見えない銃を、それなりに撃つ
三田清四郎は友人無し、顔も中の下、特技も無し、日々を怠惰に生きる高校生だった。カーストにすら入れない一匹狼気取りのボッチな彼は、ある夜、夢の中で悪魔に『見えない銃』を貰う。
右手を銃の形にして狙いを定め、発砲音を口にすれば、誰でも、どこに居ようと撃ち殺せてしまう能力に、エナドリを飲み過ぎだ幻影か妄想だと思いつつも、朝の騒がしい教室でクラスカーストトップの男子、藤原拓哉に向けて試してみると、彼は本当に頭部を撃ち抜かれ死んでしまった。
本当にそんな事になるのかと思いながらも、罪悪感を感じたかと思えばそうではなく、ただ殺した事実、死んだと言う事実を受け入れた三田は、次いでテレビに映った裁判中の被告に向けて試せば、速報で射殺された事が流れてしまう。
何故、こんな能力を悪魔が与えたかも分からない。かと言って、何かを為す為にこの力を使う気も、好き勝手に快楽殺人を起こす気力も無い三田だったが、人を殺しておきながら全く罪悪感を感じていない自分に驚いてしまう。
分不相応、持て余して仕方がない能力、されど手放す事もできず、かと言って悩むことでもないと思っている自分の無関心に嫌悪しながらも、興味が湧いてしまう自らに狼狽えながらも、三田はまた人に銃口を向けるのだった。