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競輪場へ

 


 十二月になり、寒さが増した。


「あなたたち、競輪選手になるのが目標だったわね?」

 マリアが真面目な顔で言った。


「「はい、そうです」」


「明日、大垣競輪場でガールズケイリンが走るから本物の競輪を見に行きましょう。たまには、息抜きも必要、明日9時にあたしの家に集合」


 翌日、おしゃれをしセイラを迎えに行った。お店の前で立つ私服姿のセイラは、可愛すぎる。マリアも可愛が34歳という本来の情報が邪魔をして可愛さが半減している。


 少し早めにマリアのマンションに行き、インターフォンを押してマリアを呼んだ。オートロックの扉が開き中に入り、エレベーターでF5階にあるマリアの部屋の階に行く。扉の前でもう一度ボタンを押すした。「中に入って」と、言われドアを開けた。一度来たことがあるが、玄関までだ。二人でお邪魔しますと中に入った。


 広々としたフローリングの部屋に、長方形のガラスの机を囲むように革張りの

 ソファーと椅子が配置してある。中でも一番目を引くのは、テレビの大きさ。100インチは、ありそうだ。だが、それ以上に驚いたのは、部屋が綺麗なことだった。


 下着姿のマリアは、セイラを見るなり抱きつき変態行為に走った。私服姿のセイラは、凄く可愛くて男なら誰でも女にしたいレベルである。私はマリアに口で言っても通じないので身体に制裁をくわえた。


「立ってないで、座って」と制裁を受けたおしりをさすりながら言った。

 革張りの高そうなソファーにセイラと並んで腰を掛けた。マリアは、裸で準備の真っ最中。


「コーラ出してあるから飲んで良いわよ」寒いのにコーラかと思いつつ、

「「いただきまーす」」と頂くことにした。今時栓抜きタイプか、珍しい。

 栓抜きでフタをとり、冷えたコーラを瓶の口から飲んだ。 キンキンに冷えてるコーラを瓶の口から飲むのもなかなか良いものだ。それにしても、マリアがこんなに綺麗好きだとは、思わなかった。

 部室での振る舞いは、ロッカーを開けっぱなしで下着やグローブなどを投げ入れられ、カビが生えてるくらい汚い。そのギャップもあり、関心して頷くしかなかった。


「部屋、こんなに綺麗にしてるとは思ってませんでした」

 本当にマリアには、につかわないほどに綺麗にされた部屋だ。

「マリアさん的に、足の踏み場もないくらいに、散らかしてると思ってました」

 綺麗好きのセイラも関心するぐらいだ。

「失礼ね、女ならこれ位できて当然よ。あんた達も、出来る女になりなさい。出来る女にね」

 大人の女は違うな、見習うとこもあるんだと感心するしかなかった。


 コーラを飲んでると、家庭用電話が鳴った。

「マリア、出なくて良いの?」

 すぐに出れるように立ち上がって電話の近くに行くと。

「勝手に留守電に切り替わるから、平気よ」とマリアに言われた。留守電に切り替わり、ピーーと音の後にメッセージを入れてくださいとスピーカーから聞こえた。

 まさか、マリアの男!?からとか想像し耳がダンボになる。だが、このあと衝撃的な事実を知ることになる。


「お世話になっております、ハウスクリーニングの林です。次のお掃除は、火曜日に伺います」ガシャリと切れた。

 私は、電話が切れた瞬間にマリアの柔らかな頬を引っ張っていた。

「どの口が、言ったのかな~」と、捻りを加える。

「イタタタタタ、ギブ、ギブ、ギブ」

 私の手にタップしてくる。仕方なく嘘をついた制裁を解除した。

「ほたるがつねるから、赤くなったじゃないの」

「嘘をついた大人に教育的指導を行っただけです」


「もう少し時間かかるからテレビでも見てなさいよ」

 マリアは、頬をさすりながら言った。


 だが、テレビの電源を入れるのがすこし怖い、着けたとたんに、何が映るのか…。

 ラブシーンで、何か気まずい雰囲気になるのも嫌だ。それにマリアに興味津々ね、などとからかわれるのが目に見えて解る。


 しかしセイラは、リモコンを取りテレビの電源を入れてしまった。

 案の定、ペイチャンネルで外人の男女がエッチをするシーンが大画面と大音量で写り出された。

「セイラ、ちょっと……」

 マリアは、隣の部屋で大爆笑している。

「あっ、音ね」

 セイラは、音をすこし小さくした。

「いやいや、音じゃなくて…」

 まんまとマリアのトラップに掛かってしまった。してやったりとした顔のマリアが隣の部屋から出て来た。


「昔ね、エロ本の黒塗りされたとこをバターで溶かして見れる都市伝説があったのよ、必死になって指紋が無くなるほど擦ったものよ。後ねコーラのビンでモザイクが掛かってるとこをビンの入り口から見るとモザイクが取れて見える伝説もあったわ」

 セイラは、飲み干したコーラのビンを目にあてていた。

「見えないですね、これも都市伝説ですね」と、マリアのジャングルにも視線を当てていた…。


 準備が出来、マリアのフェラーリで、競輪場に向かった。

「マリア注目浴びてるよ」

「制服かしら」

「たぶん、痛車のほうかと」

 競輪場の駐車場は、満杯だった。

 マリアは、仕方なく有料の駐車場に止めた。


 競輪場開催日に入場するのには、50円必要である。


 日曜日とあってすごい人だ、イメージ的に男だけの場所と思ってたけど、家族連れや女性の団体も結構居た。いつも、練習で来ている時は、怖いくらいに静まり返っているのに、そのギャップもあって、人あたりするぐらいに、賑やかだ。


