100 海底ダンジョン
俺は船に乗っていた。それだけではなく、フランたちとレナもいた。
先日、校長が言った。海底ダンジョンの探索に行ってみないかと。面白そうではあったので了承すると、遅れてやってきたフランも行く事となった。
どうやらただの観光の誘いではなく、遭難した探索者の捜索にシオリが選ばれたようだ。フランが俺が居る事を心配していた。ペットは校長に預けた。
魔海域と呼ばれる場所がある。海底にダンジョンがあり、そこから魔物があふれ出る。10~100メートルの怪物が生息しており、通常の船では誰も近づかない。
聞いた話では形は巨大な魚や蛇、タコ、イカ、モササウルスに近いのがいるらしい。
マナが濃い場所を好むので、その海域からは滅多に出てこないが、出た時は大惨事である。海軍が周辺を監視している。
船は特殊な金属で作られており、結界の魔法で保護し、体当たりされても問題ないように設計されている。もちろん完璧ではないが。他にも魔物が嫌がる匂いや音波、電撃などを駆使している。
シオリが内部に入っていたが、窓が無いと残念そうであった。観光用の船じゃないし、耐久の関係で絶対にやらないだろう。
時々水上に出た魔物が居るが、上手く避けて進んでいた。ダンジョンの上に到着するとライラとフラン、レナが顔を引きつらせる。
「こ、この中に潜るの?」
「ちょっと……あれですわね」
「うん……怖いね……」
「大丈夫ですよ。ダンジョン二階層からは空気があります。詳しくは解明されてませんが、魔法の一種です」
「いえ、ダンジョンに行くまでの過程ですわ」
「ああ、それも大丈夫ですよ。魔物が居ない時を狙いますので。それになんか凄い金属で、この船のやつとは違う特殊な結界も張ります。一気に上昇や下降しても体に影響がないように設計されてます。95%の確率で生還出来ますよっ。実力に見合った大体のダンジョンと同じですって。ハハハ」
(所々不安を煽るような説明になってる)
「ダンジョンにはない怖さがあるんだけどね……」
「……キョウとシオリはなんで平気なの?」
「俺? 何処に行っても怖いし、それがさらに怖くなった所で分からないからかな」
「なるほど……」
「95%なら問題ない」
「そうですの……」
「それに。死が遠い感じ」
「はぁ……また訳の分からない事を。直感でしょ。それ」
「それじゃついてきてください」
皆で小型の潜水調査船に乗り込む。窓が付いている事にシオリが喜んでいた。通信機器から声がする。
「魔物が居ないので行きますよ。それでは、彼等を頼みます」
「任せて」
急激に落下する。しかし、体に異常がない。地上と変らないエレベーターに乗っている感覚。
「な!! 魔物が急接近してます!!」
「え!!? は!! こっちはどうすればいいの!!」
「祈っていてください!!」
「は!! 祈るって!!」
窓から見ているとそれはいた。怪獣のような巨体。それが恐ろしい形相で急降下する調査船へと接近する。レナたちから思わず声が漏れる。
「ひぃ!!」
「まずいですわ!!」
「なに……あれ……ッ」
「おー」
(止めとけ……)
次の瞬間、モニターから見ていた船員もフランたちも驚いていた。そこで、シオリが急に俺の方を見て、そのまま天井を見上げた。木を隠すなら森だ。
急接近する怪獣は目を見開く。何かを見ていた。そして、急に速度を緩め、反転すると何処か遠くに泳いで行った。
「よ、良かった……皆さん無事ですか?」
「た、助かった?」
「ええ、特に被害はない。このまま行ける」
シオリが天井から俺の方に視線を戻した。しかし、特に何も言わずに、去り行く怪獣を見ていた。
「大きいー」
ダンジョンの入り口に入る。予めインプットされた経路を進み、ダンジョン二階層で止まった。厳密にいえばここも一階層だが、便宜上そう言っているだけだ。
「ふぅー。やっぱり地面があると安心感が違うわね」
「ですわね」
俺は荷物を取り出す。水で大きくなる奇妙なゴーレムに荷物を積む。
「27階層で行方が途絶えたんだよね」
「そうよ。早速行こう。きっと助けを待ってる」
【とあるダンジョン】
ホブゴブリンのような魔物がいた。ただし角が生えており、色が人に近かった。その魔物の近くでは探索者の遺体があり、返り血を浴びていた。
「コロス……モット……コロス……」
魔物はダンジョンを彷徨っているのではなく、上層に向かう。
さらに別のとあるダンジョンの87階層。ドロドロの何かが蠢いていた。周辺には魔物の遺体があった。
それを包み込むと魔物が消えていった。
「チカラ……オソレ……ナニニ……ニンゲン? フカク……チガウ……アサイ……」
人語を理解し喋る魔物が光を求めていた。
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