第五話 修行開始(一)
少し長くなりそうだったので、エルマは省きました。
翌日、セイク、ミル、エルマはそれぞれの指南役のところに行っていた。
ーーーーーーー
セイクは今飛竜騎士団の修練場に来ていた。
目の前に全身鎧のホーメルン・ライトが立っていた。
「貴殿は剣の嗜みがあるか?」
「少しはありますが、振れるだけです」
「そうか」
セイクは「勇者」の鎧を着て、剣を持ってきた。
「勇者」の鎧と剣は金色に赤色の線が所々にあってカッコ良くなっている。
セイクの基本情報はこの様になっている。
名:セイク
レベル:3
称号:「勇者」
能力:「光」…限られた者しか与えられない属性。
ついでに「勇者」の鎧と剣は
名:「勇者」の鎧
能力:防御力超上昇、筋力上昇、脚力上昇、全耐性、質量減少、形状変化、不壊、「勇者」専用装備
名:「勇者」の剣
能力:攻撃力超上昇、筋力上昇、質量減少、アンデット特性、魔族特性、形状変化、不壊、「勇者」専用装備
この二つさえあれば、大抵の魔物や魔族にも勝てるかもしれない。
しかし、これには技術力を上げてくれる訳では無い。
剣術一つも無いだけで戦闘力は下がる。
その為の修行である。
当のセイクは村で弱い魔物を倒せるだけで、剣術は一つも覚えた事は無い。
「やはり、貴殿は一からの方が良いだろう」
そう言って、鎧を脱ぎ始めた。
その下には少し質の良い服を着て、ズボンもそれなりに質が良い。
そして、顔は優しそうな顔だが、頰に傷が縦に入っていた。
これが歴戦の騎士と言えるのだろうか。
ちなみにホーメルン・ライトは元伯爵家次男にして今は士爵くらいの身分を持つが、いくつかある騎士団の中で、よく出動する飛竜騎士団はそれなりに身分が高く、その団長であるホーメルンは子爵(伯爵以上では無いのは親よりも上というのを避けた結果)くらいの身分になる。
「貴殿も鎧を脱ぎ給え」
「?」
何故自分も脱ぐのだろうかと疑問に思うセイク。
「そんな力だけの装備を着ただけで強くはなれないと思え。真の敵は魔物では無い、武器を扱う魔族だ。怪しげな術も使う。卑怯な手も使う。魔族とは勝つ為なら手段を選ばない。その様な敵に無防備で戦うというのか!」
ホーメルンが言いたい事は「強さとは装備では無い。自分自身だ」と言いたいのだ。
魔物くらいなら弱い奴から倒せば、自然とレベルが上がり、強い奴にも勝てる様になる。
しかし、魔族は武器を扱うし、魔法も使う(魔物でもいない訳では無いが)し、手段を選ばないので卑怯な手も易々と使う。
そちらの面では装備はサポートなどしてくれない。
結局、自分自身でどうにかしなればならない。
セイクは言われた様に鎧を脱ぎ始めた。
「何脱ごうとしているんだ?」
「え?脱ぐって言ってませんでしたか?」
言われた様にしていたのに怒られてしまった。
「陛下から教えられた事を忘れたのか?」
「勇者」とそれ一行の専用装備は特別で、装備とは別に指輪が渡され、指輪は専用装備を収納する物だ。
だから、わざわざ鎧を脱ぐ必要が無い。
「すみません、忘れていました」
セイクは王様に教えられた行動する。
それは特に難しい事では無い。
その装備に指輪を当てるだけで、光に包まれて指輪に収納される。
ただ、それだけが収納する方法では無い。
「まずは基礎を教える。これを使い給え」
そう言って、ホーメルンは木剣をセイクに渡す。
「これから貴殿に剣術を教える。持ち方から構え、振り、型、動きと教える事は多いと思え」
「分かりました」
「合間に魔物との戦闘方法も対人用の戦闘方法も教える」
「対人用?魔族だけじゃないんですか?」
「貴殿は村に居たから分からないと思うが、世の中には盗賊という人を襲う者達や亜人だって全員が優しい訳では無い。種族の主張が強い者や魔族側の者もいる。その様な者達は容赦なく襲ってくる。その為の修行だと思え」
「分かりました」
セイクはホーメルンから剣術や戦闘方法、そしてワイバーンの乗り方もちゃんと出来る様に頑張る事になる。
ーーーーーー
ミルは宮廷魔術師所有の修練場兼実験場にやって来た。
「さて、貴女は魔法の嗜みがありますか?」
「いいえ、ありません」
「そう」
ミルは「魔術師」のローブを羽織り、杖を持っていた。
ローブは赤一色、杖は黒い棒にその先が銀色の渦巻きがなっていて、その中心に同じく銀色の玉がある。
ミルの基本情報はこの様になっている。
名:ミル
レベル:2
称号:「魔術師」
能力:「魔導」…魔導を極めた者。
ついでに「魔術師」のローブと杖は
