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最弱魔王の華麗なる生存戦略!  作者: 青井銀貨
第2章 魔王城を建てましょう
30/41

30話

 


 異世界の海の朝日に塔と白い老爺と猫が一直線に並んでいる。


「条件は前と大体同じで良いよ」


 首元に金色の鈴をつけたロシアンブルーに似た猫が力のある美しい瞳で言う。


「この塔への攻撃のエネルギーを反射させる事。僕が許可した者以外は下の入り口からしか入れない事。侵入者は塔には一人、あるいは一体ずつしか入れない事。入り口の扉が閉じた時点で問題が出題され、それを正解したものだけが上の階層に行けギブアップしたものは指定した場所に飛ばされる事。あとは………海水も塔の中に入ってこない事」


 振り返って龍笛りゅうてきを見る。


「これでどうでしょうか、僕なりに考えてみたんですけど」


金青こんじょうに任せるよ。今までそれで誰にも侵入されていないわけだからね」


 少し不安そうな金青こんじょうに対して自信ありげな顔で言った。


「わかりました。それじゃあこの条件で行きましょう」


 頷いて青い空に映し出されている白い老爺と向き合う。


「この条件であの塔を守ってほしい」


「おおむね了解した。しかし最後の塔の中に海水が入ってこない事、というのは必要ないな。もともと魔王城が持っている性質として中に水が入ってくることは無い」


「そうなんだ………思いついた時結構嬉しかったのに」


「魔王城は普通の建物とは違うからな」


「そういえばカエルさんもそんなこと言ってたっけ」


「それはともかくとして今言った条件で構わないな?」


「いいよ」


「それではこれにより「賢者の規則」を発動する」


 白い老爺の手元に金色の分厚い本があらわれて羽ペンでそこにさらさらと何かを書き込んでいく。静謐な空気感に誰も言葉を発することが出来ない。龍笛りゅうてきも望愛もキリトとアリアも色とりどりのスライムたちもただ一心にその光景を見つめる。


 ボウッ。という青い炎に本が覆われるが白い老爺はビクともしていない、こうなることが当たり前といった様子だ。本から白い鎖が飛び出してきた。最初は一本だったものが次第に何本も飛び出してきて鎖は一直線に塔へと向かって走る。


 太い鎖が塔に絡む。上から下まで絡んでいってそのまま塔の中に沈みこんでいく。沈み込んでいって見えなくなった。


「規則は掛けられた。今、あの魔王城は魔法の力によって守られることとなった」


 白い老爺は落ち着いた口調で言い切った。


「なんかすごかった、あれが金青こんじょうの魔法なんだ………」


 役目を終えた白い老爺が消えてしばらくたってからようやく望愛は言葉を出した。


「ありがとうございます。けどなんかあんまり派手さは無いですよね」


「そんなことないよ、全然。あの白いお爺さんって神様か何かなの?」


「まさか!」


 金青こんじょうは大きく笑った。


「呼んだら神様が来てくれるなんてそんなことはないと思いますよ」


「けどなんかすごい威厳があったよ」


「僕の家の仏壇に飾ってあった写真の曽おじいさんにすごいそっくりなんです。前にそのことを聞いたら答えられない質問だ、なんて言っていましたけど僕はそうだと思っています」


「はぁ、そうなんだ………」


「僕の使える魔法はさっき見てもらった通りに「規則」、僕は「ルール」って呼んでますけど、そういうのを物体に込めることが出来るんです」


「なんかそれってすごくない?無敵って感じがする」


「全然そんなことないですよ。って言ってもちょっと前まで僕も過信していたんですけどそれも望愛さんのお陰で違うって分かりましたし」


「だからあれは私のせいじゃないってば!」


「大丈夫です、ちゃんとわかってますよ。勇者召喚玉のせいですよね?」


「わかってるならいいんだけど」


 望愛がまだ少し不満そうな顔で言う。


「僕が決めたルールに反することでも、それ以上の力をくわえられた場合にはあっけなく壊されてしまいます。だから望愛さんが頼りなんです」


「私?」


「僕たちファミリーの中で純粋に攻撃力が強いのは望愛さんですから。僕に至っては完全にサポート系の魔法だと思います。今まではこれで何とかやってきましたけど、これからはきっとそうはいかなくなると思います。人間と大魔王、この二つの大きな力に戦って生き残っていくためには絶対に勇者である望愛さんの力が必要なんです」


「私もそう思うね」


 深緑色のローブを着たマーサが正面から望愛を見つめる。


「さっきのあの白い爺さんも言っていたが守りたいものがあるのなら戦わなくちゃいけない。それが嫌なら蹂躙されるのを指をくわえてみることになるんだよ」


「そうだよね………」


「そうだ勇者 望愛、お前だけが頼りなんだ」


 龍笛りゅうてきもはっきりと言い切る。


「ちょっと待ってよ」


「ん?」


「ん?じゃなくてアンタにも頑張ってもらいたいんだけど。魔王でしょ」


「確かにそう、その通りだ。しかし今の所、望愛には全く勝てる気がしない、それだけは断言しておこう」


「そんなこと断言するな!」


「断言!断言!」


「断言断言断言断言!」


 楽しい言葉を発見したキリトとアリアが連呼する。


「まあまあまあ、落ち着いてくださいよ望愛さん」


「だってこいつまで全部私にやらせようとしてるんだもん」


「落ち着いたらみんなでレベル上げに行きましょうよ。龍笛りゅうてきさんは今の所は勝てる気がしないと言ったので後々きっと強くなりますよ」


「本当かなぁ?」


「大丈夫ですよ、だって魔王ですから」


「それならいいけど………」


 未だ不満そうな顔をしながらも金青こんじょうがいつも通りの賢くて優しい金青になっていることに気が付いて少し安心する。


「次は魔王城の本設置の方に取り掛かりましょう。これに関しては今まで一度もやったことが無いので本当にどうなるのかは分かりませんから」



 少しだけ海に浸っている魔王城を見ながら言った。



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