プロローグ
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「お前とは婚約破棄する。」
第二皇子、ベルナールの言葉に私は呆然としました。彼に護られるように肩を抱きすくめられている女はポロポロと涙を流し、片手で口元を押さえてはいますが、その口角は上がって、私を蔑んでいるのが見え見えです。手で口を隠しているから見えないとでも思っているのでしょうか。
周りにいる彼らの取り巻き達も、私を憎々しげに睨みつけています。私が一体何をしたと言うのでしょう。私は何もしていません。ベルナールが誰と一緒にいようが、仲良くしようが、私は何もしなかった。それは罪なのでしょうか?
その後私は塔に幽閉され、最後まで私を信じ、無実を訴えた私の家族は、家財や領地を没収された後、私の目の前で処刑されてしまいました。
彼は何故、私を幽閉に留め、苦しめ続けるのでしょう。そんなに恨まれる様な事を私はしたのでしょうか。あの女も、数日と置かず私の元に来ては口汚く罵るのです。私と話したのは確か、婚約破棄をしたあの時が初めてだったはずです。何故私はあの女に罵られなければならないのでしょうか……。
もう沢山です。早く私をここから解放してください……。
そんなある日、私は僅かな隙を付いて檻から出て開け放たれた窓から身を投げました。
本当に忌々しい事……。あの日、あの誓約書にサインさえしなければ……。こんなにいわれの無い罪を押し付けられ、断罪され、苦しむ事も無かったのに……。
でもやっと家族の元に逝く事ができます。もうこれ以上、理不尽に苦しむ事も無いのです。
私は落ちて行きながら静かに目を閉じました……。
「……様、」
「お嬢様?」
誰かが私を読んでいます。懐かしい声……私の専属メイドのマーニャ……。
えっ?マーニャ?彼女はあの時亡くなった筈では……?
私はハッと顔を上げました。心配そうに覗き込む茶色い瞳……。マーニャに違いありません。
「マーニャ?」
あれ?私は塔から落ちた筈……。どうしてまだ生きてるのかしら……?
徐ろに周りを見回すと、お父様とお母様が私を心配そうに見ています。それにしても、少し若返ったのかしら?私が子供の頃位の……。
ふと私は自分の手を見ます。ぷにぷにの子供の手……。そして、目の前には……
「!!!」
あの忌々しい誓約書……!!!
と、言う事は……。
どうやら私はあの日に戻った様です。忌まわしい誓約書にサインをしたあの日に……。
「ささ、お嬢様、サインを……。」
お父様の執事が促します。周りを見回すと、お父様とお母様がニッコリ笑って促します。そして、目の前には王様のお使いの方が、サインをするのを待っています。
しかし、私はこの誓約書にサインする訳には行かないのです。サインすればまた、あの忌まわしい出来事が起こるに違いありません。あんな事、もう二度と経験したくありません……。
でもどうすればサインしなくて済むのでしょう……。王子様との婚約誓約書なんて、普通ならとても光栄で嬉しい話に違いありません。でも、今の私はそれが破滅の始まりだと知っています。
「……出来ません……。」
「えっ?」
「……ごめんなさい!」
私は椅子から降りると一目散に自分の部屋に逃げ出しました。一瞬、呆気に取られた大人達が慌てて追いかけて来ましたが、間一髪、私は部屋に逃げ込み、鍵をかけて誰も入れないようにしてからベットの下に潜り込みました。今はこうするのが精一杯です。お父様とお母様、マーニャが外から開けるよう懇願していますが、私は耳を塞いで目をつぶりました。
私は絶対、絶対にあの誓約書にはサインしません!!