池田山にて
翌朝ホームルームの時間マリアは、元気が無さそうな感じだった。自己紹介時のテンションは、見る影もなく収支うつむき加減で、つらそうな感じが伝わってきた。昨日の練習で筋肉痛なのか。
放課後になり私達二人は、部室で着替えをして外で準備体操をしながら待機していた。
「マリア、朝調子悪そうだったから、来ないかもしれないね」
「筋肉痛かしら?」
そんなことをしゃべっているとマリアの姿が見えた。だがマリアは、小走りに普通に部室へ入り着替えてきた。
大丈夫なのか。
着替えてきたマリアは、ピンクの半袖のロードジャージに、黒のレーサーパンツにブルーのスポーツタイプのサングラスを掛けている。格好だけは一人前だが、二の腕が少し気になる。スタイルは良く、なかなか似合っていた。
しかし私は、あることに気づく。
レーサーパンツの下に下着のラインが見えた。レーサーパンツを履くときは、ノーパンでなければならない。下着を着けたままだと、摩擦が生じ最高のパフォーマンスが引き出せなくなるからだ。
「マリア、下着は着けちゃダメだよ」
「そうなの、いやらしいスポーツね」と部室に行き、脱ぎにいった。
「おまたせー」
完全に、私達に同化している。部員と言っても、なんら違和感も無いだろう。
マリアは昨日、手に入れたロードバイクにまたがり、「じゃあ、行こっか」の言葉で私達は、池田山に向かった。
向かうに当たって、車の少ない裏街道から行くことにした。
一列に並び、セイラ、私、マリアの準に
並んでいる。この並びは、マリアに風の抵抗を少しでも減らすために最後尾を走らせている。セイラは体を起こし後ろを向きマリアが着いてきてるか確認した。
「マリアさん普通に着いてこられてますね」
朝、調子悪そうにしてたのは、気のせいだったみたいだ。
「まぁ、慣れるまでは、周回練習しよう」
私がそう言うと、マリアが私のとなりに並び並走しサングラス越しから私を睨み付ける。
「あたし、お荷物とか嫌だからね」
昨日の走りを見る限りお荷物で間違いない。それを言うとマリアは後ろに下がって私の後ろにピタリとついた。
「そんなこと無いですから、大丈夫ですよ」
セイラが気を効かせてくれてマリアをなだめてくれた。だが、マリアは、しっかりと着いてこれていた。
池田山の麓にある橋に着き、この先からは長い直線の登り坂が続く。私達は、橋で休憩することにした。
「あの、ポンコツケッタマシーン《電動式自転車》あれ、なんだったのよ」
自分で秘密兵器と言っときながら、ディスル、マリア。
「恥ずかしいから、ケッタマシーンって言うのやめませんか?」
「ケッタマシーンは、岐阜県の方言だからあたしは、辞めないわよ」
「そうですか」と、そっけなく返した。
「電動式自転車は、あれで使う場所があるのですよ。お年寄りや主婦の方に喜ばれてます」
流石、自転車屋の看板娘だ。
「マリアは、今までに何か運動してた?」
「特になにもしてないわよ。強いて言えばハードなエッチくらいね」
マリアの言葉を無視しロードバイクに股がった。
「周回練習に行こう」
今度は、私、マリア、セイラの順に1列に並んだ。登りで離されてしまうマリアを、セイラは横について励ます。
「頑張って下さい、上りはあと少しで終わります」
マリアは、立ち漕ぎし必死にペダルを踏む。ひぃー、ハァー、と乱れる呼吸。
上り切ると、緩やかな上下の坂道が長く続き、そのあとは、下り坂が続く。
マリアは、ボトルをのふたを取り口に着けて水をかぶのみした。
「そんなに一気に飲むと体調崩しますよ」
ゲホ、ゲホと咳をし出した。
「飲み過ぎだよ」
それにしても素人なのに体力がある。
ハードなエッチが体力を使うものかと想像してしまった。
「ここからは、下り坂が続くのでスピードの出しすぎに気を付けてください」
