第0話~第二幕開演~「Tell Your World」
2016年四月二十四日日曜日友引、早朝。
「…………っ、…………ん…………」
ぁ…………、朝か、そう……だ、…………筋肉痛は……?
「ょっ……、と、はっ、……うん」
若干ぎこちなさを覚えるものの、そのぎこちなささえ心地が良い。
これの、お陰だろうな。ありがとう祷。
そうして、あたし早水 捧華は、祷からもらった日の丸鉢巻を額から丁寧にほどく。
祷の治癒と守護の祈りはダテではありません。
さ、身支度をして、軽いジョギングとストレッチをしに行こう。
おっと!
その前に、第四の壁から皆様へ、
「お早う御座居ます!」
気のせいか、なんだか久し振りに話した気がします……。
………………
…………
……
四角荘の前にはやはり、
「お早う祷、待たせちゃったかな?」
「ちち★ わちはストレッチを済ませたばかりじゃち。捧華はもういいのかえ?」
「うん! 鉢巻のお陰でね!」
「それは良い。捧華も準備運動を怠るなよ」
そうして、祷に準備運動を促され、十分程して、二人でジョギングを始めた。
ジョギングの最中に、祷と今後の八百万倶楽部についても話し合った。
帰宅後、四角荘の四名で、いつも通り給食を頂きまして、
今日も普通学園へと向かう。
今日は、計画Aです!
………………
…………
……
しかし、学園までの道中は、祷、麻、あたしの三人、
杏莉子はいません。
それはと申しますと、天休さんの為、延いては八百万倶楽部全体の為に、
今日は杏莉子と一途尾くんは、早めに学園の家庭科室に向かい、
ケーキ、ジュテーム モワ ノン プリュ作りに取り掛かってもらっている為です。
あたしも、お母さんと簡単なお菓子作りの経験はありますが、
ジュテーム モワ ノン プリュは難易度も高めで、
工程も手間が掛かるものだそうです。
杏莉子曰く、
「工程は三日に分けて、火曜日の個人面談の後に皆で頂きましょう」との事。
あたし達三名は、大切なルームメイトである杏莉子と、
意外と言っては失礼ですが、杏莉子のパートナーを務められる一途尾くんに、
今からささやかな差し入れを持ってお伺いするのです。
あたし達三人はひょっとしたら、到着が最後になるでしょうが、
多分家庭科室に八百万倶楽部のみんなが集まる事になるでしょう。
それにしても、一途尾くんは、男性なのかな? 女性なのかな?
だ……男性器や女性器はどうなっているのでしょう? おっぱいだってそうです。
この疑問は地雷なのかしら? 別に男性器なんてお父さんのいつも見てたから、
ちょっとグロいけど、小さくて可愛らしいくらいの感情しかありません。
一途尾くんはミミズ人間だって言ってたから、
おそらく雌雄同体なんだろうって解釈は間違ってないはずだろうけど…………、
嗚呼っ!! 気になるっ!!
誰か地雷を踏んでくれないかしら……?
そうだ、せーこーかえぼしーを上手く誑かして…………。
ハッ! あたし今何考えてたのっ!? あたしこんな嫌な子だったっけ……!?
う~ん、それにしても一途尾くんの今までの言動を思えば、
大した事ではないのかしら?
むしろ問題は、
誠悟くんの傍でこういう事を考えてしまっている事をさとられてしまう事ですね。
う、うん……、も……、もうこの思考は一旦止しましょう。不毛です。
そうこうしている内に、あたし達三名は、大した会話もなく、
普通学園の門を潜りました。
それと同時に、
「はぁ……、」
麻がため息をつきました。
「麻? どこかお疲れですか?」
あたしはお尋ねしてみた。
「ええ、捧華。今日は大変忙しい一日になりそうですわよ」
「それも所謂『運命』でしょうか?」
「麻にとってはそうですね。
麻は大勢の人の中に居るのも、争う事も本来は苦手ですから……」
それらはあたしも苦手です。
麻の実力は確かですから、あたしも憂鬱になってくる。
「麻……、そのふたつ、どうにか避けられないですか?」
「避けられない事はありませんが、
捧華、祷、そして麻が学園に残りたいのでしたら、
流れに任せるのが良いでしょうね」
「……そうですか」
「ほら! 二人とも暗いち!
学園に来た以上、そんな事わちはとっくに覚悟の上じゃち!」
そんな祷の一喝で、あたしもサッと切り替えられた。そうだよね、うん!
こんな時こそ、笑ってニコぱっ☆
普通学園の家庭科室へはまだ訪れた事がない為、
また学園内の地図に頼る事になるのだろうと思っていましたが、
「わちについてこい」
そう祷がはっきり言い切ったので、
あたしと麻は、祷の後ろについて行く事となる。
祷は事前にチェックしていたのかな?
もしかしたら、それが祷の能力のひとつなのかも……?
どうやってお手入れしたらこんなに綺麗に保てるのか、
信じられないくらい純白の学園内を三人で進んで行く。
そうする内に、前方から、今までの学園内では存在しなかった。
喧騒と呼んで差し支えない音色が聴こえてきました。
麻の運命は確かです。
祷を先頭に、あたし、麻の順番で、
色々な問題を暗に提示してくる家庭科室へと辿り着きました。
杏莉子と一途尾くんは大丈夫?
麻を悩ませる、この喧騒と、今日の争いの正体は?
物事を知って、つくづく思う事、
「あたしは何も知らない」
だけど、いつも自分の思い通りなんて、きっとつまらない。
だからこそ、どんな問題にもこう臨むの――……、
「あなたの世界を教えて」――って。
にどめのまくがあがる
ささぐはな
オーディーツイン
歌 初音ミク 作詞・作曲・編曲 kz