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勇者の敵は【闇】の者  作者: 龍血
第一章 勇者への道
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第三話 友人をスパイにする

 

 そして、深夜。

 イビーデは待っていた。

 何をというとエルマに会うのだ。


(簡単にメモさせて頂きましたが、どうでしょうね)


 イビーデはちゃんとエルマが来れるか心配だった。

 仮にも王城の敷地内だ。

 深夜でも衛兵がいて、警戒をしている。

 熟練者でも見つかる可能性がある。

 だから、心配なのだ。


「ハァ、ハァ、来ました」


 小さな女の子が現れた。

 もちろん、エルマである。

 何故かお疲れの様だが。


「来ましたか」

「あの、私まだ子供なんですけど、何ですか!訓練か何かなの!?」

「何か問題が?」


 エルマが文句を言うのだが、イビーデは「どうしたんですか?」という感じで特に何も思っていない。


「メモに書かれていた事は分かりましたが、その道が酷い!」

「確か、部屋を出るには扉ではなく窓から出て、壁伝いに移動。王城の物置から下水に移動し、ここに近づくにつれ、下水から地上に出る。そして、今ですよね?」

「何、簡単な事を言ってるんですか!」

「じゃあ、衛兵の近くを通りますか?」

「いや……」


 確かに順路は厳しい所だが、衛兵の近くを通るよりかはマシ。

 それが子供にとって厳しく、人としてちょっと行きにくい場所なだけだ。


 まぁ、その結果が服が汚れ、ビチョビチョになっているが。

 せっかく、王様から服を貰い、今豪華な寝間着来ていたのだが、汚してしまった。

 このまま戻る事は出来ない。


 ちなみに言うと、イビーデは黒装束を着ていた。


「私も悪い気はしますので、落としますよ」


『不純物を吸い取れーー吸収ホエール


 それを言った途端にエルマとエルマの服に付いた汚れが浮き出て、空間に浮かぶ。

 それがイビーデに吸い込まれる。

 そして、汚れが無くなったエルマとエルマの服は以前よりも綺麗になっていた。


「更に綺麗になった様ですね」

「更にって何がですか?」

「それは君の事ですけど…」

「わ、私……」

「それと君の服もですがね」

「な、何なんですか!」

「おっと」


 エルマはビンタをしようとしたが、イビーデは軽々と避けた。


「避けないで下さいよ!」

「当たったら痛いじゃないですか?」


 避けられた事にエルマは怒るが、やはりイビーデは気にした様子は無い。


「それよりも本題に入りましょうか」

「ちょっと、話を進めないで下さいよ」

「えー、私がここに来た理由でしたよね」

「無視するんですか!」


 せっせと話を進めるイビーデとそれに怒るエルマ。

 しかし、怒ったところでイビーデはやっぱり気にした様子は無い。


「そうですね。一つはセイクの為ですかね」

「本当に進めるんですね。それでセイクの為ですか?」


 そのままイビーデが進めるので、エルマが折れて話を聞く事にした。


「はい、昔セイクはこの様な事を言っていましたね。『僕達はずっと友達で、ずっと一緒にいる』と」

「確かに言っていました。ミルも私も同じ事を思っていました」

「ミルはどうか分かりませんがね」

「ミルは違うというですか?」


 エルマは「何で」という感じで聞きに返した。


「あの子は将来重い女になるんでしょうね」

「重い女……」

「つまりはセイクを好み、好み過ぎて他の女には愛して欲しくないと思うという事です」

「でも、それは将来の事でしょう?」

「さぁ、どうでしょうね?もしかしたら、既になっているかもしれませんがね」


 性格というのは一生同じという事は無い。

 無邪気だった子供が大人になるつれて大人しくなっていくのと同じだ。


 ミルだって「女」になろうとしているならば一人の男性に世の中の女性の中でたった一人の恋人になりたいのは至極当然の事だ。


 それはいつになるかは人それぞれなのだ。


「それよりもまだ一つしか言っていません」

「確かに『一つは』って言っていましたね」


 理由は「セイクの為」だけでは無い。

 それはただの一つでしか無い。


「もう一つはセイクに嫌がらせをしたいだけです」

「い、嫌がらせ?何故?」

「セイクは特別何ですよ」

「でしょうね。「勇者」だから」

「いえ、違うんですよ。「勇者」は単純に選ばれただけ。もちろん、君とミルもね」

「では……」

「彼は……本当は君達とは違う。まぁ、彼は知りませんけどね」

「違うだけで嫌がらせを?」

「はい。彼の喜怒哀楽を知りたい。そして、彼がどう成長するのか。肉体的にも精神的にもね」


 イビーデの考えはあまりにも歪んでいる。


 しかし、エルマはそこを気にしてはいなかった。


(なんでよりにもよって男なんですか!)


 気にするのはそこだった。


「セイクに好意はあるのですか?」

「いえ、ただの興味ですが?」


(良かった)


 エルマはイビーデの言葉で胸を撫で下ろした。


「それで何故それを私に?」

「君にはセイク達をスパイして欲しい」

「私が貴方と仲間になり、見張るのではなく、仕掛けるのですね」

「ご名答。よく分かりましたね。見張るのではなく、仕掛けると」

「貴方なら見張る事は出来るでしょう。なら、貴方が望む……私の役割は仕掛ける事になります」


 スパイとは二つの行為がある。

 一つは情報を早く集め、伝える事。

 もう一つは邪魔する事。


 一つはイビーデ自身でも出来る。

 もう一つをエルマにして欲しいという事になる。


「でも、仕掛けるって何をするの?」

「今のところは何かして欲しい事は無い」

「じゃあ、スパイって?」

「聞いていましたか?今のところはと言いましたよ」

「え?」


 エルマは間抜けな声を発した。


「今は何もしなくても大丈夫です。事が起こるまで狩人としての務めを果たして下さい」

「事とは教えてくれないのですか?」

「少しだけ。それはセイクが「勇者」として動く時になると思って下さい。それがいつかはわかりませんがね」

「わかりました。スパイをやります」

「よく受けてくれましたね」


 意外にもエルマは了承した。

 それはイビーデの個人的な事を手伝って欲しいだけなのに。


「それが望み何でしょう?」

「まぁ、居たらいいという話です」

「それじゃあ、要らなくてもいい……」


 イビーデにとってはどっちでもいいという応えにエルマは落ち込む様子が見られる。


「居たら、事を進めやすい。そういう点では居て欲しいですね」

「そうですか。まぁ、私はやると言ってしまったのでやります」


(私にとってやるやらないは考えていない。ただ一つの事だけ考えている)


 エルマはただ一つの理由でやろうとしている。

 それをイビーデに悟られない様に振る舞う。


話途中ですみません。

まだ、書き切れていなく、とりあえずエルマがスパイを務めることになったところまでにしておきます。


次話の予定はイビーデのこれからの行動についてになります。


普通の魔術師と狩人を分ける為に勇者一行は「」を付ける事にしました。(2019.5.11)

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