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楽しみな秘密の朝練

 


 次の朝、合コンに行くために、美少女を連れて橋に向かう。二対二のセッティングだ。それは冗談で、強くなるためにだ。だが女子校だと男に交わることがないので楽しみの時間になっているのも事実だ。


 いつものように、コンビニでおにぎりと飲み物を買ってリュックに詰める。


 遠くから、見ると三人黙視できる。


「セイラ、今日三人居るよ 」


「マリアさんだったりして」


「またそんな、恐ろしいことを言わないでよ」


 近くまで来ると、普通にマリアだった。

 橋に着き、不適な笑みを浮かべている、マリア。


「おはようございます」


「あら、奇遇ね」


 奇遇ってなんだ。


「山田君と栗井君とは、お友達になったわ」


「マリア、すげぇー楽しい」


 すでに、手玉に取られていた。

 マリアと呼ぶように命じられてるようだ。たぶん、何がすげぇー楽しいのか聞いたら言葉を濁すだろう、マリアには下ネタ以外無いのだから。


「山田達、並んで座ったままこっちへ来ませんね」


「さっきまで立ってたんだけど、話が盛り上がってきたら急に股間を押さえながら座りだしたわね」


「あら、まあ、うふふ」


「それって、マリアが卑猥なことを言ってたからじゃないの?」


「あの子達、持久力有りそうだから当分は、あのままね」


「ちょうど良いや、マリアこっち来て」と、山田達から引き離し、聞こえないとこまで移動した。


「なんでマリアが居るの?」


「態度がおかしかったからね、十年近く教師やってれば態度で解るのよ」


 微妙な、態度を見透かされていた。


「あたしを、除け者にして四人であんなことや、こんなことまでしてたんだ」


「そんなことしてません。偶然ですよ、偶然。ここに来たら山田達が居たんですよ」


「言ったわよね?隠し事は禁止だと」


 腕組みをし、睨み付けてくるマリア。


「それに、二人でお泊まり会もしたことも知ってるんだからね」


 相当怒ってるみたいだ。


「マリアは、昼は教師として疲れてるからと思って黙っていたんですよ」


「これは、イジメ。それも悪質なイジメ。女の子が二人の友達からハブられて、学校辞めるパターンよ」


 悲しい表情で言うマリア。


「あたしね、三十歳の時に高校の同窓会に出たのよ。そこでね同級生達は、昔の思い出話をして盛り上がってたの。その時気付いたの、あたしには、語れる思いでも、語り合える友達も居ない事にね」


 拳を握りしめ、悲しい顔で訴える。


「親の敷いたレールの上を進んできた結果がこれよ。何度もあの時に戻り、やり直したいと願ったわ。でも、そんなの無理。それを忘れるためにホストクラブに通っても一時期的に忘れるだけで虚しさが増すばかりの日々。でも、今三人で自転車部をしていて、その時無かったものが手に入りそうなのよ」


 震えた声で言うマリアの頬に涙が流れた。


「ごめん、マリア」


「ごめんなさいマリアさん」


「わかれば良いのよ、ただ、隠れてイチャラブデートしてたのが許せなかっただけで、あたしも混ぜなさいってこと、個人プレイに走るのは禁止」


 仲間外れにされたと怒り、悲しみ、本当に青春女子高校生になっているみたいだった。


「山田君達、心配してそうだから戻ろう」


「何かあったんすか?」


「三対二だから、男の取り合いで揉めてたのよ」


 場を和ませようとする。


「マジっすか」


 照れながら真に受ける、山田と栗井。


「そろそろ、練習しませんか?」


 セイラの声で、戦闘モードに入る。


「俺達ペイサーするので、俺は、ほたるとセイラさん持つから、栗井は、マリアをお願い」


 山田は、器用に二人のサドルを持ってペイサーを勤める。栗井は、マリアのペイサーをしている。


「アナルに指いれないでよ」


 マリアは、わざとサドルも持っている指にお尻を乗せる。


「お、をぉしりには多少当たってますがぁ、い、いれてないっス…」


 無垢な男子の心をもて遊んでいる。

 汗を垂らしながら、困っている栗井。


「そうだ、最下位は部室での着替えの時はストリップダンサーの様に着替えること」


 負けられない一戦になった。


 スタートし、私が一番に前に出た。

 後方から、アブ、アブ、アブと連呼する声が聞こえたが次第に小さくなり、やがて聞こえなくなった。


 体調が良いのか、罰ゲームを受けるのが嫌なのかそのまま、ゴールまで逃げ切れてしまった。

 私、セイラ、マリアの順でゴール。

 最下位は、マリア。

 罰ゲームは、言った本人がやることになった。


 ラストは、五人で競争することになり、

 男子は、五十メートルほど下がりそこからスタートすることにした。

 器用にスタンディングを使いスタートするのを待っている。

 スタンディングとは、自転車を足を付かずに静止させていることで、スプリント競技によく使われる技。


「山田と栗井君スタンディング上手いですね」


「それより、男がバックから攻めてくると思うと興奮しちゃう」


「マリアさんそうなんですか」


「ばかなこと言ってないで男子に抜かれないよう真面目にお願い」


 橋の柵に掴まりスタートした。


 立ちこぎでスピードを乗せてサドルに座る。

 今回も出だし良く一番前に出る。

 あとは、全力でもがくだけだ。


 このまま行けば勝てると思った瞬間、私の右横を何かが通りすぎて行った。

 通りすぎるとき、風圧で吸い込まれるような感じをうけた。

 前を見ると山田と栗井が並走してもがきあっていた。

 凄い。

 男女に運動能力の差があるとはいえ、

 別次元の速さだ。

 まるで、電光石火。


 ゴールしUターンし坂を下った。

 下り坂でマリアは、山田の肩に手を掛けて、はぁ、はぁ、はぁ、と息をしながら

「今のすごく良かったわぁ」と囁く。

 アダルトビデオのラストシーンの様に…。


 数日後部室の壁全部に鏡が取り付けられていた。






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