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最弱魔王の華麗なる生存戦略!  作者: 青井銀貨
第2章 魔王城を建てましょう
23/41

23話

 

 太陽がエメラルドグリーンの海と白い砂浜を照らし押し寄せる波が柔らかな音を紡ぎだす天国のような空間。


 金色の髪の子供たちは木の木陰で膨らんだお腹を規則正しく上下させながら幸せそうな顔で眠っていて、その傍には同じく金色の髪をした勇者 望愛のあが手を枕にしながら眠っていて、その周りには色とりどりのスライムが眠っている。


「海に魔王城を建てるだって?そんな話は聞いたことが無いよ」


 深緑色のローブを被ったマーサが言った。


「これは金青こんじょうのアイディアなんだ。是非マーサの感想も聞いてみたいからもう一度説明してくれ」


 背の高い黒髪の魔王 龍笛りゅうてきは視線を下にしながら言う。


「わかりました」


 首元に金色の鈴をつけたロシアンブルーに似た猫が爽やかに答える。


「この世界の人間のことは良く分からないのですが、普通の人間の建築技術を使って建物を作るのであれば海に城を作るのは大変なことだと思います。けど僕たちが使うのは魔法です、魔法に普通の理屈は通用しません。摩訶不思議な力で勝手に出来上がってしまいます。魔王城はカエルを使って建てるんですから」


「それは確かにそうだろうよ、普通に家を建てるのとはわけが違う」


 年齢を重ねた皺が思慮深さを感じさせる。


「であれば、どこに立てても良いことになります。それならば敵が侵入して来にくい場所に作るのがいいです。実際に日本のお城でも川や山などの自然の地形を使って相手が攻めてこれないようにした、という話を聞いたことがあります」


「ニホン、というのはあんた達がきた世界の地名だったね」


「そうです。なので僕たちも自然の地形、海を使います。三大国と言われる3つの大きな国は大陸の上でそれぞれ隣り合ってそれぞれの領土を拡大しようとして争っているようですし、過去には大きな戦争もあったそうです」


「確かにそうだ、そしてそれはいつまた始まるかもわからない」


 少し苦しそうにマーサが言う。


「そのような状況であれば戦争はいつも陸の上で行われていたはずです。人や物資を運ぶのに海を使ったとしても海が戦争の舞台の中心であるはずがありません、経験が無いんです」


 金青こんじょうはマーサーの表情を見ながら果たして自分の言っていることに間違いは無いのだろうか探りながら話す。


「確かにそうだろうね、海で大規模な戦争があったというのは私も聞いたことが無いよ。そのことを考えたこともないくらいに戦争は常に陸の上だ」


「そしてこの辺りは三大国のうちの二つの国のちょうど国境くらいの位置にあります。こんな曖昧な位置に突然魔王城ができれば二つの国は必ず揉めると思います。これは龍笛りゅうてきさんのアイディアですが素晴らしいと思います。国境の問題というのは今も昔も揉める原因になるはずですから」


「なるほどねぇ………」


 マーサは耳たぶを擦りながら考える。


「できれば船を使わないと近づけないくらいに陸から離れたところに設置したいですね。そうすれば兵士を運ぶ大きな船を作らないといけなくなるはずですから」


「しかしそれだと城自体も沈んでしまうだろうよ」


「ですので城は塔の形のものを選ぶつもりでいます」


「塔?」


「はい。縦に長い建物です、以前僕たちが住んでいたのと同じタイプのものですね。それなら水深が深いところに設置したとしても上の方は沈まないはずです」


「下の階は捨てるということかい?」


「そのつもりです。前の塔も僕たち二人だと部屋が多すぎるし広すぎるしで結構持て余していたんですよ。使わない部屋もいくつもありましたし。今はあの時より人数は増えましたけどそれでも半分もあれば十分すぎるくらいだと思いますよ」


「なるほどねぇ………と言っても私にはどれくらいの大きさのものなのか想像もできないけどね。しかし海の中に作るとなると波で壊される心配は無いのかい?」


「そこなんですよね………」


 金青こんじょうの顔が困り顔になった。


「実際にここに来てみて僕もその問題に気が付きました。自然災害は向こうの世界でも当然あってとても人間が想像もつかないくらいすさまじい力を持っているんです。もし台風や地震が来て塔が倒れてしまったりしたら、僕たちはあっという間に海に流されてしまいます。すいません龍笛りゅうてきさん、ここまで来ておいて申し訳ないんですが海の中というのは難しいかもしれません。僕の考えが浅かったです」


 顎をさすりながら二人の話をじっと聞いていた龍笛りゅうてきが言葉を発する。


「まだそう決めつけるのは早いかもしれないな。カエルはどう思う?海に魔王城を建てることは無謀なことか?」


「真実の口」に似たカエルの構造物に視線が集まった。


「まさか!そんなもので壊れるほど魔王城はヤワじゃない」


 口の端が上がってニヤリという表情。


「しかしいま金青こんじょうが言った通り自然の力というものは途轍もないものだ」


「普通の建物ならそうだろうさ、しかし魔王城は普通の建物とは違う。いわば神の定めたルールとでもいうのかな、さっきまで何もない空間から取り出したパンをたらふく食っていたな。それだって普通だったらありえない事だ、しかし現実にガキどもは腹が満たされて寝ている。魔王城も似たようなものだ、普通という概念から外れた存在なのさ」


「それならどんな津波や地震が来ようとも関係ないということだな?」


「ああもちろんだ。普通の自然災害なら影響は受けない。現に前まで住んでいたあの塔だって今までに何度も雷が直撃しているが全く破壊されていないだろう」


「雷が直撃?そんなことがあったなんて全然知らなかった」


 猫の目がまんまるになった。


「常に雷鳴が鳴っているような魔属領で長い建物があれば当たり前に雷は落ちてくる。しかし中にいてそれに気が付かないくらいに特別な建物なんだ、魔王城は」


「はぁ、なるほど………」


 猫の口が開いている。


「それならば金青こんじょうの考えた海上に魔王城を作るという考えを止める必要は無さそうだな」


 龍笛りゅうてきの言葉に皆が頷く。


「魔王城を塔にしようと決めているのなら仮置きでもしてみたらどうだ?そのほうがイメージが湧きやすいだろ?」


 その場にいる誰もが知らないことをカエルはあっさりと言った。



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