34話
異世界の太陽が降りそそぐ白い砂浜にカレーの匂い。
「決めたのかい?」
大きな鍋いっぱいのカレーを年季の入った手でゆっくりと大きくかき混ぜているマーサが聞いた。
「ああ決めた。あそこで勝負してみようと思う」
龍笛が答える。
「いいじゃないか。あれだけ大きな塔が見えなくなるくらいに海の深いところにあるんだ。もしかしたら敵に見つからないまま行けるかもしれないね」
「私はそうは思わない」
「ほう?」
意外そうな表情をするマーサ。白い砂浜ではキリトとアリアと色とりどりのスライム達が追いかけっこをしながら明るい声をあげている。
「人間たちは魔王を殺すためにいずれ必ずやって来るだろう、それが人間と言うものだよ」
「なるほどね………」
「だから私たちはこれから個々の戦力アップに真剣に取り組もうと思っている」
「ほう!」
「つい最近この世界に来た望愛は別として、私と金青は少々さぼり過ぎていたように思う。魔王城が破壊され大魔王に目を付けらた今になって危機感を感じている。自分たちを守るために鍛え直さなくてはいけない」
ぐつぐつ煮えるカレーには大ぶりな鶏肉らしき肉がごろごろ入っている。
「それは良いことだと思う。だけどここら辺にあんたたちの相手になるような魔物がいるかどうか」
「さすがにそれは難しいだろうね」
「だったらどうするんだい?」
「魔属領へ行く」
魔王は言った。
「どういうことだいそれは?」
「これに関しては望愛にもまだ説明していないから一緒に聞いてくれ」
「うん、わかった」
子供たちの様子を眺めていた望愛が振り返って言った。
「それじゃあ説明をよろしく頼むよ金青」
「僕ですか!?」
「金青の方が説明が上手だからね」
「わかりました、それじゃあ僕から………」
猫は語り始める。
「えーと、結構複雑な話なのできちんと伝わるように話せるのか心配なので、もしわかりにくかったら途中でもいいので言ってください、その都度説明しますので」
「わかった」
「まずまぜ魔族領でレベル上げをしようと思うかと言えば、そちらの方が強力な魔物がいるからです。特に魔王城の周りでは要注意だと言われています。そこでは人間領では考えられない強さの魔物が出てたった一体で千人の人間の戦士を殺したそうです」
「それは私も聞いたことがあるよ」
深緑色のフードを被ったマーサが言う。
「たしかにリスクはあると思いますけどその分だけ早くレベルを上げることが出来るはずです」
「そうじゃなかったら困るわ」
「それと、魔属領でレベル上げをすれば人間たちに僕たちの存在を気付かれないというメリットもあると思います」
「なるほどね」
「しっかりとレベル上げをして準備が整うまでは敵に気付かれない方が良いですから」
「それはいいけどここから毎回魔属領に通うの?」
「普通ならそうでしょうけども僕たちにはその必要はありません」
「なんで?」
「それは魔王は城や食べ物と同じように魂ポイントを使ってアイテムを作り出すことが出来るからです」
「ほう………」
「その中のアイテムに「転移の指輪」と言うものがあります。その名の通り、その指輪をはめていれば指定した場所に転移することが出来るアイテムです」
「何それめっちゃ便利じゃん!」
「実は僕とリュウテキさんは「転移の指輪」を持っているんですよ。僕はこの口についている鈴の中に入れていて龍笛さんは指に嵌めています」
「それって前の魔王城があったところに転移するためのやつなの?」
「違います」
猫は言葉を区切って慎重に言葉を発した。
「この指輪を使えば、魔王シナノの魔王城の近くに転移するんです」




