表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/57

朝練5

 







 お泊まり会で決めた通り今日から池田山での早朝練習をすることにした。

 朝五時からセイラと二人で池田山の練習場所に向い、途中コンビニで、おにぎりとポカリを買い、リュックに入れる。


 山に近づくにつれて良い香りがしてくる。お茶の香りだ。


 朝の静けさが、鮮やかな緑をいっそう際立たせている。お茶の香りを胸一杯に吸い込んで練習場所へと向かった。


 遠目に橋を見ると、二人の人影らしき物が目に入った。 まさかと思ったがセイラがその名を口に出した。


「マリアさんかも」


 私は、セイラにビビらされた。


「もお、怖いこと言わないでよ」


 だが、橋に近づくと、一人は知ってる顔だった。


「おはようございます」と挨拶し、

「よう、久しぶり」と返してきた。


 中学校の同級生の山田勇也だ。

 もう一人の男が「勇也の知り合い?」と聞いていた。


「うん、中学まで、同級生」


 山田勇也は、カッコいい。

 小学1年生から中学3年生まで同じクラスで仲もよかった。中学の時は、女子の憧れの的で、アンケートで好きな

 男子90%を獲得したイケメンで尚且つ陸上部では、全国大会に出場している。

 だが、しかしセイラに告白して、撃沈したことも…。それにしてもデカイ、また伸びたのか。180cmはありそうだ。茶髪で少し長めの髪をオールバックにしている。イケメンだ。


 セイラの顔をみると、いたって平然な様子。


「この中で俺が全員の事知ってるから、紹介して良いかな?」


「どうぞ」


「まず、こいつは、同じ高校の自転車部一年の、栗井一茶くりい いっさ


「よろっす」


 見た感じ、セイラより少し大きい。170cm位、黒の単髪で、太ももがやけに太い。


「そちらは、中学の同級生、七星蛍と長良セイラさんで、青春女子学園に行ったんだっけ?」


「「はい、そうです」」


「よろしく!」「よろしくお願いします」


「私たち、練習に来たんですがここで、やっても良いですか?」


「おっけ、じゃあ交互にやろうかぁ」


 山田達は、即答で私達を迎え入れてくれた。私たちは、リュックを降ろして、準備した。ジャージを脱ぎ、家から履いてきた、レーサーパンツ姿になる。今まで余り気にしてなかったが、男性に見られるのはなんだか恥ずかしい。レーパンの下はノーパンだからだ。


「二人の自転車、トラック競技用のじゃないですか」


 セイラは、ピストバイクに夢中になっていた。


 ピストバイクは、競輪場で使う自転車で、ギアが固定になっている。

 競輪場で使うときは、ブレーキを着けない。


「そうだよ、ブレーキ着けて練習に使ってるんだ」


 セイラの質問に答える山田。


「本格的ですね。触っても良いですか?」


「いいよ」


 セイラは、山田のピストバイクを持ち上げてみた。


「軽いですね、早く私達も乗ってみたいです」


 堅苦しさも無い話し方だった。あのことは、もう気にしてないのかと、心配した。


「栗井さんのは、カーボンディスクですね。私、この音が大好きなんですよ」


 セイラの大好きの言葉に山田が反応していた。


 まだ、未練があるのか。


「たぶん、みんな好きだと思うよ、速くしてくれるしな」


 山田は、話を遮るように「じゃあ、始めよう」と、割って入るように言ってきた。


 私達は、ペイサーをすることになった。

 ペイサーとは、今から走る人が倒れないようにサドル持ってスタートさせる役目。


 私の掛け声でスタートした。


 カーボンディスクの音が心地よい、山田達は、みるみるうちに小さくなり消えてしまった。


「セイラ、山田のこと気にしてる?嫌だったら場所変えようか?」


「気にしてないよ、山田君もそんな感じだし」


「じゃあ、毎朝ここでやろうか」


「うん、やりましょう」


 話してる間に、もう降りてきた。


 山田は手放しで両手で手を降っていた。


「つぎは、蛍とセイラさん」


 セイラだけ、さん付けか。


 セイラとの真剣バトルだ。上まで先についた方が勝ちになる。


「俺達後ろ持つから」と、橋のコンクリートと、アスファルトの境目にタイヤを揃えて準備した。


 おしりに手が当たるのは、仕方がない。

 かまえての合図でお尻を上げてGOで飛び出した。


 ペダルを踏みつつ腕を引きつけて引き脚を意識して。


 スタートダッシュは、私が優勢。だがすぐ右斜め後方から、セイラの息づかいが聞こえる。

 抜かされまいと、ひたすら踏むしかない。立ちこぎからサドルに座り、ぐいぐいとペダルを踏み込み前へ進む。


 ゴールはすぐそこだが脚がパンパンになりもう限界だ。


 そのままの惰性でゴールした、セイラに先行逃げ切りで勝てた。


「蛍、強いよ。着いていくだけでやっとだよ」


 セイラは、荒い呼吸で話しかける。


「こっちも、抜かれないと必死だよ」


 Uターンし、呼吸を整えながら坂を下っていく。


 その後、五回目が終わり、セイラとの勝敗は、四勝一敗だった。

 セイラとの勝負で、中学の時より強くなっている事を確信する。

 もっと、もっと練習をして競輪選手に早く近づきたいと思う。


 これで終わることを伝え、レーサーパンツの上にジャージを履いた。

 お腹もすき、コンビニで買ったおにぎりを食べながら四人で雑談する。


「私達は、競輪選手を目指してやってます」


「すげえなー、そうやって堂々と言えることが。そんなこと堂々と学校で言った笑われる気がするし、なれなかったらなれなかったで、またその事をほじくりかえして笑われそうだ」


 そうなのか、口に出して言うことは凄いことなのか。


「お二人は、競輪選手目指さないのですか?」


 セイラが、問う。


「目指してる、俺も、栗井も。だから、練習してるんだ」


「じゃあ、みんな同じ目標ですね、頑張りましょう!」


 最後にラインを交換し終わりとなった。

 良い雰囲気で、仲良くなれたと思う。

 そこで、遅刻しないように私達は山田勇也達と別れて学校へ向かった。


 授業中、私は、疲れが出て寝てしまった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