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おかしい。居心地が悪い。
昨日から、いや、もっと前から、薄々と感じていた。だけど、そんなばかな、とか、神経が尖りすぎているんだろう、と思った。
見ている目、すっとそらされる視線、見たくないものを視界に入れないよう顔をそむける気配、そして通り過ぎた後、どわっと大きな声で笑い声や朗らかな話し声が聞こえてくる――ような気がする――いや、もしや現実かもしれない。
(これが現実なら大問題だろ)
ばくんばくんと心拍数があがり、呼吸が苦しくなる。
車を停めて、いつもの道順で会社に入り、事務所、タイムカード、トイレ前を通過し、更衣室へ――。
時刻は。
また神経が尖る。
目はおどおどと壁時計を見つめる。ぞうっとする。
この時刻はあれがいる――いやだ――ほんの五分、一分でもいい、あれを避けるために必死で計算して動いているのに、あれは図々しくだらだらと話し込んで動かない。気持ちの悪い虫に遭遇したような気分になるんだよ、廊下の真ん中に陣取って立ち話をして、通ろうにも通れないこともある。
更衣室に入る。おはようございまーす。聞こえてくる耳障りな声、嫌な奴がいる、パートの婆だ、ああ、ぞっとする。