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証の行方

…11


大通りから少し逸れた住宅街まで逃げてきたじいさんを、蹴り跳ばして捕まえたが、じいさんはしぶとく暴れだす。

「おぬし!ワシを連れ戻すつもりじゃろ!」

まだ、何も言ってないのに、何か視えたのだろうか?

「とりあえず、一緒に来てもらうぞ。」


「嫌じゃあ!カレンちゃんを落とすまで、ワシは戻らんぞぉ!」

近くにあった椅子の脚にしがみつきながら、悲鳴をあげるじいさん。


「無駄な抵抗するんじゃねぇ!」

そのまま王の所へ連れて行こうとするエリー(仮)。


………………………………………………………………………………………………………………

……………………………………………………………………12


「アンタが女のために行きたいってゆーのは分かったが、せめて王様にひとこと、セシインを紹介したあとにする訳には行かないのか?是非ともそーしてくれ。」

「むむぅ…!?アヤツが、セシインがこの都に来ておるのか!」

じいさんは驚き、そしてまじまじとエリー(仮)を見た。

「…して、お前さんは?あの子を知っているようじゃが、知り合いかの?」

「助けてくれるのはありがたいんじゃが、お前さんも盗賊の仲間だったりしないかと思ってのぅ…」

「疑うのもごもっともだな。

オレはエリー(仮)。何でも屋をやってるんだ。砂漠の真ん中で道に迷ってる所をセシインに案内してもらって王都に来たんだ。


____________________________

とりあえず近くの広場のベンチに座り、じいさんに冷茶を渡す。


「この都は始めてかの?」

「ああ。俺は見ての通り、この辺りの者じゃない。ある人の依頼受けて、この国まで来たんだ。そこでセシインを宮殿へ連れて行ったんだが…」

「ほぅ…」


自分の少ないヒゲを撫でながら相づちを打つじじい。

「おぬしの言う、“ある人”とゆーのは、玉座に座って王なんぞやっておる、ガーヴェイのことじゃろ?」

王様の名はガーヴェイというらしかった。


「どうやら、アイツの身分を証明できる人がアンタぐらいしかいないってことになったもんで、ここまで捜しにきたんだ。」

「…なら、しかたないのう。あの子に会うとするかのう…しかし」

「何か問題でもあるのか?」


どうも歯切れの悪いじいさんに悪い予感を抱きながら、質問すると、案の上、

「それがのう…盗賊にあの子の“王族の証”を盗られてしもうて」

とんでもないことを言い出した。


「ちょっと待て、その“王族の証”って、セシインが持っていたブローチじゃなかったのか?」

「あれは、軽い邪眼避けのお護りじゃ。面白半分で色々魔術込めたら偶然出来たもんじゃよ。素材と時間と労力の割に、大した効果は無いぞよ。」

「え…それを俺等は勘違いしたのか…」

複雑な術式が組み込まれていたから、つい勘違いしていたようだ。


「どんな高い食材を使おうとも、味付けにカレー粉を使えばカレー味になるじゃろ?そんなもんじゃ。」

じいさんの説明に、エリー(仮)は一瞬納得しそうになる。

「分かるような…分からないような…。それで、本物の“王族の証”は何なんだ?」

「短剣じゃよ。最初はあの子に持たせていたんじゃが、ある日、うっかり崖から落として盗賊に拾われてしもて…」

「おいこらじーさん」


てへぺろと舌を出して茶目っ気を出すじいさん。

「バレたら怒られると思って、手紙置いて追いかけることにしたんじゃよ。」

セシインはじーさんのうっかりのせいで一人旅をしていたのか。


「返してもらおうと色々していたんじゃが、どうやらブツは誰かの手に渡ってしもうてのう…」

しょんぼりと手元の冷茶をチビりと飲み、仕方ないからと、占いで稼いでいたらしい。

「それって、下手したら、果てしなく長くなるんじゃないのか?」

「だって、わし小心者だしぃ。正面きって返せだなんて、言えんじゃないか。」

「だしぃって…ってことは、誰が持っているのか分かってるような言い草だが?」

「探索の魔術をかけておるからの王都内にいることは分かっておるんじゃが、」

「なんだ…わかってんなら早いじゃねぇか。」

呆れるエリー(仮)。


「で、王都まで戻って来たまでは良かったんじゃが、つい魔が差して、カレンちゃんにの可愛さに目を奪われてしもたんじゃよ♡」

若い女性の魅了の魔術には元宮廷魔術師でも歯が立たないらしい。

稼いだ金を女に使ったと自供した。


ポッと照れながら言うじいさんにエリー(仮)は改めて、

「おいじーさん…今の話、王様に言っとくけど、いーよな?」

と言い席を立つと、じいさんはエリー(仮)にわしっとしがみつき、

「いぃーーやぁーーじゃぁあーぁーー!」

と情けない悲鳴をあげた。

「やめろ!しがみつくんじゃない!」

「そこをなんとか!一緒に取り戻してくれぇ!ごしょーおーじゃあーーーーー!!」

「結果的に、あんたが金に換えたようなもんじゃねぁか!」


____________________________



じいさんが言うには、探索の術を使って、カレンの店に来る者たちが持っている事までは突き止めたのだとか。

そこで、スミカと一緒に喫茶店でお茶をしていたゼクトを見つけると、エリー(仮)の後ろに隠れたじいさんがぼそりと「こやつじゃよ」と言った。


エリー(仮)はゼクトの正面に立つと、

「なぁ、最近、怪しい武器を手にしなかったか?こっちのじいさんがアンタが持っているって云うんだが…?」

「…それでオレ達に行き着いたってのか。」




ありがとうございます。

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