26話
太陽が沈み始め風が冷たくなってきた海岸線で魔王は高らかに宣言した。
「ちょっとなんかいつもよりテンション高くない?ちょっと怖いんだけど」
金色の髪をした少女望愛の眉にしわが寄る。
「そんなの当たり前じゃないですか!龍笛さんはこれから一国一城の主になるんですよ。これはもう男の夢と言っても過言ではないですよ!」
首元に金色の鈴をつけたロシアンブルーに似た猫が目を輝かせて言った。
「うわっ、なんかこっちの男もテンション高かった………というか魔王城なら前にも立てたことはあるんだからそんなに興奮しなくてよくない?」
「ああ、望愛に木っ端微塵にされたあれのことか」
龍笛がそっけなくいう。
「だから私のせいじゃないってば!勇者召喚玉とかいうアイテムのせいでしょ、私は勝手に呼びだされただけなんだから私のせいにしないでよ!」
望愛の金色の髪が少し逆立っている。前の塔を破壊ししたことを言うと望愛は必ずむきになって言い返してくるのだ。
「あの塔はもともとあそこにあったものですよ。誰も使っていなかったので僕たちが勝手に住み始めたんです」
「そういえば前にもそんな話は聞いたような………」
「魔王城を建てるのには大量の魂ポイントが必要ですからね。それを節約できたのは大きいです。そのおかげでここに魔王城を建てることもできるわけです」
「お城ー?!お城がたつの?お城が立つんだってアリア」
「お城ー?!立派で格好いいお城がいいなーねーそうだよねキリト」
二人は嬉しそうに跳ねる、スラムたちも跳ねる。
「何はともあれどんな城があるのか見てみようじゃないか。カエル」
「わかったよ」
真実の口に似たカエルの石像はどこか気乗りしないような返事をしながらも砂浜に映像を投影した。
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「やはり私たちが求める条件に合うのは塔のタイプだな」
魔王 龍笛が顎をさすりながら言う。
「そうですね。できるだけ岸から離れていて水深の深いところに作って攻められにくいものにしたいですからね」
「ごめんだけどあなた達がどうしてそう思っているのかが分からないんだけど。この虫みたいな形の魔王城は論外だけどこっちのヨーロッパのお城みたいな方が魔王城っぽいんじゃないの?」
「たしかに格好いいですけどそれだと住むところが全部沈んでしまうかもしれないです」
「そんなこと言ったらどれも同じでしょう?あなた達が推してる塔のやつだって沈むでしょ?」
「そうなんですけど塔のタイプだったら下の方の階層は沈んでもいいんです。上の方の階層に住むつもりですから」
「階層?」
望愛が首をかしげる。
「そうでした、望愛さんは前の魔王城を見たことがないですもんね」
「そうよ、私が来た時には勇者召喚玉のせいで壊れていたから」
やけに強調して言う。
「前に住んでいた所もこれと同じような形の塔だったんですけど、そこは5階層だったんですよ、なので部屋が5つありました」
「そうなんだ、これって中が区切られてて一つ一つ部屋になってるんだ」
「そうなんです。この映像だとあまり大きさがよく分からないと思うんですけど、一部屋一部屋結構な大きさがあって、えーと………例えるのは難しいですけど宴会場位の広さはあったんです」
「なにそれ、分かるようでわからない例えなんだけど」
「すいません、自分でも言ったあとで無理に例えなきゃよかったと思いました」
少し落ち込んだ様子の猫。
「別に謝らなくてもいいのに、私も思ったことがつい言葉に出ちゃった。こっちこそごめん」
反省した顔の望愛。
「よく分からないんだけど一つの階層につき大体4,5人の家族で住めるくらいの広さはあるってことかい?もしそうなら私が考えているよりもこの塔はずいぶんと大きそうだね」
空気が少し重くなりかけたところでマーサが言葉を発した。
「そうですね、十分にあると思いますよ」
気を取り直した猫が言う。
「それじゃあ今ここに入る人数だったら一部屋か多めに見積もって二部屋あれば普通に暮らしていくには十分だということだね」
「そう思います。なので下の階は諦めて上の階だけあれば十分かと思います。そうすれば敵が魔王城に入って来ようと思ったら海に潜らないといけないので大変だと思います」
「そんな面倒なことする?私だったら水面から出てる所から入るよ?」
「そうだね私も望愛に賛成だ。この映像を見る限りそこかしこに窓があるだろう?この窓を壊してここから入って来るんじゃないのかい?なにも行儀よく一番下の入り口から入ってくることなんかしない。入りやすい所から入るね」
「それはさせない」
龍笛が自信たっぷりに言った。
「なんでよ、だって普通はそうするでしょ?」
「普通はそうだ。しかし普通にはいかせない、敵には必ず一番下の扉から行儀よく入ってもらうことになる」
「何か策があるんだね?」
マーサが聞く。
「ええ。僕の魔法「ルール」を使います」
どこか誇らしげに猫は言いきった。




