37話
異世界の太陽が降りそそぐ白い砂浜に「真実の口」に似たカエルの石像があらわれた。
「魔物の中に人間と対等に話し合いができるような奴はいるかい?」
魔王 龍笛が言った。
「いきなり過ぎて話が理解できないんだが?」
口をひん曲げながらカエルが答える。
「確かにそうか。それじゃあ金青、説明をお願いするよ」
「僕ですか?」
首元に金色の鈴をつけたロシアンブルーに似た猫が聞いた。
「私よりも金青の方が説明が上手だからね」
「そんなことは無いと思いますけど、分かりました」
そういうと猫は今までの話の要点をカエルに伝えた。
「ふーむなるほど、というかよくもまあそんなにぶっとんだアイディアが毎回毎回出てくるものだな」
「そんな目で見られても私が考えたわけじゃないよ。それで、できそうな魔物はいるのかい?」
龍笛が聞く。
「いる」
カエルがはっきり答えた。
「いるんだ………魔物って何でもありじゃん」
望愛が呟く。
「何でもありというほどじゃない。例えば勇者に勝てるような魔物を出せ、と言われても今の状態では相当難しいと言わざるを得ない」
「へーそうなんだ」
得意げな望愛。
「どんな魔物なんですか?」
「まぁ、いうなれば魔力に侵された人間の魔法使いだな」
「人間なんですか!?」
金青が目を丸くした。
「元、人間だ。種族としては「ウィザード」という呼び名になるな。魔力を持った人間が死ぬと稀にそのまま魔物として復活することがあるんだ。詳しいことは俺も分からないがウィザードとはそういう魔物だ」
「ゾンビみたいなものですか?」
「まあほとんど同じだな。ウィザードの方が魔力を使うことが出来るし知性もある。両方とも運動能力は高くないからそれが欠点だな」
「まるほど。もともと人間で知性があるなら交渉役にうってつけですね。いまのところ運動能力はあまり必要なさそうですしね」
「知性だけで言えば「ヴァンパイア」というのもありだ」
「ヴァンパイア!」
龍笛が突然大きな声を出した。
「どうしましたか?」
「どうしたも何もヴァンパイアとは浪漫があるじゃないか。魔王となった以上はそういう者たちを従えてみたい気持ちはあるよ」
「わかります。なんか格好いいんですよねヴァンパイアって」
「そうだ。さすがは金青だ、物分かりが良くて大変よろしい」
「ありがとうございます」
照れたような顔をする猫。
「ヴァンパイアは知性はあるし運動能力はウィザードよりも高い。プライドは高いが上位の存在相手にはきちんと従うはずだ」
「なるほど、ヴァンパイアもいいですね」
「カエルのお勧めとしてはやはりヴァンパイアか?」
「俺か?うーむ………」
眉間にしわを寄せながらしばらく考える。
「ウィザードだな」
「それはどうしてですか?」
猫が聞く。おそらく龍笛はヴァンパイアであって欲しかったんだろうなと思う。
「さっきの話では人間と交渉したいわけだろ?」
「そうです。かなり難しい交渉になると思います、普通なら人間領に現れた魔王を滅ぼすという選択肢一択の所をなんとか変えさせたいわけですから」
「ヴァンパイアが交渉役をやった場合、相手の交渉役に対して高圧的な対応をする可能性はある」
「そうなんですか?」
「向こうが明らかに自分よりも弱い相手に頭を下げたりができるかどうかが怪しい。種族的にプライドが高い種族だからな」
「なるほど………」
「ウィザードがプライドが低いというわけではないが、もともとが人間である以上は魔物がベースであるヴァンパイアよりも自制は効くはずだ」
「それじゃあ今回任せたい交渉役に最適なのはウィザードですかね?」
龍笛の顔色を伺いながら聞く。
「今の話を聞く限りそれしかないか………」
少し残念そうな龍笛。
「なんかちょっと怖いかも」
望愛が言う。
「人間の魔法使いが魔物になったのがウィザードでしょ?なんかすごい悪い魔法とか使われるんじゃないの?」
「ふん!」
カエルが鼻から息を噴射した。
「ウィザードはそれほど強い魔物じゃない。勇者様ともあろうものがそれくらいの魔物相手に怖がらないで欲しいね」
「見たことも無い魔物なのよ、普通に怖いでしょ」
鼻から息を噴射した。
「怖がるのは向こうの方のはずだ」
カエルが自信ありげに言った。
そして一行は新たな配下「ウィザード」を召喚することを決めた。




