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後編

2年もの長い間を空けてしまい申し訳ございません。2年間、ずっと読み専でした!

 まず容疑者は久保田家の住人であることは間違えない。そして、久保田家には6人が住んでいる。



・父親 久保田 和義かずよし

・母親 久保田 薫

・大学生の長男 久保田 颯太そうた

・高校生の長女 久保田 奈津美

・中学生の次男 久保田 裕太ゆうた

・幼稚園児の次女 久保田 奈緒


 しかし、この中から3人は除外する。それは被害者である、幼稚園児の奈緒と協力者の長女、奈津美とお菓子の事情を知る母親だ。

 となると、容疑者候補として残るのは父親と長男と次男で間違いない。


「じゃぁ、まずはみんなが出て行った時間!」

「はいはい」


 まず最初に、奈津美は愛用しているカバンの中からルーズリーフを取り出し、奈緒にも読めるよう、平仮名で家族の名前を書いていく。

 次に、全部の名前を書いた下に、点線で縦に線を引いた。そして6時、9時、12時、15時の4つの時間を大まかな基準として等間隔に書く。そうして、奈津美はささっとタイムスケジュール表を作ったのだった。





おとうさん

おかあさん

そうた

なつみ

ゆうた

なお


6じ

9じ

12じ

15じ(3じ)





「私とお母さんとお父さんは8時くらいだよ」

「で、私は裕太と一緒に出て行ったから7時40分っと。颯太は確か、9時に家を出るとか昨日言ってたっけ」


 家族が朝、家を出て行った時間をタイムスケジュール表に付け加える。ついでに、母親と奈津美と奈緒家が家に帰ってきた時間も付け加えて書いた。




6じ

|7じ40ふん ゆうた・なつみ 

|8じ おかあさん・おとうさん・なお 

9じ そうた

12じ

|2じ なつみ かえってくる

3じ おかあさんとなお かえってくる






 タイムスケジュールを見た奈緒は、ドヤ顔で9時に家を出た颯太の名前に指をさす。


「犯人は颯兄そうにぃだよ。絶対そうだよ!」


 どうやら奈緒の中で、一番最後に家を出たのが颯太だから、犯人は颯太だと思ったらしい。実に単純な理由で決められてしまった。

 確かに一番上の兄、颯太は甘いものが好きだ。ちなみに、久保田家は奈津美を除く全員が甘党の人間。


 犯人探しを始めてから僅か数分、割とあっさり犯人が決まったようにも見えたが。


「しかし、奈緒探偵さんやい」

「なーに?」

「実は、私が帰ってきた時、台所からカップラーメンの良い匂いがしたんだ」

「えっ」

「でも、台所には誰もいない。ふと、ゴミ袋を見ると………朝にはなかったカップラーメンのゴミがありました。匂いも強く残っていることから食べたのは1時間前くらいかな。さて、これはどう言うことでしょうか?」


 なぞなぞを言うような感覚で奈緒に問えば、即答で答えが返ってくる。


「誰か帰ったきたんだ」

「そう言うこと」

「お昼ご飯の時間に颯兄が帰ってきて、ラーメン食べたんだよ」

「………おぉう」

「だよね!」


 犯人が颯太だと決まっている為、お昼に家に帰ってこれるもう一人の存在に気が付かないようだ。

 事件が解決できてニコニコ顔の奈緒と、苦笑いを浮かべる奈津美。



(奈緒は満足そうだし、グダグタちゃんじゃなくなったから犯人探しはもういいか)



