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第三話愛の叫び

どうやってその日、帰ったかはよく、覚えていない。

気付いたら、夕飯の食卓に着いていた。

そして、また気付いたらベッドで寝ていた。

朝になる。俺は、ベッドから出ない。

部屋からも出ない。出る気すらしない。


「お~い!兄貴ぃ!部屋から出て来いよぉ!働かざる者食うべからずって、父ちゃんが言ってるぞ~」


妹の声がする、やんちゃで、気が強く、いつも元気な俺の自慢の妹だ。

しかし、何を言ってるのかよく分からない。聞こえない。聞きたくない。


「はぁ、どうしたんだよ、兄貴ぃ」


そう言って、妹が、部屋から離れていくのを感じた。



また朝になる。

そして、日が暮れ、また次の朝が来る。

そんなことを繰り返して、5日たった朝、とうとう、親父が部屋に殴り込みに来た。


「オラァ!このドア開けろ、ゼン!!俺は、そんな息子に育てたつもりはねぇぞォ!」


そんな息子って、どんな息子だ。

俺は、俺だ。

俺は、お前に、精神面で育てられた覚えはない。

なんせ、俺は、転生者だからな。

まぁ、この年まで、育ててもらった恩は感じているが、正直、お前何様?って感じだ。

だってよ、朝から晩まで、牧場の仕事手伝って、文句も言わず、怒られるようなバカなこともせず、親の手を焼かせずに育ってきたこの俺に!!いつも、自分の思い通りにならないと、怒鳴って、力でねじ伏せ、こちらの言い分を一つも聞かないお前が!!そんな息子に育てた覚えはねぇ、だと?

ふざけんな!!!


『バキッ』


ドアが壊れる音がした。


ドンドン、と音を立てながら、足音が俺の寝ているベッドに近づいてくる。


バサァ、っと布団がめくられ俺の胸倉が親父に掴まれる。


「惚れた女が!!いなくなるからって、部屋に閉じこもる男に育てた覚えはねからなぁ!!」


「は?惚れた女がいなくなる?どいうことだ?親父のか?それとも俺の?」


「アシュリーちゃんに決まってんだろぉ!!惚れた女の旅立ちの日まで、部屋に閉じこもってるなんて、お前はそれでも、男かぁ!」


「お、親父、ちょ、ちょっと、待ってくれ、アシュリーが旅立つってどういうこと?」


「え?ゼン、お前、アシュリーちゃんがいなくなるから、引きこもってたんじゃねぇのか?アシュリーちゃんは、公爵様に見初められて、お妾さんになるらしい。男なら、気持ちよく送り出してやれ!」


「え?アシュリーが……公爵の妾にな……る?え、今日が、旅立ちの日?」


俺は、前世で読んだ小説で、可哀想な運命をたどった妾になった女性たちを思い出した。

こうしてはいられない、と俺は、親父を突き飛ばし、急いで、村の門まで、走った。



_______



「見えた!」


門のすぐそばには立派な馬車が今にも、出発しそうな雰囲気だった。


「アシュリー!!」


俺は、夢中になって叫び、走った。


「ゼン君!……」


一瞬嬉しそうな顔をした後、すぐ暗い表情になるアシュリー。


これが、アシュリーと人生最後になるかもしれない会話だと思うと俺はいてもたってもいられず、叫んだ。


「アシュリー!愛してる!!」


「ゼン君、私も!!」


この時、俺は、アシュリーが自分から、公爵の妾になろうとしたわけではないと


村の人々は、アシュリーとゼンが相思相愛なことは昔から知っていたが、貴族がいるこの世界では仕方がなく、この二人が出会うことはもう二度と無いだろうことに少しの悲しみを覚えた。



この世界では、このような話はありふれている。

だから、村の人々はこの二人はもう二度と出会うことは無いと思った。

しかし、この話には、イレギュラーが混じっていた。

それは、この男、ゼンが転生者だということだ。


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