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少年と再会

5


酒場の男達ーゼクト一行ーに、軽く礼を云うと、エリー(仮)は裏通りに向かうことにした。


(大通りの物売りの証言が正しければ、アイツはまだこの辺りにいそうだが)


裏通りをしばらく歩いていると、何やら言い合う何人かの声が聞こえてきた。


「いいじゃねぇか!ちょぉーっとオレたちについて来るだけで、いいんだぜ。」

「そうそう。金髪の坊や。さっきぶつかってきた時に、オレの腕折っておいて、金も出さずに立ち去るたぁ、ジョーダンきびしぃぜぇ。」

「少しかすっただけじゃねーか!言いがかりも程々にしてくれ!」

いかにもといった大柄の男2、3人が、金髪の少年、セシインを取り囲んでいた所だった。


腕が折れたとか言っている男は、全く痛がる素振りもなく、一目で嘘だと分かった。


(さすがに、これは止めるか)

「そこまでにしておくんだな。」

「何ぃ?!」

セシインを取り囲んでいた男が振り返り、エリー(仮)を見た。

「誰だ?!」

別の男が言う。

「そいつの知り合いでな。金を巻き上げるつもりなのか知らんが、さすがに止めさせて貰うぞ。」

「フン!弱そうな奴が出てきたくらいで、一人で何ができるっていうんだ!

「なめてんじゃねぇぞ!」」

罵声を浴びせながら、それぞれが、ナックルや短剣を装備し、エリー(仮)に向かってきた。


最初の一人のストレートパンチをしゃがんで回避すると、胴に一発、二人目の剣を横に飛んで後ろに回り込み、首元に手刀を入れてやる。

最後に残った男はセシインを人質にすると、

「う、動くんじゃねぇ!こいつの――!」

ありきたりな静止の言葉を言おうとしたので、三人目の男の後ろに“跳ぶ”。


「なっ?!どこに行った?――ぐはっ!」

「うわぁっ!」

背中に蹴りを入れてやると、一緒にセシインも倒れていった。


「あ、すまん。」


三人目の男の下敷きになったセシインを引っ張り出してやりながら、声をかける。

「大丈夫か?」


「いてて…エリー(仮)さん!?

いきなり何すんだ!!ってゆーか、何でここにいるんだ?」

男と一緒に倒された文句と、疑問をひとまとめにして捲し立てるセシイン。


「いやぁ、あんたを人質にしたから、てっとり早い方法をとったんだが……怒ってるか?」


「あったり前だろ!オレ、おっさんに潰される所だったんだぜ!」

ムキー!!

びっくりしたのか、逆上してエリー(仮)に突っかかってくるセシインに、流石に眉尻を下げるしかなかった。

「その…なんてゆーか、すまん。」


……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………6



「全くもー。」

ぷりぷり怒るセシインに、お詫びするため、表通りに出て、露店の焼き立てホットドッグを買い渡してやる。


「セシイン、ちょっと時間はあるか?」

「あぁ、どうしたんだ?」

「俺と一緒に、宮殿に来てくれ。

会わせたいひとがいるんだが、実際に会ってもらわないと確認できない事があって」

「あわせたいひと?」

言いつつ、セシインを連れて、宮殿に向かう道すがら、ざっくりとした説明をしておく。


……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………


王と王妃に取り次いでもらい、セシインを二人の元へ連れて行きしばらくの問答をした後、感極まった王妃が彼をぎゅっと抱きしめた。


「ぐぇっ!」

戸惑い、警戒しているセシインに、王は、

「私たちには一人息子がいてな、12年前の内乱の折、じいやに頼んで匿ってもらっていたのだ。

内乱も治まり、この国も平穏をとりもどしてきた先日、じいやから、私たちの元へ寄越すと言う手紙が届いたのだ。」


王妃の締め付けから逃れると、二人から距離をとり、


「な、何なんだよ!

俺の両親は、ずっと前に死んだんだ!後から出てきて、何が親だってんだ!」


「正直、俺にもあんたが二人の子どもだっていう確証も無いんだが…俺は、二人に頼まれて、あんたを迎えに行ったんだ。」


(といっても都についての話になるがな…始めから知っていれば、もっと簡単に進んだんだろうが。)


さすがに戸惑うエリー(仮)だったが、王に説明を求めると、しれっとした態度で

「それに関しては、じいやが我が子に預けた“王族の証”たるものを渡していると思うのだが、その“証”を提示してもらえるか?」


彼に持ち物の提示を求めた。

しかし――


「大事な物とかは、ほぼ全部じいさんに預けたまま、じいさんはどっか行っちゃったから、そーゆー大事な物は…

あ、そういえば、置き手紙と一緒に、このブローチだけは置いてあったから、つけてたけど…。」


そういって、マントの下に隠していた、装飾の少なめのシンプルな赤い宝玉のブローチを外して、二人の前に見せた。

その宝玉の気配にエリー(仮)も気づき、


「…魔力が込められているのか。」

「いかにも。しかし…コレは、我には“視えぬ”な。」

「視えない?何のことなんだ?」


「この手の物には、魔術師が魔力を込めて便利な道具や目印にしたり、古代文字を刻むものがあるんだ。

これもそれに準じた物に見えるが…もしかして、じいさんってのは…」

「うむ、じいやはバスキード随一と謳われた、元宮廷魔術師だ。」


「俺を呼んだアンタだって魔術師の端くれなんだろ?」

魔術を齧ったものや素質を持ったものでなければ、エリー(仮)“”へ接触できないようプロテクトがかかっている。

特殊な場合を除いては。


「それなりに魔術師はいるんだが、あいにくと、これほどまでの隠匿魔法の術式を解ける魔術師は、この城の中にはいなくてな。この隠匿魔法をかけたじいや位のものだ。」


「なら、じいさん捜し、する他なさそうだな…」

ため息一つつくと、

「引き受けてくれるか!?」


「乗りかかった船だ、気にするな。」

(依頼料の半分も働いてなかったような気もするしな…)



ありがとうございます。

誤字修正しました、ご指摘ありがとうございます。

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