101 何時ぞやに買ったアレ
海底ダンジョンを進む。そこでは魚類や水棲生物が跋扈し、宙を泳いでいた。その光景にレナが驚愕していた。フランたちも初めて見たようだが、珍しいモノには慣れている感じであった。
「聞いてた通り……ここは特殊な力で溢れてるみたいね」
俺は口を開けて驚いているリアクションをこなす。
「すごいー不思議だー」
(特殊な鱗や皮膚を持っている。接触するマナを利用して浮遊している。近い表現があるとすれば揚力か、あるいはプラズマアクチュエータ。しかし、その原理からは外れているので適当な言葉が無い。つまり魔法)
「何かあんまり驚いてなさそうね」
「そんなこと無いよ!!」
「ダンジョンだから緊張してるのかな」
「そうだよ!! 分かってるぅ、レナ」
シオリが興味深そうに突っ込んだ。ライラもそれに追従する。二階層の魔物なのでまだそんなに強くはない。
「いつもなら怒るところだけど、救援しないとだしッ」
「うん、急ごう!!」
ゴーレム数体が重い荷物を持ちながらも、器用に段差を進んでいく。高価な物だろうと何となく思った。五階層辺りで魔物の数が増えてきた。巨大なタコに絡めとられ、レナが足を引っ張られる。
「きゃ!!」
「この!!」
瞬時にフランが剣を使い、タコの脚を切断する。
「大丈夫!!?」
「ありがとう!!」
その時、急にゴーレムが振り返り、拳を地面に叩きつけた。俺の横を掠める。小さな毒ヘビが潰れていた。
「信じられなかったけど、こんな高度な防御機能もついてるなんて、頼もしいわね」
「凄い!!」
(良いゴーレムだ。お礼にちょっと強化したろ。フランたちもこのペースなら間に合うな)
階層を降りていくとふわふわと浮いているフグっぽい魔物がいた。ライラが思いっきりフレイルを振ると、スーパーボールのようい跳ねだした。シューっと紺色の煙を出す。
「しまっ。毒ですの!!」
シオリはガスマスクを何処からともなく取り出して装着する。
「なっ……ズルいですわょ……ぅ……」
「ちょっと離れなさいって!!」
「シオリ!!」
俺はゴーレムに持たせている鞄から解毒薬を取り出して投げた。シオリがキャッチするとそれをライラに飲ませる。煙でよく見えないがライラの変な声や苦しそうな声が聞こえる。待ってほしいですわ、とか、むせてブボっゲホゲホという声も聞こえた。
(……大丈夫かな)
視界が戻ってくるとライラがシオリを攻撃していた。シオリはヒュンヒュンとかわす。
「そっか。まずったね。確かに渡された書類に書いてあった」
「霞フグだね」
「それにしてもキョウナイス!!」
「俺に出来る事はこのくらいだから」
「凄かったよ。先輩として誇らしい!!」
「……あんたたちも喧嘩してないで行くよ。てか今のはライラが悪い」
「悪いー」
「私ですのっ」