あの娘に会ってみたい(クロード視点)
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「うっ……。」
今朝も悪夢から目覚める。
寝汗でじっとり湿った夜着が気持ち悪い。
あの日……毒を盛られ死んだ筈だった私は、目が覚めると15歳に戻っていた。時戻り……と言うのだろうか?その時は酷く取り乱してしまったが、ようやく落ち着いてきた。しかし、あの時の苦しみは今でも悪夢という形で自分を苛むのだ。
時が戻ったという事は、私にやり直せと言っているのだろうか?あの時歪んでしまったものを私は真っ直ぐに戻す事ができるのだろうか……?
歪んだ時……。始まりは弟ベルナールとプリシラ嬢の婚約破棄だった。その後侯爵家は取り潰しにあい、プリシラ嬢は塔に幽閉され、私は真相を探るべく彼女に会いに行ったのだが、彼女は無実だった……少なくとも話をして私はそう感じた。だが、それを証明する前に彼女は塔から飛び降りてしまった。
取り潰されたガシアン侯爵家の領地と侯爵位は何故か新しい婚約者となったナタリー嬢の実家のプラドネル伯爵家の物となり、皇太子争いに拍車がかかった。宰相であり、後見の伯父であるヴァロア家も頑張ってくれたのだが、決着が着く前に私は毒殺されてしまったのだ。
おそらく、王妃とプラドネル伯爵家が手を組んで、ガシアン侯爵家を陥れたのだろうと推測されるが、証拠を見つける事は叶わなかった。あともう少し時間があれば、きっと見つけられた事だろう。
だから、時が戻ったのなら、私は今度はあの悲劇を繰り返さない為に動こうと思う。私が、病弱な振りをしているのは王妃を油断させる為でもあるのだ。その為にも今のうちから、プラドネル伯爵家を監視する事から始めようと思う。
しかし、前の時間軸とは少し違う事も起こり始めた。ベルナールと婚約するはずだったプリシラが、中々誓約書にサインしない件だ。プリシラ嬢は、素直で大人しい、悪く言えば従順な女性だった様に思う。父親の頼みに首を振る様な事は無かった気がする。それなのに、サインを拒否した挙句、部屋に閉じこもり、そのまま病気で伏せっているという。そんな娘を心配したガシアン侯爵も父に婚約を白紙にする様、願い届けたらしい。結局、ガシアン侯爵家を後ろ盾にしたい王妃に延期にされたようではあるが……。
何故プリシラ嬢が、婚約したがらないのか、大変に気になる所だ。
コンコン、とノックして、側近のアロンが部屋に入ってきた。
「クロード様、どうやら今日の王妃のお茶会にガシアン侯爵家が参加するようだよ。プリシラ嬢も一緒らしい。」
「そうなのか。」
「ガシアン侯爵家は娘の不調を理由に王妃様の再三の要請を断っていたそうなんだが、遂に断れない所まで来たらしい。渋々来る事になったと、親父が今朝言っていた。」
アロンが首を竦めて言った。
「そうか……。」
ならば、私はプリシラ嬢に会ってみたいと思った。もしかしたら彼女もまた私と同じように……。
「アロン、頼みがある。」
私の言葉にアロンは頷いた。
「プリシラ嬢と話をする時間を作ってくれ。」
「了解。」
アロンは頷くと、セッティングをする為に部屋を出ていった。私も彼女に会うために準備をするとしよう。
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