合コン
マリアは、若い男達と合コンがやりたかった。
「ほたる、セイラ、今から男を三人誘ってきなさい」
「集めて何するんですか?」
「ほたるは、バカね。合コンに決まってるじゃない」
「合コンですか、何だか楽しそうですね」
「嫌ですよー、恥ずかしいし」
「セイラも楽しそうだって言ってるわよ」
「じゃ、マリアとセイラで集めれば良くないですか」
「お願い、青春を味わいたいのよ」
「自分で集めてからやるのも、青春に入ってるんじゃないの?それにさっきバカと言われたし」
「そんなイジワル言わないで、あたしの一生のお願い」
「もう、仕方ないなー。セイラ行くよ」
行くよと言ったものの、知ってる男は山田と栗井しかいない。山田に、合コンやるから、一時間後に駅前に男三人で来るよう頼んだ。
マリアは、セイラに制服を借り本気で、青春を謳歌するつもりだ。準備して、マリアのマンションに向かう。
マリアの容姿は、ギャルそのものだった。制服で、スカートを短く履いて脚には、ルーズソックス。どこから見ても、女子高生にしか見えない。
だが、今どきルーズソックスなんて履いてる人は居ない。
「どう、似合ってる?」
マリアは、その場で回転して見せた。
「私の制服も、ぴったり合ってて女子高生にしか見えないですよ」
マリアは、ノリノリでポーズとる。
「マリアちょっと良い?」
私は、マリアのスカートをめくり、パンツを見た。めくられても、嫌がりもしない。案の定、ランジェリー物のパンツを履いていた。
「あら、カワイイー」
「マリア、このパンツスケスケだから、あれが見えちゃうよ。部室で毎日見てたから気になってた」
「こんなのしかないから、これで行くわ。脚組んでるから大丈夫よ」
「高校生でこんなの履いてるの居ないから」と、セイラのスカートをめくってみせた。はたからみると、変態にしか見えない。
「相手、未成年だからこれに変えてくれない?それにマリア、今、女子高生じゃないの?」
あらかじめ用意していた縞パンツを見せた。
「こっちならさ、見せ放題だし、男受けも良いよ」
マリアは、見せ放題か男受けの言葉に反応し、持っていたパンツを奪い取り、マンションの壁際に履き替えに行った。
部屋で着替えないのかと…。
「あの位置だと防犯カメラにまる写りだね」
「そうだね…」
「おまたせー」
車に乗り込み出発した。
マリアの車に乗るのは、初めてだ。
フェラーリを、制服姿で運転する異様な光景。
駅裏の、立体駐車場に車を止めて駅前に向かう。
着くなり山田が申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。小走りで近寄り、後頭部に手をやり小声で言った。
「すいません、十人になってしまいました」
体育会系ならでわの上下関係が目に見えるようにわかった。
「三対十かぁー」
マリアは、なにか考えているように見えたが。
「面白そうね」と、了承した。
山田は、走って物陰に消えると、ぞろぞろと男どもが出てきた。
十人…。
色気付いた格好をしていて、自分を少しでもよく見せようとする気持ちが伝わってくる。
たぶん、山田が合コン行きたい人と募ったとき全員手を上げたのは、間違いない。
カラオケボックスのパーティールームに入り、読み物など注文してから、自己紹介しマリアの青春イベントが始まった。
山田が先陣を切って質問してきた。
「女子高ってさ、お嬢様ばかり居るイメージあるけど、どんな感じなの?」
「そうね、居ることは居るけど大体は、ビッチね」
「そうなんか」
十人、なるほどという顔で聞いている。
「それに、下ネタ満載で、放送禁止用語も飛び交ってるわ」
マリアは、男子高校生の夢を木っ端微塵に粉砕した。
「マジっすか」
まぁ、異性の居ない緊張感も無いとこで生活していたらオーブンになってしまう
のは、必然。
「ええ、ついでに言うと、スマホでエロ動画見て、あんなことや、こんなことしてるのも要るわよ」
「信じられないっす」と、十人が驚く。
私は、マリアのむき出しの太ももに手を置いてピクンと反応した後、つまみ、捻りを加えた。
マリアは、ゴツンと膝をテーブルに当て無言で痛みをこらえた。
「最後のは、冗談よ、冗談」
ひきつった顔で微笑む。
「俺達、共学だから女子は、そんなの居ないな~」
「猫被ってるだけよ」
「マリア、すげぇー面白いなー」
頷く十人。
「次は、女子からなにか話したいことある?」
進行役は、山田がやらされているようだ。
「セイラ、ほたる、あなた達なにか聞きたいことある?」
私は、今奥手だと気付かされた。
知らない男に、話しかけることが出来ない。
「質問です、十人の趣味は何ですか?」
十人共、自転車だった。
「私もそうなんですよー」
セイラの質問に山田は、セイラを見つめていた。セイラは、山田からの視線が気になり、その仕草がよりいっそう山田の気持ちを高める。
「ちょっと、お手洗い」
マリアは、私達を連れて一旦トイレに行った。
「なんでトイレに?」
「そりゃーおしっこに決まってるじゃない」
トイレに入りながら、マリア言う。
「山田、セイラが好きなようね」
「中学の時に告白されました」
「断ったってことね」
「はい」
「なるほど、これこそ青春ね」と、トイレの水を流して出てきた。手を洗い、部屋に戻った。
「次は、先輩Aからですね」
「この中で異性と付き合ったことある人居ます?」
マリアか、速攻手を上げた。
「色々と経験を聞かせてください」
「付き合った人数は、うーん、十五人位かな」
指を折りつつ当たり前のように言い放った。
私は、太ももに手を置く。
「あ、違う違う。十人」
つまみ。
「五十、五十一人」
捻る。
「一人よ、一人」
「びっくりしましたよ、五十一人って」
「ちょっと、多かったわね」
冷や汗をかきながら必死になって常識的な人数にたどり着いた。
「ヒモ男だったわ、自分ではなにもしない貢がせ上手だったわね」
「女子高生に貢がせるって最低な男ですね」
頷く十人。
「せっかくカラオケ来たんだし歌いませんか?」
一曲ずつ歌い、マリアは、歌いながら踊る。縞パンツを見せつけながら。
また、三人揃ってトイレにたった。
「マリア、パンツ見せすぎよ」
「ほたるが見せ放題って言ったじゃないの」
「それは、そうだけど限度がある。また、変なこと言ったらつねるからね」
「わかったから」
青春を味わってるのは解るが、羽目を外さないように、制裁を加えなければならない。
五回目のトイレに行った。
「トイレこれで五回目だよ」
「年になると近くなるの」
その後ボーリングに行き、ラインを交換してお開きにすることになった。
合コンは、すごく盛り上がりみんな仲良くなれたと思う。マリアの青春のためでわなく自分の為にも合コンをまたやりたくなった。
マリアは、家に帰りカバンからボイスレコーダーを取り出した。
ボイスレコーダーを聞きながら、なるほどねと、にやにやしなが聞いていたが、虚しくなる。
「こんなことして、最低ね」と、呟き
『鬱』になる。