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最弱魔王の華麗なる生存戦略!  作者: 青井銀貨
第2章 魔王城を建てましょう
41/41

41話

 


 三年の時が経った。



 そのころにはもう噂はかなり広がっていた。


 海の近くの場所で子供が空を飛ぶ姿が目撃された。最初はただの嘘だと笑い話だったのが、だんだんと目撃者が増えていった。


 一番近くの村からでもその場所はあまりに遠くて小指の先ほどの大きさでしか見えないのだが、それでもあれは子供に違いないと見たものは口をそろえた。


 興味を持った物好きコミヤがその付近の漁業を営む村で聞き込みをして見ると、村人は確かに見たと鼻息荒く話し始めた。


 さらにここ数年の間でとれる魚の種類が大幅に変わり困惑しているが、漁獲量自体は増えているので嬉しいと言った。さらに小銭を渡して話を聞きだすとどうやら空飛ぶ子供が現れたのと魚の変化は同じくらいの時期だということだった。


 小宮は即座に街に戻って今聞いた話を酒場で吹聴し始めた。娯楽の少ない世界であるから人々は集まって話をせがんできたので、コミヤは大変上機嫌になったという。


 しばらくたっても噂は消えず目撃者は増えていった。さらには大きな音が聞こえるようになり海面が爆発したりする光景も目撃されるようになっていった。


 人々は気になって気になってしょうがない。


 しかし簡単にその場所に確かめに行くことは出来なかった。


 そこには岩壁と山という障害物があるせいで行きにくいということもあるが、そこは隣国との国境に位置していて一般人が許可なく立ち入った場合には法律によって厳しく罰せられる地帯だからだ。


 国としてはようやく何とか取り付けた他国との均衡状態を、一般人のせいで崩されることは絶対に容認できなかった。それほどに三大国が過去の歴史で繰り広げてきた争いは根深いものなのだ。



 単なるうわさ話から大きく変わったのはコミヤの不用意な一言からだった。


「一般人が立ち入れないってんなら軍隊が行って調べればいいんだよ」


 飲み屋でさんざん飲んでいて自分でも言ったことを覚えていないくらいの発言。しかしそれがなぜがいつの間にか、噂を調べるために軍が派遣されるらしいという噂に変化した。


 そうなると今度は地位の高い人間にも話が届くようになった。


 軍を派遣するついでに、どうやら地方の政治状況についての抜き打ち調査も行われるらしい。


 それが本当だとすれば不味いぞ。一番最初に目撃者が出た漁村へ行くのには、うちの領地を通るかもしれない。


 後ろめたいことを一切していない領主などいない。


 噂はさらに大きくなる。


 そしてそれは隣の国にまで広まっていく。


 どうやら向こうの国では国境に軍を派遣するらしい。何をするつもりだ、まさか戦争の準備じゃあるまいな。いや待て、いくら国境といってもあの辺りは岩壁と山と海しかないようなところだ、あんなところになぜ軍を派遣するんだ。


 わからないがいま街はその話で持ち切りだ。おいちょっと待て、軍が動くということは俺たち商人にとって大チャンスじゃないか。


 そうだよ、だからみんな必死になって情報を集めてる。人が動くということは物が必要になるということだ。食料、酒、水、ありとあらゆるものが高値で売れるに違いないぞ、なにせあの辺りは何にもない所なんだからな。


 国境に軍を派遣するとなってはただ事ではない。隣の国においても噂はあっという間に広がっていって上層部までも届く。


 二つの国の中で噂を知らぬものがいなくなるほどに広まり切ったある日、交流都市「チャンポウ」で前代未聞の出来事がおこった。




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