名:「魔術師」のローブ
能力:魔防超上昇、魔力上昇、防御力上昇、全耐性、浮遊、質量減少、形状変化、不壊、「魔術師」専用装備
名:「魔術師」の杖
能力:魔攻超上昇、魔力上昇、攻撃力上昇、質量減少、詠唱省略、形状変化、不壊、「魔術師」専用装備
この二つがあれば、魔法を使ったところで魔力はあまり減らないし、魔法攻撃や魔法に対する防御は強い。
近接面でも補助されている。
「確か、勇者一行の「魔術師」は知識だけはあるんでしたっけ」
「そうですね」
基本的に勇者とその一行の能力というのは覚えているだけで、実際には使えない能力が多い。
その中で「魔術師」は魔法またはそれを発動する為の詠唱を覚えているだけで、魔法の使い方を知っている訳では無い。
だから、勇者一行は一からやる必要があるのだ。
「まずは貴女の魔力を測りますか。ローブと杖を仕舞って」
「使わずにですか?」
「常日頃からローブと杖を持っている訳ではありません。その場合ら基礎魔力を使います。というか、ほとんどの人は基礎魔力になります」
ミルは言われた様にセイクと同じ行動をしてローブと杖を指輪に仕舞った。
「マリアさんはどのくらいなんですか?」
「う〜ん、宮廷魔術師の中では三番目だと思います」
マリア・ディグザレムは宮廷魔術師の中で三番目の実力者。
宮廷魔術師は宮廷魔術師長、宮廷魔術師副長の次に宮廷魔術研究室と宮廷魔術団が存在する。
宮廷魔術研究室はその名の通りに魔術を研究する部署で、宮廷魔術団は王直属の親衛隊と同じで、実力者だけを集めた部隊。
宮廷魔術団は親衛隊程仕事が無く、どちらかというと宮廷魔術研究室の方を手伝う事が多い。
それでマリアはその宮廷魔術団の団長を務めている程の実力者である。
今日はフードを外し、顔を出している。
マリアは三、四十代くらいの顔立ちをしていて、金髪の長髪であった。
「これが魔力測定器」
マリアが取り出したのは水晶玉。
「触れると魔力を感知し、魔力量を色で判断します。魔力を持たない者が白色、使う事は難しいが持っている者が黄色、使う事は出来るが数回しか使えない者が緑色、魔法を使ってもそうそう無くならない者が青色、大規模魔法を使っても大丈夫な者が赤色、底が測れない者が紫色がいます」
一般人は白色か黄色がほとんどで、兵士や騎士は黄色か緑色でたまに青色がいる。
魔術師は青色がほとんどで、少なからず緑色や赤色がいる。
紫色はそうそう存在しない。
「あとは判断出来ない者や別の魔力を持つ者は黒色があります」
黒色は紫色よりも更に存在しない。
黒色はどちらかというと魔族側の者が多いだろう。
黒色と判断される者は魔力と判断出来ないか、自分とは違う者の魔力を持っているーーというのが人間の認識だ。
黒色というのは滅多に無いのでは無い。
普通はあってはならない事なのだ。
それ故に黒色とは異端な魔力と呼ばれている。
「まぁ、黒色は気にしないで良いから。ついでに言うと私は赤色です」
「赤色なんですか!?」
「赤色は私以外に宮廷魔術師長と宮廷魔術師副長だけ。それ以外は青色以下になります」
「それでは大事にさせるのでは?」
「そうね。それよりも触れて」
「はい」
ミルは水晶玉に触れる。
すると、水晶玉の周りがキラッとなり、色が現れる。
「青みがかかった緑色ね」
「?」
ミルは疑問に思った。
先程は単色で出ると言っていたのに。
「あ、ごめんなさいね。間で判断される場合はどちらかの色が主色となり、少し副色が足される。今回貴女は緑色の主色に青色の副色が足されたということね。判断するに一般魔法兵くらいになりますね」
魔術師の騎士団は魔法兵団と呼ばれ、緑色と青色の魔力の者達で構成させている。
しかし、緑色はそこまで受用されていなく、青色になってからが一人前の魔法兵とは呼ばれる。
なので、兵長や隊長と長クラスの者は青色の者が多い。
魔法兵団の中ではミルの様な青みかかった緑色や逆に緑色かかった青色の者もいる。
「うん。やはり、魔力は問題無いようね。では、魔法というのは何なのかを一から教えていこうと思います」
「よろしくお願いします」
それでミルは魔法を学び、魔力量も上げていく。
そして、魔法兵団でも上位に入れる様に頑張っていく事になる。
ーーーーーー
次話でエルマの話をします。
その次話ではある事が起きて、セイクが強くなる事を決意し始めます。
「魔術師」の杖の作りに少し追加。青色は一人前の魔法兵と呼ばれないとなっていたので、呼ばれるに変更。あと、誤字脱字を訂正。(2019.5.14)