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新入部員

 


 朝練が終わり池田山の麓の橋で休憩しながら新入部員が入って来ると想定しての話し合いをした。


 マリアは、山田達の入部したときの先輩の振るまいなどを聞いていた。


「山田君達は、入部した時に先輩から、かわいがりや、洗礼を受けたことあるかしら」


 かわいがりって相撲界のリ○チじゃないのかと思いつつ話を聞いた。


「あります」


 あるのかよっとツッコミを入れようとしたが話の腰を折るのあれなのでやめておいた。


「犬垣高校自転車部伝統のしごきが。入部して1ヶ月は死ぬほどしごかれました、新入部員15人居たのが残ったのは6人ッス」

 

 マリアは、なるほど伝統か~と呟き爪を噛み始めた。


「良い話が聞けたわ。ありがとう」



 一週間後その日がやってきた。


 放課後、部室で二年生になったので部長を決めることになった。


「ここは、三人で公平にトランプで決めましょう」


 マリアは、そう言うが部長より顧問の方が役職が上だと思う。それにいくら青春イベントだとしてもマリアが部長になってしまったら、ややこしくなるだけだ。


 一枚づつ取り一番大きな数字の人が部長になることとなった。


 マリアがシャッフルしたトランプを扇状にひろげ、私は適当に一枚取った。

 セイラも同様に一枚取る。

 マリアの分は不正をする可能性があるし自分で取らせないと後で難癖をつけてくるので、私がシャッフルしマリアに選ばせた。


 せーのでめくると私が♥のクイーンで一番大きな数字を選び部長になった。

 セイラとマリアに祝福と嫌みをもらい、しっかりやらなくちゃと心のなかで誓った。


「今日から、あたし達にも後輩ができるから、舐められない様にしましょう。体育会系の上下の厳しさを、骨の髄まで味わって貰うわ」


 マリアがそう言うと不適な笑みを浮かべた。もしや、かわいがりをやるつもりなのか。


「エイ、エイ、オーーーーーーー!」

 と、テンションを上げて興奮する内田マリア35歳の春。


「で、何人、入部してきますか」


 私がおそるおそる聞くと。


「二人…」


 かわいがりしたら0人になってしまいそうな数を聞き私は、よろめいた。


「微妙な数字ですね、かわいがりしたらマリアさんのやりたい団体追い抜きやれなくなりますよ」


 セイラが言うと、マリアは頭をかきむしり、考えた末、渋った表情になる。


「背に腹は変えられないわ、今年は、フェザータッチで行きましょう」


 フェザータッチの意味がわからないが方針が180度変わったと理解できた。

 それに、かわいがりをしてせっかくの新入部員が居なくなってしまったら元も子もない。


 突如部室のドアがノックされる。

 ドア越しから、こんにちは、と女の声がした。


 それを聞くなり、あたふたと小さな声でキタキタと焦るマリア。


「こっちが、焦ってどうすんのよ、最初が大事なんだからね」


「そんなこと言われても気持ちの整理がついてないのに急に来られたら焦るに決まってるでしょ、部長なんだから、ほたる出なさい」


 マリアは、急いでパイプ椅子に座り平静を装った。


 なんで私がと、扉の前に行きドアを開けた。


 そこには、大きめの制服を着た初々しい女の子が二人、一段下の段差から見上げるように立っていた。


 可愛い。去年の私達と同じだ。


「あの~、入部届け用紙に自転車部と記入したのですが、ここに集まればよろしいですか」


「そうです、中へ入ってください」


 中に入れると私より背が少し低いが、胸は大きかった。

 二人の新入部員は、緊張しているのが目に見えてわかった。


「あら、可愛い。お人形さんみたい」


 そう言うとセイラは、二人に近寄り緊張をほぐすためか頭を撫でていた。


「えーっと、まずは、自己紹介からお願いします」


「あ、はい、1年2組、日置愛ひおきあいです。よろしくお願いします」


 愛は、セミロングの赤毛を紺色のリボンで後ろで縛っている。


「同じく、1年2組の日置唯ひおきゆいです。よろしくお願いします」


 唯と愛は、全く同じ顔をしていて、赤毛で同じ様に紺色のリボンで後ろで縛っている。


 双子か。


