表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第1話

第1話


季節は秋。


学校に根を下ろした木々の葉が赤く染まり、風に吹かれて舞っていく。


わたしはそんな光景を先生に頼まれた書類整理をしながら眺めていた。


時間が経つのはあっという間で1日1日は長く感じても振り返ってみるともう夏休みからひと月が経っている。


書類整理を終えると片手にまとめた書類、片手に先生に書類を届けたらそのまま帰宅するために通学カバンを持つ。


もう18時を過ぎ、窓からはついこの間まではまだ明るかった空が真っ暗になっていた。


廊下を誰ともすれ違うことはなく、わたしがいた3階の教室から本館2階にある職員室までたどり着いた。


「失礼します」


扉を開け、入室するときに対する言葉を口にする。


職員室は私たちの教室の5倍ほどの広さのある空間でそこにほとんどの先生の机が並んでいる。


朝の朝礼前に入室すればそこには100名近くにもなる教師たちが集っているが、いまはもう数えるほどしかいない。


おそらく未だ部活か既に帰宅されているのだろう。


これほど大きな職員室に数名しかいないとなるとなんだかもの寂しい気もするが、わたしにとっては移動も楽であるし、先生も見つけやすい。


「お、御伽。こっちだこっち」


入室する際のわたしの声が聞こえたのか先生が手を振ってわたしへ呼びかける。


「すまんな、こんな遅くまでやらせてしまって」


「大丈夫です。でも、次からはもう少し減らしてもらえると助かります」


先生は頭を後ろ手に掻きながら、苦笑いする。


「では、わたしはこれで失礼します」


早く帰ってご飯作らないと。


両親は遅くまで仕事に就いているから夕食はわたしか2つ下の妹が当番制で作っている。


今日の夕食の当番はわたし。


きっと妹たちがお腹を空かせてる。


「おう、気をつけて帰れよ。っと、そうだ。最近隣町の高校生の親から数件捜索願が出されたらしい。まだ人通りのある時間だから大丈夫だとは思うが、遅くまで外に出てるんじゃないぞ」


「……それ、先生が言います?先生が仕事を押し付けたからこんなに遅くなったのに」


「そりゃそうか。スマンスマン。んんっ、とにかく!気をつけて帰れよ」


「はい先生。では失礼します」


先生の間延びした声が聞こえながら職員室の扉を閉める。


左手につけた時計を見れば時刻はすでに18時23分。


いつもなら買い物も済ませ夕食を作り終えてる時間だ。


行けないとは思うが廊下を小走りし、急いで下駄箱へ向かう。


そこの角を曲がれば下駄箱だという時に1人の男子生徒とすれ違った。


すらっとした高身長が印象に残る。


あんな生徒いたかな?


男子生徒が来た廊下の先には下駄箱しか無くその下駄箱もわたしたち2年生のもののみ。


それほど大きな学校ではないから1年も通えば名前は知らなくとも顔くらいは見たことがあるだろう。


それも男子生徒の中でも目立つだろう高身長だ。


1度も見たことないはずはないと思う。


そういえばこの前……


気が付けば自分の靴入れに手を置いて足が止まっていた。


いけないいけない、早く買い物を済ませて帰らないと。


わたしは考えごとを打ち切り、靴を履き替えてスーパーに向かって駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