トモとハルの場合 待ちぼうけ
ウォーミングアップに書きました。
読んで、戴けたら嬉しいです。
今年の4月から男子校に通い、オレ木ノ内友明と栗原春行は同居している。
夕方、晩飯を食いに帰って来たハルにオレは言った。
「また、浮気でダメになったんだ? 」
ハルはオレの布団の上で、片足抱えて座り白状する。
「しょうがないんだ
浮気相手の名前、寝言で口走っちゃうんだから」
「中学からそれ式で何人ダメにしてる? 」
「それは、俺なりに反省してるのよ」
オレは、未だに想いを伝えられない·····。
「だいたいハルはセックスにだらしないから!
連れ込まないだけ、マシだけど」
あ、ハル怒った。
怒ると直ぐ顔に出るんだ。
「そう言うトモはさ」
ハルはランシャツの肩をはだけさせて四つん這いでにじり寄って来た。
「いつも、俺と居て······」
オレはハルの艶っぽさにドキッとしてしまう。
それを知ってか知らずか、ハルはオレの膝に手を載せて言う。
「俺とやりたいって思った事無いの? 」
そして、オレの耳元にピンク色の可愛い口唇を寄せて吐息マックスで言った。
「筆おろししてやろうか······」
オレはこう見えて初だから、かあって顔が耳まで真っ赤になっているのが解るくらい熱くなる。
それで、思わずハルを突き飛ばした。
「ハルの莫迦! 」
オレはもう、恥ずかしくって立ち上がって部屋を飛び出していた。
「トモ!! 」
背中からハルの呼ぶ声がしたけど、階段を駆け降りて近くの公園まで、猛ダッシュしていた。
最初は喜んでた。
ずっと好きだったハルと一緒に暮らせるって······。
でも現実は、裸見られたりするのが、やたら気になったり、反対にハルの着替えなんかを盗み見たりする自分に嫌気が差したり。
それでも、一緒にご飯食べたりテレビ観たりするのが楽しかったり、何気ない会話とか、寝顔見たりするのが嬉しかったりしたのに、ハルは恋愛に明け透けで、さっきみたいに悪行を自白したりして、その度に辛くなる。
ああ、ハルが見てるのはオレじゃ無いんだなあって。
その内、ハルは付き合ってる奴の家、止まり歩いたりするようになって、アパートに寄り付かなくなった。
毎日、気紛れで帰って来るハルを待つ日々······。
一時間くらい公園のブランコに座って時間潰してから部屋に帰ると、ハルの姿は無くて······。
また誰かの家に遊びに行ったんだ。
もしかして、避けられてるのか?
明日、どんな顔して逢えばいいんだろう·····?
次の朝、教室に入ると、ハルはもう来ていて仲のいい連中と莫迦笑いしていた。
そして何事も無かったように「おはー」って挨拶して来た。
だからオレも何事も無かったように「はよー」って言った。
6時限目が始まる頃、オレの横をすうっと通って行った野坂が、紙切れをオレの手の傍に置いて前の席に座った。
四つ折りの紙を開いたら、
「放課後、技術室で待つ」って書いてあった。
いい度胸してるじゃん、野坂······。
野坂を見るとこちらをちらっと振り返った。。
野坂はわりと可愛い顔してるので、先輩たちにも人気在ったりした。
狙ってる奴、結構居るんじゃないかな。
放課後、技術室に行くと野坂はもう来ていて、オレを見て嬉しそうに笑った。
「来てくれたんだ」
「来いって言うから来るだろう」
オレは野坂の前まで行くと言った。
「それで、何の用なの? 」
野坂はいきなり振って来た。
「栗原春行と付き合ってるの? 」
「そんなの、野坂に関係無い········」
「あるよ!
俺、木ノ内が好きだから! 」
野坂は哀しいくらい真剣な目でオレを見詰めた。
同性にコクるのは、並みじゃない勇気がいる。
片想いに身を焦がす者は皆、あんな哀しい目を向けるのか·······。
オレもあんな哀しい目をハルに向けていたんだろうか?
