9 危険な森のダンジョン
放課後、校門を歩いているとアヤとバッタリ会った。眼鏡を外してコンタクトに変えていた。さらにポニーテールも止め、髪を切っていた。アヤは気まずそうにしている。
「今からダンジョン?」
「う……うん、そう」
同じ組の人が遅れてやってきた。六人パーティーのようだ。
「すまん、待った?」
「うんん、全然」
パーティーの一人がアヤを後ろに隠し、前に出て睨み付ける。
「またお前か。おい、アヤコ。言ってやれよ」
「キョウごめん。今から三階層に行くの。危ないからパーティー組めないの」
「そっか頑張ってな」
「う、うん」
「無職に構ってないで早く行こうぜー」
「あ、ちょっと待ってよー!!」
(うーん。レナに次教える魔法何がいいかな。今日は他の探索者がどんな戦法を使うのか観察をするか)
新宿の西にある架空市のダンジョン、古代の森に来ていた。珍しい内部で、一帯が森になっている解放感があるダンジョンだ。その代わり不意打ちのパターンが多く、セオリーが通じない事が多々あるので難易度が高い事で有名だ。最高到達階は30階である。
ダンジョンに入る。入口付近は涼しかったが、ある場所では蒸し暑かった。仮面を装着し、早速参考になりそうな探索者を探す。
人の気配がしたので様子を見に行く。木陰に隠れ戦闘を観察する。数人組のパーティーを発見した。
「フハハハハ。燃えろ燃えろぉぉっ。どうせダンジョン内の森はすぐ再生するんだ!!」
「ヒャッハーーーー!!」
「ヒュヒ。イヒヒヒヒ」
「俺たちの勝ちだぁ!!」
経緯は分からないが炎の魔法を手当たり次第に使っていた。ソっとその場を離れた。今のを参考にするのは止めにする。
気を取り直して次だ。川の上流に来ていた。地の魔法で簡易なダムを作っていた。何かを待っている。トランシーバーで会話をする。通信を切るとハイテンションになった。ダムを決壊させて水を大量に流す。
「いっけぇぇぃ!!!」
「よっしゃーー。これで下流の奴等は一網打尽だ!!」
「うぇぇい!!」
「……ん?」
「どうした?」
「何か聞こえないか?」
上流の方で大きな音が聞こえた。大量の水が流れ込んでくる。さらに上流で誰か同じ事をしたらしい。
「シットっ。正気かッ?」
「うわぁぁあああ!!」
「人が居るか確認しないとかッ。大馬鹿者が!!」
「早く逃げるぞ!!」
(これ程綺麗な因果応報は初めて見た)
隠れたまま水をせき止める。やり方は囲うように巨大な氷の壁を作る。水を全て受け止めきれたのを確認した。
勢いが落ち着くと上を少しずつ削り、徐々に水を排出していく。それを自動化する。
「た、助かったのか……」
「でもこれは……いったい」
「ま、まさか。俺の隠れたスキルが覚醒したのか?」
「いや、俺のスキルかもしれない……」
「いや、間を取って俺かも……」
(……一気に壊したろーかな)
また参考にならなかったので次に行く。そこで悲鳴が聞こえた。駆け付けると女性が男性の腕に噛みついていた。
「ぎゃああああ。いだいっ。いだいよぉ」
「キャハハハハッ。キノコ美味ぢいぃぃ美味じぃよォォー」
周辺を観察すると齧りかけのキノコが落ちていた。
(幻覚作用でもあるのか、助けないと!!)
急いで近づいて助けに入る。女性の口を開こうとした時、男性は真顔になった。片手を前に出して拒否する。
「いえ、知っててキノコを食わせたのでお構いなく……」
「え?」
「美味しいッ美味しいー!!」
女性がガブガブと腕をかじり続ける。
「あ、勘違いさせてすみません。お互い同意の上なので」
そう言って逆の腕の古傷を見せてきた。よく見ると体中に古い歯形がついていた。悪質な犯罪ではないのか。念のため魔法で心を覗くと本当に相思相愛だった。
「スリリングな所でやると良いんですよ」
「あ、はい……じゃ、じゃあごゆっくり?」
(見なかったことにしよう)
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