果はないようだ。そこで三体のゴーレムがレーザーを使う。一つ外れたがもう二本を切断する。
「ナイスですわ!!」
七本を切った。しかし、残り一本を伸ばして、接近しようとするライラに攻撃をする。
「<エアプレス>!!」
レナの風魔法で一本の尾は地面に何とか押さえつけられる。既にシオリが接近していた。
「<滅迅双雷火>」
双剣が魔物を雷で焼き焦がす。さらにライラが巨大化させたフレイルを振り、魔物を吹き飛ばす。凄まじい轟音と共に倒れた。
「…………」
皆がジッとその様子を見ていた。その時、魔物は仰向けの状態で、体の至る所から、新たに蛸のような脚を作り出し、四人に攻撃する。
(再生……シオリの技はほぼ全体を焦がした。だけど腹部を厚くし、さらにマナを集め、ギリギリで守った……)
フランが<チェーンマッチ>、<ヘイト>を使用して攻撃を引き付ける。
「えッ?」
チェーンマッチで作った半透明の鎖が外れた。いや、外れたというよりは脚をねじ切って抜け出した、
と言った方が良いかもしれない。
しかもヘイトの不快感が無いのか、皆に対して攻撃を止めない。
「どうして!!」
(ヘイトを受けた事で痛んだ部分を既に切り捨ててる……)
レナは三体のゴーレムさんが守った。しかし、一体の腕にヒビが入る。他の三人はゴーレムから距離が遠い。移動が間に合わないと判断し、ゴーレムはレーザーを使うが柔軟な動きで避けた。
フランが三人分の壁を作るが、魔物の攻撃はそれを貫く。三人とも吹き飛ばされた。しかし、壁のおかげで威力は軽減出来たようだ。
ライラは自身のスキルによる回復力を利用し、攻撃を受けながらも<フレアスコール>で反撃をする。お互いにダメージを負った。
「皆!!」
レナが本体を魔法で攻撃するも、クネクネと動いて避ける。時には四足歩行になったり、尾で支えたり、または体の何処かから脚を生やすため、態勢などお構いなしに回避、防御、攻撃を繰り出す。
(皆、救援を考えながらだから焦ってる)