だが、マリアは、下りで恐ろしいほどに、コーナーを攻める。ブレーキが壊れてるのかまったくスピードを落とさない。まるで、鉄砲玉だ。
あの世まで走っていきそうな勢いで、身を屈めて、走っていった。
登りで、足を引っ張った分を下りで取り戻してる感じだ。
「マリア下り坂、危ないよ」
「いまので、下り坂のリズムは掴んだわ」
調子に乗ってるマリアにお灸を据えるため少しずつスピードを上げていった。
このときは、あんなことが起こるとは、全く想像もつかなかった。
二周回目に入っり、マリアは疲れてきていた。ひぃー、ひぃーと呼吸が荒く続くようになる。ペースを上げすぎたかなっと思っていた矢先、突然マリアは急に胸を気にし始め、苦しそうにした。
ひぃー、ひぃー、痛い、痛い、言いながら、それでも我慢して着いて行く。
後ろを見るたびマリアの悲痛な顔が険しくなっていった。そろそろ限界かなとスピードを落としマリアの横につく。
しかし、胸の痛みが我慢できなくなりマリアは、ロードバイクを降りてしまった。私は、あわててUターンし、座り込むマリアに駆け寄った。
「マリアどうしたの?朝も元気無く見えたけど大丈夫?」
「む、胸がいたくて、我慢できない。はぁ、はぁ、はぁ」
これは、ヤバイ重病だと胸騒ぎがする。
素人に、あれだけスピードを上げてしまったことを私は、後悔した。
「救急車を呼ぼう」
私は、ロードジャージの後ろポケットからスマホを取り出した。
「はぁ、はぁ、呼ばなくていい…」
マリアは、取り出したスマホを取ろうと手を伸ばし奪い取った。
「マリアさんここは、意地を張らず素直にお医者様に診てもらった方が良いですよ」
セイラは、マリアの背中をさすりながら言った。呼吸の荒いマリアは、手袋脱ぎ捨てると。
「ちょっと、ここ見てよ」
マリアは、おもむろにロードジャージをまくりあげると、ブラジャーも着けてない胸があらわになる。そこには、綺麗な形の胸に、赤く腫れ上がった木苺が二つ転がっていた。真っ赤に腫れ上がった乳首だ。
「乳首が擦れて凄く痛いのよ」
私とセイラは、顔を見合わせてぽかーんとした。そんなことで、心配させられて損した気分だったが、でも、大したこと無くて良かった。セイラと顔を見合わせながらほっと胸を撫で下ろした。
一気に緊張が取れて、涙ぐみながら笑ってしまった。
「それに、なんでブラも着けずに…」
「ほたるが、下着を着けるなって言ったから脱いできたのよ」
「それは、レーサーパンツの事だよ」
「手取り足取り、ちゃんと教えなさいよ」
私は、言葉足らずの事もあり素直に反省した。
「ごめん、マリア」
「もういいわ、このまま、上半身裸で帰るから」
だだっ子の様に、言うマリア。
「それは、流石にダメですよ、通報されて逮捕されますよ」
どっちが、容姿も含めて大人か子供か解らない。
「痛風並に痛いのよ、このままロードジャージのままやってたら大事にしてきた綺麗な乳首が擦れて黒ずんじゃうし」
セイラは、ロードジャージのポケットから財布を取りだし中から丸い黒のシールを取り出した。
「ニップレスじゃないですけどシール、持ってますから、これ貼って我慢して下さい」
セイラは、マリアの擦れて腫れ上がった乳首に黒色のシールをを貼り付けた。
赤い乳首の上から、黒のシールを貼り付けた。まるで鳥の撃退風船だと笑ってしまった。
「ほたる、いまなんで笑ったの?」
「いや、なんとなく」
鳥の撃退風船みたいだな~とは、口が裂けても言えない。だが、病気じゃなくて本当によかったと心のそこから思った。
この日は、治療をするため、そのまま学園に帰りマリアは、治療を終えて、誰もいない家に帰る。良いことありそうな事言っておいて、練習の足を引っ張ったことで、「あたしは、なにやってるんだう…」と、呟き、『鬱』になる。




