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スプリント

 




 私は、新田玲夢に負けたことをひきずっていた。勉強、練習にも身が入らなくなっていた。あれだけ不様な負けかたをしたのならもっと練習をしなくちゃいけないのは、わかっているのにやる気が出ない。私は、なにかきっかけがほしかった。


 そんな私の態度を見かねてなのか、水谷監督が休憩している私達に声をかけてきた。


「スプリントやってみるか」


 水谷監督の声にいち早く反応したのは、マリアだった。マリアは、はい、はい、はいと手を挙げながら連呼し、アピールをする。セイラは、それを見て笑みを浮かべながら「私をやりたいです」と水谷監督に答えた。


「あっ、私もやりたいです」


 私も遅れて手をあげた。

 何かきっかけがほしかった。

 練習は、普通にこなしているが、ただやってるだけで、何も考えず作業のようにしていた。新田玲夢に言われた言葉が元凶で、頭の中で呪文のように繰り返す。無様に負けたレースも頭から離れない。


 水谷監督は、私達3人を集めて監督らしくスプリント競技のレクチャーをした。


 スプリント競技とは、1対1又は1から4人で3周の間に先着した方が勝ちとなる。上手く相手のすきをついてゴールまで維持出来るとこから仕掛けるのがベストである。


「まずは、蛍が先行でセイラとマリアが後追いで、始めてくれ」


 水谷監督は、そういってストップウォッチと首に掛けていた笛を服から出して準備をしていた。


 私達は、ヘルメットを被り、バンクを半周して、金網に掴まって合図を待った。


 水谷監督が笛を吹いて、スプリント競技がスタートした。


 私は、バンクの中段をゆっくりと走りながらセイラとマリアを目で牽制し仕掛けられないように何度も後ろを見た。

 それと、いつ仕掛けられても良いように

 立ち漕ぎしていた。これだとセイラもマリアも仕掛けてこれないやと、少し余裕なかんじで舐めていた。


 残り一周になり、バンクの上段まで上がりカントを利用して仕掛ける準備をしようとした瞬間、セイラに先に仕掛けられてしまった。マリアもセイラの後を追うように仕掛けて行き、私は、隙をつかれた。やられたと思ったら後の祭り。セイラの逃げからマリアが追い込んで私は、負けてしまった。

 これは、なかなか面白い。

 相手を見る洞察力が養える。私は、スプリント競技に新田玲夢に勝つための糸口が見つかるような気がした。


 2本目は、セイラが先行で、私とマリアが後追いになった。


 セイラは、バンクの上段から私達を監視しながら早いペースで走っていく。

 残り一周になり、ペースがどんどん上がっていき仕掛けるタイミングが見つからない。セイラは、そのままハロンをかけるように仕掛けて行き逃げきってしまった。


 後ろ攻めが有利と思ったのに前から監視されてペースも上げられてて仕掛けどころが解らなかった。


 ここで水谷監督から、アドバイスを受ける。


「フェイントを織り混ぜたり、スローペースにして、ゼロ発進勝負にしたりと色々試してみなさい」


 私達は、アドバイスを聞いてから色々と織り混ぜながら試していった。私は、楽しくてしょうがなかった。玲夢負けてから練習に身が入らず、何してもパッとしなかったのがスプリントのおかげでふっ切れた気分だ。


 水谷監督は、最後にとっておきの奥義を授けてくれた。それは、ハンドル投げ。

 ゴール直前にハンドルを前に出すことによって接戦の時に有効な手である。


 私達は、バンク練習の時は必ずスプリントの練習をすることになった。








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