「あんた達は、買わないの?」

 わかってて聞くから腹立たしい。

「車券は二十歳以上しか買えませんよ」

「こういうとき、おこちゃまは損ね」

 こんなときだけ、大人の力を行使する。

 マリアは、買ってきた車券を見せびらかした。それを見ていた警備員がマリアを連れて行った。制服姿で童顔な女子が、車券を持ってれば当然である。


 数分後、解放された。

 ふてくされた顔で戻ってくるマリアは、怒りながら説明し出した。

「あの男共、身分証明の提示を求めてきて、免許証を見せたら、偽造してないか何度もチェックされて、顔と年齢が違っていると」

「それって一応、誉め言葉にならないですか?」と私が言うと。

 マリアは、人差し指を顎につけて少し考えて。

「言われてみればそうなるのかな?」

 納得して、マリアは、怒るのをやめた。

「もうすぐ、発走するわ、急ぎましょう」

 マリアは、車券を握って2-7-5と呪文の様に繰り返し唱え出した。金網越しから、周回している選手を見ると、女子専用の可愛いレーサーパンツにボンレスハムの様な太股がズラリと並んでいる。あれが本物の鍛え上げられた脚か。私も、競輪学校に受かって、あんなふうになってあそこで走りたい気持ちが凄く増した。


 残り一周半で、ジャンが鳴り響くと後ろから来た選手が、そのまま先行態勢に入った。すぐ前を選手達が通りすぎていく、すごい音だ。接触しても転ばない、プロの走りに圧倒さていた。


 結果は、3-7-5だった。

「おしい!」

「惜しくもないですよ、2番車が7着ですし」

「ハズレたぶんは、野次らないと損だからね」

 マリアは、金網に捕まり、まるでチンパンジーの様に奇声をあげていた。

 こんな大人には、なりたくない。そう心に誓った。


「あー、スッキリしたー。隣のオヤジも負けたみたいでボノボのディスプレイみたいに凄かったわね。まるで野生の王国!」

「マリアさん、余計疲れませんか?」

「疲れ無いわよ。野次ってリセットしないと福は、呼び込めないからね」

「マリア、いくら掛けてたの?」

「三連単の2-7-5に10万円よ」

「掛けすぎだって、そんなに掛けるなら、マリアの好きなホストクラブに、行ったらどうなの?」

「あら、ほたるちゃん。おませなこと言っちゃって、いきたいの?」

「私、言ってみたいです」

 セイラは、即答だった。私も行ってみたい気持ちはある。それを口に出していうことが恥ずかしくて言えない。

「セイラは、ああ言ってるけど、ほたるちゃんはどうなのかな?」

「うーん、本とかで、ちょこっと見たことあるだけだから、興味が無いって言ったら嘘になるけど、興味があるって言うのもあれだし……」

「興味、あるのか無いのかどっちよ」

「あ、あります」

「へぇー、真面目な、ほたるちゃんにもあるんだ、以外ね」

「連れてってもらえるんですか?」

「どうしようかな~連れってあげようかな~」

 マリアは、じらすように私の心をもて遊んでいる。

「私達、マリアのワガママにいつも付き合ってるのに、もったいぶらないでくださいよ」

「そうね、教師としては、あんなとこに連れていけないわね、それにあそこの男共は、金を使わせるだけ使わせて、男にはなってくれないのよ、本気だったのに…。一千万よ、一千万貢いだのに!」

 生々しい話を聞かされて、思ってたとことは違うようなので、興味が薄らいだ。

「成人になったら連れてってあげるから、それまでは、お・あ・ず・け♥」

 その頃には、マリアは四十路。


「大声出したら、お腹すいたわね」

「私も、お腹すきましたー」

 階段を降りて、食べ物屋があるとこに移動した。

 うどん、焼そば、串カツ、カレー、定食など色々ありすぎてなに食べようか迷う。まずは、食べやすい串カツを食べることにした。

「おじさん、串カツ三本下さい」

 きつね色になった、揚げたての串カツ。

 良い匂いだ。

「へい、おまち」と、差し出してきた。

 私達は、一本づつ取り四角く切ったキャベツとソースを着けて食べた。

 衣は、サクッとしてて、中は柔らかい、これなら十本位食べてしまいそうだ。

 すると、セイラは一回ソースを着けた串カツをまたソースの入ったトレイに浸けていた。

「セイラ、ソースの二度浸けは、禁止だよ!」

「あら、そうなの、ごめんなさい」

 セイラは、恥ずかしそうにし深々と頭を下げた。

「お嬢ちゃん達なら良いよ、べっぴんさんだからみんな喜ぶくらいだ」と、笑って許してくれた。

 だが、ここに書いてある通りソースの二度漬けは、禁止になっている。

 申し訳ないのでもう二本づつ食べて後にした。


 次のレースが始まる。

 マリアは、予想屋のおっさんに紙を貰い

 書かれた予想の出目を買った。

「オッズ的に当たったら150万になるから、もう一台ケッタマシーンが買えるわ」と言い、また金網に掴まり1-7-3と唱え始めた。

 入着順位は、1-7-3と入着した。

 マリアは、当たった、当たったと、小躍りしている。

 審議ランプが点灯し審議中となった。

「なんか、長くないですか?」

「長いけど、大丈夫よ」

 審議ランプが消え、場内にアナウンスされた。3番車が失格となりハズレてしまった。

「ぬか喜びさせやがって」と車券を粉々に切り裂いてやり場の無い怒りを解消しようとしていた。その頃には、選手は、敢鬪門の奥に消えて野次ることもできなかった。


 結局トータル百万円負けて、なにも残らなかった。ギャンブルは、娯楽程度に遊ぶのが良いと勉強になった。


 翌朝のマリアは、喉を痛めて声を出せなかった。

 





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