99 見てたら欲しくなる
兎が家に来て数日が経った。ダンジョンから帰宅し、玄関に入ると驚愕する。
「なんかペンギンがおる!!」
ペンギンが声に驚いて奥に逃げ込む。そして、タイミングを見計らってフランが奥から現れた。
「驚いた? マゼランペンギンのリンちゃんよ!!」
「ゴ、ゴーレム?」
「そう。偶然知り合いの伝手で。どうしても貰ってほしいって言われてね。どうしてもって言うからさ」
(さてはあの日、部屋戻った後、なにかしたな……)
「そ、そっか。可愛いペンギンだ」
「でしょでしょー!! でも匂いがないのが変な感じ。でも野生じゃないから触っても大丈夫なところは最高!! ああ~かわいい~全種類欲しいな~」
全種とか不穏な事を言っていたがスルーした。部屋に入ると兎がぴょんぴょんと走ってきた。おでこや鼻を軽く撫でると目を閉じて気持ちよさそうにしていたが、気まぐれなようで暫くすると離れていった。
その時、フランの部屋から悲鳴が聞こえた。
「きゃぁあああ!!」
何事かと思って入って見ると、ペンギンが倒れていた。
「どうしたの!!?」
「分からない!! 急にリンちゃんが倒れて!!」
(……また回路の接触不良か。いや、今回は別の部分にも問題ありか。まだその分野は発展途上のようだ)
「シオリは?」
「さあ!! さっきまで居たけど出かけた。そんな事よりなんとかしないと!! 早く獣医に電話しないと!!」
(獣医じゃないって落ち着いて!!)
シオリが居ないようなので回路と臓器と似た役割をしている内部パーツに手を加え、綺麗な状態にする。知識、性格を司る器官などに触れないように細心の注意をはらう。
(良し)
そこで部屋のドアがガチャりと開いた。シオリが入ってきた。俺はもの凄く驚いた。
「うわぁ!!」
「どうしたの?」
「い、今……ペンギンが倒れたんだ」
「大変」
「シオリやばい!! リンちゃんを獣医に急ぎでッ……あ、動いた!! 大丈夫? 良かった。よしよしよし。獣医に行こうねー」
「本当に良かった。なんか分からないけど、助かったみたいだ」
「……なんか違う気が……流れが変わってる? なんか循環が良くなった気がする……」
「……」
シオリがなにかを感じ取ったようだ。兎の方は気が付いてなかった。ここ数日で回路の流れ、構造をなんとなく覚えたのだろう。
決して後ろは振り向かない。シオリとは今、目を合わせたくなかった。それを知ってか知らでか回り込んで覗き込む。目だけはしっかりと絶妙に逸らす。
「不思議」
「そ、そうだな……よく分からないけど……ははは」
そんな会話をしているとペンギンが寄ってきた。動きに愛くるしさがある。撫でてみるとサラっとしたり、モフモフだったりと触り方や部位で変わり不思議な感じだった。
「やっぱりあれかな。私と同じ良い人の匂いを感じたのよきっと……!!」
その後、ゴーレムを専門に取り扱っているお店に行って診てもらった。
誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。