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なんだろう?いいにおい。あたたかくて、やわらかくて、心地いい。
立野くんはもっともっとそれらが欲しくて抱きしめました。
「こっの、変態!」
バチコーン!!!
思いっきりビンタされてしまった。
ヒリヒリするほっぺたを押さえながら、自分はどうしたんだっけ?と立野くんはぼんやり考えました。
「バカ!エッチ!」
ミドリちゃんがプンスカ怒っています。
昨日の晩、居酒屋でほろ酔いになってアパートに帰って、それで、1つしかないベッドをミドリちゃんが占領して眠りについて、立野くんはソファで寝ていたはずなのに、夜中トイレに行った後寝ぼけて同じベッドに寝ちゃったのです。
「ごめん」
「いや!」
「悪かった」
「ダメ!」
「許して」
なんか本当に涙目になった立野くんを見て、ミドリちゃんはやっと落ち着きました。
「AIロボットは夜はいつもどうしてたの?まさか今みたく抱きまくら代わりにしてなかったでしょうね?!」
「AIロボットは、夜、眠らないんだ。原子力エネルギーで動いているから充電する必要もないし、キミみたいにやわらかくていいにおいはしない」
「!?」
「あっごめん!」
殴られそうになって、口は災いの元だと思い知った。
「AIロボットの方のミドリちゃんはどうなったんだろう?」
「あなた、昨日の晩、博士に電話して、しばらく私の代わりに歌手の仕事させるって決まったじゃない!私は、三年ぶりの休暇なのよ」
「記憶がない」
「もうっ!いいから朝ごはん作って!」
「えっ?」
もしかして、家事全部自分でやんなきゃなんないのかな?
立野くんはあまりにショックに、しばらく立ち上がれませんでした。