あんな哀しい目で終始みられたら、居たたまれないな。
だから、ハルは········。
アパートの部屋でそんな事を考えていたら、ドアを開ける音がして振り返ったらハルが立っていた。
「ハル! 」
ひと目でハルが沈んでいるのが解った。
「野坂との事、どうするつもりなの? 」
オレは驚いて言った。
「なんで、知ってるの? 」
ハルはオレの隣に腰を下ろして言った。
「そんなの全部見てたからに決まってるじゃん」
は?
「何、らしくない事してるのさ」
ハルは凄く真剣な顔して、とんでもない事言い出した。
「あいつと付き合うなら、俺を抱いてからにしろよ」
ちょっ·····それって、まるで······。
「ちょっ、ちょっと、タンマ
さっきから変だよ
いったい、どうしたのさ? 」
さっきから、凄い酒の匂いする。
ハルはプイッと横を向いた。
「どうしたの?
さっきから、本当にハルらしくないよ」
オレがハルの肩に手を置いたら、ピクッてハルは反応した。
え?
なんで?
ハルの目から、涙が溢れ出した。
ハルは苦しそうに笑って言った。
「ははっ······
俺らしいって何だろうな
自分が解らなくなったよ」
そう言ったかと思ったら、ハルはオレにしがみついてきた。
「もう、限界なんだ
俺を抱いてくれよ
野坂なんかみるなよ
もう疲れたんだ
トモを避けて友達の処、泊まり歩くのも
トモを好きじゃない振りするのも········」
「トモのことが、ずっと好きだったんだ」
ハルは言いたい事言ったら、人の膝を枕に眠ってしまった。
酔った勢いのたわ言じゃないよね。
涙の告白は嬉しかったけど、コクって即爆睡って、感動薄れるよなあ。
「····ん···っつぅ······頭いてぇ······」
起きた·····。
「明日、野坂には断るつもりでいた
即答じゃ、野坂があまりにも気の毒な気がしたから」
ちょっとずるい気もしたけど、オレはハルの目を覗き込んで言った。
「オレもずっと、ハルが好きだったんだ」
ハルは驚いて大きく目を見開いた途端。
ゴツン!
ハルが急に起き上がるから、額と額を思い切りぶつけた。
ハルは二日酔いの頭痛と相まって片目つぶって、かなりグワングワン来てそうだ。
額に手をあて、オレを指差して叫んだ。
「うっそだーあ!
夕べ、どついたじゃん! 」
オレもジンジン来てたけど、ここは引けない。
ハルを指差して叫んだ。
「そー言う自分は、オレ避けて別な奴好きな振りしてたじゃん! 」
ったく、急に起きるなよ!
痛いなあ。
ハルはちょっと甘えるような目をして言った。
「じゃあ、証拠見せてよ」
オレは身を乗り出して言った。
「証拠じゃなくて、欲求······」
オレとハルは指を絡めながら口唇を重ね合わせた。
次第に熱が籠って来て口唇だけじゃ物足りなくて、舌を絡め合わせていた。
オレはハルの頬に愛撫しながら、ネクタイを解いてワイシャツのボタンを外して剥き出しになったハルの胸に口付けた。
「トモはノーマルだから、絶対受け入れて貰えないと思ってた」
「オレは恋愛対象外なんだって諦めてた」
互いに壁を作ってたんだ。
壁が壊れたら、
こんなにも溶け合える········。
ハルはオレの肩に頭を載せて言った。
「実は浮気の相手は、いつもトモなんだ」
「え? 」
ハルは起き上がって赤らめた顔で、オレの顔を覗き込んで言った。
「寝言でトモの名前連発してるらしいの、俺·······」
そんな告白されて、どう応えろって?
「そうなんだ·······」
ってしか、言えないじゃんさあ。
でも·······
めちゃめちゃ、ラブラブじゃん!
fin
読んで戴き、有り難うございます。
何の変哲も無いBLでしたが、楽しんで戴けたら倖せです。