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ケイリン予選

 

 女子のケイリン予選が始まる。

 予選1組にセイラが走る、新田理夢もだ。

 2位までが決勝に進め、3位以下は、敗者復活戦に回る。


 2 組の私は、ホームストレッチで1組の競争を見守ることになった。


 選手達は、それぞれヘルメットに、番号のついたキャップを被せる。


 セイラは、②番車の黒のキャップ、新田理夢は、①番車の白のキャップだ。


 スタートラインに5人が横並びになり、先頭誘導員が通りすぎ、ピストル音と同時にスタート!


 セイラは、すかさず先頭誘導員の後ろに着けた。新田玲夢は、最後方。

 並びは、←②③⑤④①


 セイラは、後ろをチラリと見ながら周回を重ねている。


 残り2周、後方に居た新田がじわりと上がってきた。セイラの横まで来て威圧するように並走する。


 残り1周半になり、ジャンの音と共に先頭誘導員が内側に退避した。


 並走していた新田は、セイラを押さえて先頭に出る。が、セイラも踏み込んでいた。新田の番手に居た④番車が踏み込みに着いていけなく車間を空け、セイラは、新田の番手に上手く納まった。


 新田は、後ろの動きを見ながら後方からの仕掛けに合わせて、速度をあげていく。


 上手く合わせて後方からの攻めを潰した。セイラは、引き離されないように、ぴったりマークする。


 セイラは、4コーナーで外側に自転車を持ち出し、抜く体制に入るが、差が縮まらずそのままゴールを向かえた。


 私は、目の前で新田理夢に、先行逃げ切りを見せつけられた。


 強い。


 その言葉しか浮かんでこない。

 順当に500mTTが速い人が決勝に進んでいる。


 私は、負けられないと思うがレースの作戦が浮かばない。


 うーん、どうしよう。


 無心で走るしかないと、はらをきめる。


 私は、①番車白のキャップをヘルメットに、被せた。新田と同じ①番車の白。


 係員に呼ばれ、5人のペイサーが待つバンクに向う。


 スタートラインに5人横に並び、先頭誘導員を待つ。

 緊張する、まだ予選だというのに。

 それは、新田理夢の完璧なレース運びを見せつけられたからだ。


 誘導員が通りすぎ、ピストル音が鳴る。

 前にいたほうが良いのかなと思い、すぐさま誘導員の後ろを取りに行った。

 後ろを見て並びを確認する。


 並びは←①②③⑤④


 このまま周回し、残り2周。

 最後方の④番車、豹欄のメガネっ娘が、私の横に並びかけてきた。接触するくらい近い。凄い圧迫感を感じる。


 やりにくいな…。


 並走するのは、やだなと思い後ろに下がろうとバックを踏む。


 残り1周半、ジャンが鳴り響き、先頭誘導員が内側に退避する。


 下がったのは、良いけど前も横も塞がれちゃった?


 ペースが上がらないまま残り1周となり

 焦りがでたきた。


 出れない、どうしよう。


 仕方なく、再度バックを踏む。

 その瞬間、ペースがぐんと羽上がった。


 えぇぇぇぇー。なんなのよ、もぅ。


 スピードを落とした瞬間にスピードを上げられ最後方から、五車身ほど離されてしまう。思いどうりに操られ、踊らされてる気分だ。


 残り半周、死に物狂いで車間を詰めると、同時に、渾身の捲りを放った。これでも届くかわからない。がむしゃらにペダルを踏み大外から一気に強襲した。


 結果は、2位。


 あうぅ…。


 新田理夢に私の力を見せつけるレースが、危うく敗者復活戦に回されるとこだった。


 私は、ガッカリした顔でため息をつき、陣取った場所に戻った。


 マリアは、満面な笑みで迎えてくれた。


「二人とも決勝に行けて良かったじゃん」


 対称的に水谷監督は、渋い顔をし腕組みしながら仁王立ちしている。


 叱られて、なにがダメだったか教えてくれるのを期待していた。

 だが、監督は、セイラのヘルメットをポンポンと叩き誉めていた。

 同じ2位だったのにと、ふてくされた顔をしていたら、監督からお呼びがかかった。


 どこが悪かったか指摘ししてくれるのかな?


「ほたるは、今のレース自分で良かったのか悪かったのかわかるか?」


 2位で決勝に進めたことも事実だけど、さっきの渋い顔を見れば悪いレースだったとわかる。


「悪いレースをしました」


 水谷監督は、うんと頷く。


「わかってるなら決勝では、良いレースをしろ。以上」


「えっ、それだけですか?」


 すがるような目で、水谷監督を見上げる私。


「ほたる、もしかして今のレースどこが悪いのか、わからないのか?」


「無心で走るよう心がけてました」


「ケイリンは、無心で走っちゃダメだ。頭も使わなきゃ」

 と、監督は、苦笑いをする。


「今のレースで、一番強いのは、ほたるだ。わかるな?」


「500mTTのタイムでならそうです。

 はい」


「ケイリンは、一番強いやつが狙われやすい。ほたるが今やられたのは、その一番強い選手を前に出させないように後方に誘導させ、前にも横にも出れないようにして、バックを踏ませて最後方まで下がったのを見て仕掛けられた」


「何となく誘導されてるような気がしてました」


「うむ。豹欄の④番車がレースを作っていた。決勝では、罠に掛からないように自分から動いてレースを作れ」


 監督からのアドバイスは、ここまでだった。


 ケイリンを、知ってるつもりで居たが、奥が深いと知り、明日の決勝戦では、自分がどうやって動くか頭のなかで思考した。




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