『異世界から来た彼女』
異世界から来たという彼女は言った。
「ミンナを好きになったんだ。……だから、守らせてよ。私にも、ミンナを守る力はあるんだ」
私よりも華奢な体をした彼女は、笑顔で言った。
彼女の背後には、数年前から現れはじめた怪物の姿があった。怪物は私達を見つけた。大きな体を左右に揺らしながらゆっくりと近づいてくる。
「アレは元々、私達の世界で作られたんだ。他の世界からエネルギーを奪ってくるために。……私もそう。アレと変わらない」
困った顔をさせながら、武器を構えた彼女は笑う。
「でも…しょうがないじゃん。好きに、なったんだから。……しょうがないじゃん。好きになった人達を、黙って連れて行かせられるわけないもん!」
風が、彼女を中心に渦を巻き始める。ミンナと同じ種族だった彼女の容姿はみるみる変わっていく。
銀の髪に金の瞳、獣の耳と尾を生やした彼女は笑う。
「騙しててごめんね。……でも、必ず守るから。…絶対」
笑う彼女の頬に、一筋の涙が光った。
私は仲間の背中に手を伸ばすだけで、何も言うことが出来なかった。
「待って」の、その一言も。