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勇者の敵は【闇】の者  作者: 龍血
第一章 勇者への道
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第八話 謎がある支部会長と事を進める為の交渉

 

「いや、間違えた。陛下、どう致し……え?」


 ここが公の場と思い出し、言い直すカナエだったが、イビーデを見た途端に冷や汗を流し始めた。


(何者?この圧は魔族、いや魔族ではここまでいかない。では魔王か、それもどうかと思う。なら、悪魔なのか?)


 カナエはイビーデから感じられる圧(別にイビーデが発している訳では無い)で、瞬時に上位者と判断した。


 元々、冒険者として旅をしていたカナエは魔族と戦う時もあった。

 その時は勝ったが、魔族というのは人間程甘い相手では無いと学んだ。

 それもまだ下位魔族か中位魔族くらいの実力者だった。


 それから考えると上位魔族や魔王も人間一人では勝てない相手だろうと判断出来たが、それでもイビーデから感じられる圧はその上位魔族や魔王よりも上位者と判断した。


 常に戦う事の多い冒険者であるカナエ。

 現在はその仕事も少なくなっているものの、貴族や王族の指南役として呼ばれる事もある。


 王様を名前で呼ぶのも王族の指南役をしている時や王様自身が修行して貰う時もあったので、気軽に言える立場でもある。


 だからと言うか……


「カナエさん」


 王様は見た目で三十代後半から四十代に対し、カナエは見た目では二十代と判断してもいいのだが、実際は王様よりも年齢は上の事もあり、プライベート時ではこの様に呼んでいた。