 マリアは、入部届け用紙に目を通していた。


「日置愛と日置唯、あなた達名前と顔も同じだけど双子かしら」


「「はい、そうです」」


 息もピッタリと返事をした。やはり双子か、どっちが愛なのか唯なのか当てるのに難しいくらい似ている。


 マリアは、双子と聞き、またトランプを持ち出してシャッフルしてから机に裏向きに5枚のカードを並べた。

 私は、なにをするのか眺めて見ていた。


「愛と唯、透視してごらんなさい」


 愛と唯は、顔を見合わせてからトランプに目をやった。双子=超能力者というマリアの浅はかな考えが見透かすようにわかる。だが、瞬きせず、二人はじっと見つめている。


 愛と唯の真剣な眼差しに超能力は存在するのか、ユリゲラーの再来かなどと期待値が高まる。


 しかし、愛と唯は、顔を見合わせてからマリアの方に向き。


「双子だからといってそんな能力ありません」と、きっぱりと言った。


「思わせ振りな双子キャラね」


「でも、夢ならたまに同じの見たりするよね、唯ちゃん」


 マリアは、ニヤリと笑みを浮かべ、ここぞとばかりに新入部員に攻撃を仕掛けた。


「じゃ、エロ夢も共有してるんだ」


 マリアに下ネタのきっかけをあたえてしまい、違う意味での洗礼を受ける。

 だが、マリアの言葉に愛と唯は、恥じらうどころか乗ってきた。


「そうなんですよ、全く同じ容姿の男姓とあんなことや、こんなことしてる夢を同時に見たりするよね、愛ちゃん」


「うん、うん、唯ちゃん」


 マリアは、愛と唯の手を取り、あんなことや、こんなことのとこを詳しく教えてと

 言うと、放送禁止用語が部室内を駆けめぐった。


 こ、これは、懲戒免職物の卑猥な言動。


 マリアと愛と唯は、意気投合し親指を人指し指と中指の間にはさんで握り、エイエイ、オーーーーーと天に掲げた。


 マリア一人でも手を焼いているのに、こんな後輩が二人も入部してくるとは、この先が思いやられる。


 マリアは、私の方を見て、


「これが、健全な女子高生のあるべき姿よ」


 私は、はいはいと目をそらして適当に聞き流した。


「ところで去年の学園祭見ましたよ。あんな手コキ測定良く思いつきましたね」

 と、日置愛と唯が、信者の眼差しで私達を見つめている。

 それを見るなりマリアが

「シコリンピックは、あたしが考えたのよ」



 私達三人は、愛と唯かどっちが言ったかわからない『先輩』という言葉に耳がダンボになる。


 マリアは、ゾクゾクっとしたのか立ち上がり「ワンモアプリーーーズ!」と愛と唯に要求した。


 愛と唯は、顔を見合わせて小首をかしげた。


「なにを言えば良いのですか」と愛が聞くと、マリアは、恥ずかしそうに小声で愛の耳元で囁いた。


「マリア先輩とお願いします」と、後輩に頭を下げた。


 そうか、マリアは、青春時代に後輩から先輩と呼ばれたことも無かったんだ。これも青春イベントとの一つなんだと私は、生暖かい目で見守った。


「マリア先輩」

「もう一度」

「マリア先輩」

「もう一度」

「マリア先輩」

「もう一度」

「マリアさんばかりずるいですよ、唯ちゃん、私にもセイラ先輩とお願いします」

「セイラ先輩」

「もう一度お願い」

「セイラ先輩」

「もう一度お願い」

 ・・・・・・・・・・・。


 愛と唯は、嫌な顔もせず何回も繰り返している。


 だが私は、何十回と繰り返す余りのしつこさにイライラとしてきた。


 私は、「しつこい!」と、一喝しイベントを強制終了させた。


 体育会系の上下関係の厳しさを見せつけるどころか、私達の方が、かわいがりされる立場のような醜態をみせてしまった。


 無駄な時間を過ごしていると、監督が部室の外から呼ぶ声が聞こえ、体操服に着替えて新入部員の体力テストを行うことになりグランドに向かった。


 100m走、1500m持久走、懸垂など愛と唯は、良くもなく、悪くもないタイムでこなしていった。明日からは、私達が作った自転車部独自のハードな練習かわいがりに切り替わる。心配だがやるしかないのだ。

 

 体力測定が終わり、愛と唯は、明日からロードバイクで通学するように監督から言われる。












 、





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