父上様、母上様、ローマンは幸せでした
この作品は、作者のもう一つの作品である「英雄たちに贈るデブリーフィング」の世界観に沿って書かれております。
この作品だけでも問題なくお読みいただけます。
父上様、母上様。この度ローマンは士官学校を成績優秀につき繰り上げ卒業し、国王陛下直属の特別遺物攻撃隊に配属を命是られました。
父上様。父上様はローマンの誇りです。晩酌のたびに語ってくださった領土拡大戦争の武勇をローマンは夢見ていました。
今思い起こせば私が軍人を志した時、真っ先に激励してくれたのは父上様でした。そして今日、士官学校での厳しい訓練の成果を発揮し、ローマンも父上様のように王国のために活躍することができます。
立派な王国軍人として敵兵をなぎ倒し、王国に仇名す不届きものどもを少しでも多く葬り去ってやる所存であります。
母上様。この二十年間あらん限りの愛情を注ぎ育ててくれた母上様。
士官学校に送ってくださったお便りは、今も大切に保管してあります。ローマンの身を案ずるお言葉は、厳しい訓練での心の支えとなっておりました。
小雨が降る中、伯母上様のお墓参りに行ったこと、一緒にツヴィーベルクーヘンを作ったこと、国王陛下誕生祭を一緒に見に行ったこと、今でも鮮明に思い出せます。
先日帰郷した際に食べた母上様のカートッフェルズッペをもう一度食べたいです。
父上様、母上様。生を受けて二十年間、育てていただいたご恩を何も返せずに誠に申し訳ございません。どうか親不孝者のローマンをお許しください。
この手紙が届いているころにはローマンは立派に任務を遂行し、ヴァルハラに旅立っていることでしょう。ですが、どうかお泣きにならないでください。王国の未来のために旅立つのです。よく戦ったとほめてください。
最後にどうかお体に気を付けてください。ローマンの分まで長生きしてください。
特別恩給が支給されましたのでこの手紙と共にお送りいたします。何かの足しにしてください。
父上様、母上様の子供でローマンは本当に幸せでした。
まだまだ、書き足りませんがもう出撃の時間が迫ってきたのでペンを置かせていただきます。どうかお元気で。さようなら
一九二六年三月九日
神聖ローゼニア王国陸軍少尉 ローマン・トロスト
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