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プロローグ的な放課後の日常

 「今日は何を仰おおせられるのかな……。出来れば楽なやつがいいよな……」


 俺こと嘉紫瀧之丞(かざしりゅうのすけ)は今、本校舎から少し離れた位置にある旧校舎を目指していた。

 玄関を抜けて、階段を三階まで登り長い廊下の突き当たりにある部屋のドアを開ける。

 部屋の中には誰もいない。代わりに机と椅子が二組ずつ置いてあり、カーテンの隙間から漏れ出す陽光がチラチラと動いている。

 この部屋に俺は放課後毎日通っている。そして椅子に腰掛けて本を読みながら待つ。


 待つ……?何をって……?その答えは時期に分かるから少し待ってくれ。


 少し本を読み進めていると階段の方から忙しない足音が聞こえたと思えば、その足音はどんどんこちらに近付いてきている。


 ほら……噂をすれば彼女の到来だ。


 そして部室のドアが勢い良く開かれて一人の女子生徒が姿を現す。


 「嘉紫くん!待った……?」

 「三十分くらいだからそんなに待ってないぞ」

 「それは良かったでごんす!」

 「ごんすってなんだよ……。最近のマイブームでも決めたのか?」

 「別にそんなじゃないよ――?今パッと頭で思い付いてそのまま口から出ていっちゃった」


 てへっとお茶目な仕草をする彼女の名前は枯木惺月(かれきしずく)

 年齢はおそらく十五歳。俺自身が惺月の誕生日を知らないため、正確なことは分からない。

 見た目は茶髪のショートに淡い色の碧眼と顔付きは整っていて、身体付きも……申し分ない。包容力のあるその体型は学校中の男子から憧れの的として崇あがめられているとかいないとか。詳細なことは知りません。


 「じゃあ……早速だけど活動を始めて行くよ!」

 「ほいほい。それで今日は何をするんですかね?同好会会長さんよ――」

 「同好会じゃないもん!ちゃんと部だもん!」


 惺月は分かりやすい怒った表情で僕の方に突進してくる。


 「ちょっ……待て待て――」

 

 突進してきた惺月は俺の目と鼻の先で歩みを止めた。服同士が擦れて息遣いが生々しく聞こえる。


 「ここは……日替わり部!でしょ?」

 「いや……日替わり部同好会が正式名称で――って痛い痛い!頭を叩くな――!」

 「部だもん――!絶対に部だもん!」

 「あだ……痛いから。分かった分かった!僕が悪かったから止めてくれ!」


 俺が自分の意見を折った瞬間に惺月はポコポコと叩くの止めて自席へ戻っていく。


 「早めに部だと認めてくれて良かったよ。このままだと百キロハンマーを出さなくちゃいけないところだったから――」

 「おい……ちょっと待て。殺す気か?そうなのか……?だとしたら護身用にスタンガンを常備しないといけなくなるから勘弁してくれ」

 「じゃあ私は護身用にモーニングスターを持ってこようかな♪」

 「いや……張り合うなよ!」


 惺月は俺とどうでもいいことを駄弁りながら引き出しの中に手を入れてある物を取り出す。

 その取り出したものを自信満々のドヤ顔で机上に叩き付けた。


 「毎回思うんだけど……卓上ネームプレートを置くのは分かるよ?でも、その『部長様は在席中』の文字は要らんだろ」

 「これでも我慢したんだよ?ほんとだったら『団長』って書きたかったんだから」

 「確かにそれは駄目だな。てかそれより今日の活動内容はなんなんだ?」


 惺月は再びドヤ顔をしながら腕を組み、仁王立ちをしている。


 ――なぜ一々ドヤ顔をする……。もう考えるのは止めよう。無駄な気がしてきた。


 「ふふっ……。聞きたい?」

 「聞きたいから聞いてるんだろうが……」

 「そっか――。どうしようかな?教えちゃおっかな?でも止めておこ――」

 「いいから早く教えんかい!!」

 「ひゃう!ごめんなさい……。今週はお悩み相談及び解決部にします……。宣伝は私がしておくので嘉紫くんは私と一緒に相談と解決のために動いて欲しいです」


 ちょっと強めに言ったのが原因で惺月はすっかりしょぼくれてしまった。

 このままだと活動に支障が出てしまう。なので……慰めるという作業を行わなければならない。

 はっきり言って面倒くさいことこの上ないが、惺月が部長なので彼女が動いてくれないと何も始まらない。


 「ごめん……。俺が悪かったよ。帰りにアイス奢ってやるから機嫌直してくれ」

 「ほんと……?」

 「ああ、マジのマジだから――」

 「やった――!帰り何食べよっかな!」


 これがいつものルーティーンになりつつあることに危機感を覚えながらも、まあ……いいかと受け流す。


 これがたった二人だけの部活動――

 日替わり部の日常なのだ。

 自由奔放な惺月と過ごす日々は振り回されることが多くてとても疲れるが退屈はしない。


 「今日は活動予定を伝えに来ただけでもう終わりだから早くアイス食べに行こうよ!」

 「ほいほい。あんまり高くないのにしろよ……。俺の財布が寂しくなる一方だよ」

 「今度は私が奢るから今日はよろしくね♪」

 「調子のいいこったな……それじゃあ色々頑張って下さいよ部長」

 「嘉紫くんがそういうなら……お姉ちゃんに任せな――」

 「やめいやめい――!色々アウトギリギリだ……全く」


 二人で部室の鍵を閉めて旧校舎を出た。

 この一本道の両脇に生えている桜の木からはもう桜が咲いていたという面影もなく、ただ青々とした葉を大量にぶら下げているだけだ。

 明日からまた忙しくなるなと思いながら、財布の中身を確認した。


 「お――い!嘉紫くん――!早く――!」


 惺月は少し前を歩いていて、立ち止まっている俺に早く早くと手招いている。


 「ほんとに困った奴だな……」


 俺はそうぼやき、やれやれと溜め息をつきながら彼女のもとへと向かう。

 明日からどんな悩みが舞い込んでくるかな。


 ――というか……そもそも人来るのか?



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜後書き〜


お久しぶりですm(*_ _)m

自称ハッピーエンドオンリー小説家 廻夢です。初めましての方は初めまして。終わりなきお付き合いを宜しくお願い致します。


さて、本作はとにかく頑張りました。超絶甘々展開も描いていきますので、拡散のほど宜しくお願い致します。

いつも通りに主人公はボッチ気味でひねくれております。ヒロインは今回は元気いっぱいキャラになっております。温かい目で見守って頂けると幸いです。

前作は不定期投稿とさせて頂きます。何卒ご了承くださいm(*_ _)m


今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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