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抵抗  作者: 井川林檎
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 このおばさんは、去年の春から入社した。

 ちょうどその折、病気休暇だったわたしは彼女が入社した時いなかった。

 二か月の間で、会社はいろいろな変革があり、わたしが戻った時には浦島太郎状態だった。

 

 おばさんよりも何年も前から働いている、しかも正社員であるわたしを、おばさんはいくら周りがたしなめても「格下」扱いした。わたしも長らく休んで迷惑をかけていたし、実際仕事の手順が大幅に変わっていたので、人にきいて進めるしかない立場だったから、あえて甘んじた。

 ……すべてが裏目に出て、あれから一年たった今でも、おばさんはわたしを自分より遙かに下の人間だと決めている。


 おばさんはだけど、ものすごく話好きで、注意力がなくて、おまけにパソコンが全くできないから、はっきり言って、一体なにをしに会社に来ているんだと思われるほど邪魔な存在である。

 今ではわたしは以前以上に仕事の速度があがり、もちろんおばさんと関りを持たなくても仕事自体になんら支障はない――というより、むしろ関りがないからこそ仕事の効率があがっている――のであった。


 おばさんは会社の正社員や他のパートよりも年上であり、やたら大声でほがらかに、まるで自分が仕事の代表であるかのように喋るのである。


 「ごめんねえ、相山さん、きちんと処理できてなかったんだねえ」

 と、うちのチームのミスを自分が責任者であるかのように他チームの若い子に笑顔で言う。

 「ありがとう河村さん、この仕事してくれてたんだねえ」

 と、おばさんには全く無関係の業務が片付いていたことについて、まるで自分のためにそれが片づけられたかのように、礼を言う。


 あまりにも朗らかに、あたりまえのようにがあがあと喋るので、たいていのひとはその元気の良さと勘違いにも取れるような態度発言を「仕事はできないし、色々問題あるけれど気の善い人」と取り、最初は苦笑いしながら話しかけに応じ、やがては蜘蛛の巣にかかったように、どんどん話に捕まってゆくのだった。


 だけどわたしは、出会いの時から違和感を覚えていて、今ではこのおばさんの根性の悪さを会社でたったひとり、見抜いている状況に陥っていたのである。

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