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「シークレットゲストが行方不明?!」
「あっ!俺たち心当たりあります!」
大学祭の主催者側で学生たちが右往左往していた。
昨日のゆで卵をもらいに行った学生が偶然同席していて、他の学生を引き連れて立野くんのアパートにミドリちゃんを迎えに行きました。
「どうしたんですか?」
「お願いします!時間がもうあんまりないんです!」
ミドリちゃんは女子学生が手伝って黄色いステージ衣装に着替えさせられました。
「ラッパは持った?」
「いいえ、でもあの」
「早く早く!」
「吹奏楽部からラッパ借りてきました!」
「さあ、行こう!」
パパパパラパ!
金色のラッパが高らかに鳴り響きました。
「私の歌を聞いて!」
客席側からミドリちゃんが走ってきて、ステージに飛び上がりました。
観客は騒然となりました。
マイクをひっつかんで、ビートに乗って、ミドリちゃんが踊ります。
「『大天使ラファエル』聞いてください!」
わあああああ!!!!
今、東よりの風に乗って現れる
大天使ラファエル
私の心を癒やしてくれる
愛しいあの人へ届け想い
ラファエル
癒やしの心
憂い、慈しみ
あの人の目を開け!
ラファエルの力
ラファエルの癒やし
ラファエル、ラファエル
大天使ラファエル!
歌の伴奏に合わせてラッパが鳴る。最後の審判の時を表すそうだ。
「大成功じゃん!」
学生たちが大満足だった。
「ミドリちゃん?!」
ビクッ。
声をかけられて明らかにびびっているミドリちゃんがいた。ただしこちらはサングラスにカツラに鳥打帽で完全に変装している。
「だめじゃないか。大学に来ちゃ」
「え?」
「目立つと困るだろ?帰るよ」
立野くんが手を差し伸べて、ミドリちゃんはそっとその手をとりました。
「帰るってどこへ?」
「決まってるだろ、アパートだよ」
「でも私…」
「今日はバイト休みだから、晩は居酒屋に行こうかな」
「居酒屋?行きたい!」
「?食事できるの?」
「できるできる。ビール、ジョッキで。焼き鳥食べたい!」
「????…まあいいか」
赤提灯に入って、カウンター席で二人は異様に盛り上がりました。
「おやじー焼き鳥、5、6本見繕ってくれや」
「あいよ」
カンパーイ!
ビール、ジョッキでいい飲みっぷり。
「ミドリちゃん、飲み食いできるんだ。AIロボットなのに」
「!!」
ミドリちゃんは左手の袖をまくりあげて立野くんに見せた。
「ロットナンバーが、ない…」
立野くんはさあっと血の気がひいていきました。