「ほぅ、この空間に入るとはエルマの指南役は何か秘密がありそうですね」


 この思考が加速している空間にそうそう入れる者はいない。

 この国一番とされる親衛隊隊長は今ここにいるにもかかわらず、この空間には入る事は出来ていない。


 対してカナエはこの国の冒険者ギルドの支部会長。

 冒険者ギルドの中では高いものの、実力的にははっきりした序列は無い。


 冒険者にもランクがあり、序列はあるものの、カナエは引退した身である為、実力はよく分かっていない。


「あの子を知ってる?」

「あの三人の友人らしいです」

「「勇者」が言っていた友人という事?」

「そうだと思います」


 世間は「勇者」とその一行がこの王都にいる事は知っている。

 しかし、個人名までは明かしていない。

 なので、カナエが疑問に思うのも当たり前だが、すぐに王様は「勇者」一行と友人だと応えた。


「と、言っても『イビーデ』としての友人ですけどね」


 イビーデというの名ははっきりと言えば偽名。

 しかし、この体ではイビーデ。

 そして、この体のイビーデと「勇者」一行が友人なだけで、本来の姿での友人では無い。


「来てしまったのならしょうがないですね。話を聞かれても問題無いですしね」

「話?」

「「勇者」一行の故郷の近くにがオーガを率いるオーガジェネラルが出没し、犠牲になった者は「勇者」一行の友人だった」

「それは冒険者ギルド経由で聞いた。でも、犠牲者までは詳しく知らなかった」


 冒険者ギルドは世界中に存在する組織。

 もちろん、サークングリマ王国でも村までとはいかないものの、ほとんどの街に存在する。

 そして、冒険者はバラバラに行動するので、情報も集まりやすい。


 そんなカナエは冒険者ギルドサークングリマ王国支部会の支部会長。

 国中の情報が自分のところに届く。


 ここに来たのもその案件で来たのだが、謎の気配により迅速にここに来たのだ。


「でも、その犠牲者って貴方よね?」

「はい、そうですが?」

「何で居るの?」


 それは先程の王様と同じ。

 そもそも、貴族の使いからの報告と冒険者ギルド内の特に支部会長に届く報告は信憑性は高い。

 だから、犠牲者も本当に居るというのが真実。


 まぁ、その説明は王様の時と同じなので省くが、それと同時に王様が単なる村の子を暗殺しようとした事がカナエに伝わる訳だが。


「痛っ!」


 王様はカナエのゲンコツを食らう。


「仮にも普通の村の子に暗殺者を仕向けるな!」


 本来、暗殺者は戦争においては敵の指揮官、都合の悪い相手、事実のもみ消しがあるのだが、それでも何の罪も無い子供を殺していいという訳では無い。


 もしも、貴族や王族の一族だったらしょうがない部分もあるかしれないが、単なる村の子に特に何も無い。

 今回の「勇者」一行と友人であってもそれは変わらないだろう。


 それと「仮にも」と言ったのは情報の中では普通の村の子だが、事実では目の前の到底普通では無いからである。


「鍛え直そうかな。今は「狩人」の育成があるから無理だけど、それが終わったらビシバシやらせて貰うか」

「え?我は王で仕事があるんですが……」

「時間くらい作れ!これは大事な事だからな!」

「はい……」


 王様にここまで言える者はそうそう居ないだろう。

 しかし、王様は怠けている。

 鍛えるのは大事。


 そもそも王様の仕事って言うのは大抵が最終決定権で、偶に政策に口を出すくらいだ。

 ほとんどはそれぞれの部署において行われている為、王様は提案の合否、問題点、解決法と意見を求められる事が多い。


 だから、別に王様が必要という訳でも無い。

 まぁ、仕事の時間に組み込まず、趣味の時間に組み込めば政治に影響は無いだろう。


「話を戻してもよろしいですか?」

「問題ない」


 少し脱線してしまったが、今回イビーデが王様の前に現れたのは犠牲者をセイク達に知らせる為である。


「それにしてもその犠牲者って生きているんだよね?」


 その犠牲者が目の前の者ならば犠牲者ではない。

 つまりは被害が0となる。


「確かにそうなりますが、それでは困るんですよ。私、いえイビーデとしてはあの場で死んで貰う必要があるのです」

「どんな理由があるの?」

「未だに「勇者」一行であるセイク達はまだその自覚がなく、魔族を殺す事に対しての事は指南役の皆さんにお任せしますが、魔物に至ってはゴブリンやオークなどの低ランクしか知りません。なので、油断を招く可能性があります」


 イビーデはあえてセイクを悲しむ顔を見たいが為にやっているとは言わず、「勇者」一行として必要な事を教えている。


 魔族に対しては殺すのに抵抗はあるが、油断出来ない相手だという事は根付いている。


 しかし、魔物は幅多い。

 普通に過ごす分にはゴブリンやオークを倒せる程であればいい。

 でも、災害級であれば簡単に殺させる事も普通にあり得る。

 災害級自体は普通に存在しないし。


「それともう一つ、彼らは私をそれなりの実力者と判断しております。例えば、今回のオーガ一体くらいなら倒せると思っています」


 流石に当時は本来の力を使う訳にはいかないので、単純な身体能力だけで倒してきた。

 ちゃんと実力が上昇した様に見せる事も大事にしながらでだ。


「確かに彼らは強いと言っていた」

「それをタジンクは「勇者」一行じゃないから省いた訳だ」


 単純な実力で言えば、セイク達の認識でのイビーデの実力は騎士団、それも王都の騎士団に居てもおかしくない。

 現時点では圧倒的にイビーデの方が上だと判断している。

 それは「勇者」一行としてのステータス上昇を含めても同じ事だ。


「つまりは貴方が死んだ事で災害級というのはそれだけの実力を持つと判断出来る訳ね。でも、やっぱりそれでは戦意を無くすのでは?」

「そうなるならそれまでの話。どちらしても旅に出たところで失敗する時もあるでしょう。負けて死なれては困りますからね。その点、今回は騎士団主導に討伐が組むんでしょうから、オーガ一体でも倒せたら上々でしょうね。負けそうになっても助けはいますから」

「確かに今回は保険があるか」


 これから「勇者」一行として行動する場合はそのメンバーだけで対処しなけらばならない。


 しかし、今は騎士団がいる。

 問題など起きたりしないだろう。


「ついでに上手くいけば戦意を高めて欲しいところですね。それが恨みだろうとね」


 手っ取り早く戦意を上げるには魔物に対して恨む事である。

 倒したいまたは殺したいという強い思いが攻撃力を上げるだろう。


 結局、今回は博打なのだ。

 戦意を上げるのか、戦意を無くすかの二つだ。


「それじゃあ、あまり長引いてもいけないのでこの辺で。エルマの指南役の所在はこちらで調べさせて貰います」

「見つけられるといいですね」


 イビーデはカナエに何かあると判断し、調べる事にする。


「今から元に戻りますが、この空間になる前の状態になるので、王様は玉座に座り、指南役の方は一度部屋から出た方がいいと思います」

「タジンクの腕は?」

「ちゃんと全て戻しますよ。ついでに王の精神状態も安定する様にしておきますのでね」


 今のところ、王様は謁見の間の下位者の位置に、カナエはその後ろに居た。

 しかし、本来は王様が玉座に、カナエがかろうじてこの王城の中で走っていたという事なので、その位置に戻る必要がある。


「それと最後に一つ。今起こった事は口外せず、そしてが居たという事を内密にお願いします」

「分かりました」

「分かったよ」


 王様とカナエは移動する。

 イビーデは隠れる。


 そして、時は戻り始めた。

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