 例え犯人が違ったとしても、奈緒の機嫌が良くなったので良しとするらしい。

 決して、別に、推理がどうでもよくなったとか、濡れ衣を着せられた颯太の慌てふためく姿が見たいとか、そんな理由ではないはず。多分。



 実は、奈津美はもう既に迷推理チョコボーを誰か食べたのか分かっている。そして、颯太が食べていないと言うことも。



 お菓子を食べた犯人は『父親』で間違いない。父親の和義は仕事場から家が近いこともあり、時々、お昼休みになると家で昼食を食べてんびりしてから仕事場に戻る時がある。

 おそらく、今日がそうだったのだろう。そして、カップラーメンを食べた後、冷蔵庫にある珍しいお菓子を見つけ食べてしまった。


 長男の颯太も父親と同じく、通う大学が近場にあり、家に帰って昼食を食べる時がある。それは、財布を家に忘れた時と、弁当を持って行くのを忘れた時だけ。

 過去に『昼食くらい抜けば良いんじゃないか』と、奈津美が言ったことがある。そんな問いに、颯太は昼食を食べないと体内時計が狂うと言っていた。

 以前は家に帰ってくることがあったのだが、最近は違う。いつも使う鞄の中に隠しマネーを持つようになったため、家に帰ってくる事はない。

 ついでに言うと、颯太は甘党には甘党なのだが『迷推理チョコボー 迷える子羊味』という買うのを躊躇ためう味に決して飛びつかない。


 颯太の場合だと、父親か弟の裕太に食べさせて味の感想を聞くだけだろう。


「父さんが食べたって可能性は?」

「えー、ないよ。だって犯人は颯兄だもん」

「さいですか」

「帰ってきたら私のお菓子食べちゃダメだよって言わなきゃ。あーぁ、私のお菓子………」


 シュンと眉毛をハの字にして落ち込む。犯人が決まったのは良いが、楽しみにしていたお菓子がない事には変わりはない。


「そういえば、家に奈緒のお菓子ないもんね。コンビニまで買いに行く?ちょうど、私もお菓子買いたかったし」

「うん」


 一瞬で良い笑顔に変わった奈緒。そんな奈緒を微笑ましく見る奈津美。なんだかんだ言って、クールに見える姉の奈津美も兄弟と父親に似て、奈緒には甘いのだ。逆に母親は甘々の父親と兄妹達とは違い、厳しいことが分かる。

 母親強し………母親だけは怒らせてはいけない、それが久保田家の父親と兄妹の密かなルールでもあった。


(父さんに、奈緒が大切にしてた迷推理チョコボー食べられて怒ってるよって、メールでもするか)




* * *







「みてみて〜、迷推理チョコボーあらぶるうさぎ味あったよ」

「そんなのあるんかい」


 立ち寄ったコンビニで、まさかの展開が起きた。なんと『迷推理チョコボー 迷える子羊味』と同じ期間&数量限定の『迷推理チョコボー あぶるうさぎ味』があったのだ。

 何それと思いながら、奈津美も欲しかったお菓子『厚切り芋チップス!キャロライナ・リーパー味』を買ってコンビニを出た。


サクサク、サクサク。


「それ美味しいの?」


 帰り道、サクサクとお菓子を食べながら歩く奈緒に奈津美が聞いた。荒ぶるうさぎ味とはどんなものか興味が出たのだろう。パッケージは可愛いピンク色で白色のうさぎのイラストが描かれている。ロゴも丸っこい平仮名で柔らかい印象だ。


「うん美味しいよ。なんかね、甘くてサクサクしてて、偶にカリカリで、パチパチ弾けるの。ほら」


 口を開けるとカラコロ、パチパチと音が響く。この音は、お菓子の中に入っていた小さな飴から聞こえてくる。

 これは飴の中に炭酸ガスの気泡がたくさんあり、口の中で飴が唾液によって溶かされ中に入っていた二酸化炭素が放出。すると、パチパチと音がなるという仕組みだ。


ガリガリ、ゴリゴリ、ガリッ。


 さっきまで、サクサクと軽い音が聞こえたが今度は硬い音が聞こえてくる。どうやら、この『迷推理チョコボー あらぶるうさぎ味』というのは2つの食感が楽しめるらしい。


 全体がいちごチョコでコーティングされている1本のうち、半分は軽い食感のパフで出来ており、その中に炭酸ガス入りの飴が入っている。

 そして、もう半分は中までしっかりチョコとナッツ類が詰まって硬い食感。


(もしかして、サクサクの食感が穏やかなうさぎで、硬いほうが荒ぶるのかな?)


「歯、いたーい」

「硬いところは舐めたら」

「うん」


 奈緒は奈津美が言った通り、舐めて溶かす事にした。夕日を背にし、お互い手を繋ぎながら帰り道を歩く。
















その日の夜。




「ごめんな、お父さんがお昼に食べちゃった」

「えっ、そうなの!颯兄じゃないの」

「俺じゃないから。奈津美、お前最初から分かってんなら教えてやれよ」

「エ〜、ワタシ、ワカラナカッタワ」

「おいっ」


 颯太は帰ってきて早々、奈緒にお菓子のことで付きまとわれていた。でも結局、帰ってきた父親がさらっと事情を説明し、奈緒に謝ったことで誤解は解けた。




 こうして、久保田家の小さな事件は無事に解決できた。


お話は終わりですが、エピローグがあります。

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