訪問者
「なんか……老けたな」
千葉が真顔で言った。
その一言で場の雰囲気は格段に良くなった。
私以外は。
「つうが、帰ってくるの早すぎだし!!もう一回行ってこいよ!」
菊山が調子に乗って話しかけた。
「お前行けよ。」
鬼の形相で私はキレたらしい。
「一人じゃ何も出来ないクソ弱カスが調子に乗ってんじゃねぇよ!潰すぞ。それとも俺に弱カスじゃない所をみせてくれるのかぁ!?どうなんだよ?答えろよ。答えてみろよ。さっさと答えろや!!!
出来もしない事ばかり言いやがってぶっ殺、痛てててて」
私の頬っぺたを千切れんばかりに富士村がつねった。
「郁…落ち着け」
私は我に帰りました。
「ごめん、言い過ぎた」
菊山に謝ったが、見たことがないくらいヘコんでおり何も喋れなくなっていました。
「明日も仕事だし帰るべ」
千葉は冷静に呟いた。
なんとも後味の悪い肝試しで、帰りの車中は重苦しい雰囲気でした。
何だかんだで皆を自宅まで送り届けると、時計の針は午前3時を回っていました。
「あーあ疲れた。まったく楽しくねぇし寝るべ」
私は布団に潜り込みボーッとしていると
「キィーーーン」
耳鳴り?
「ボッ!!」
新幹線でトンネルの中を通過する時、耳に圧力がかかったような状態になりました。
「なんだこれ?」
耳が気になり、手で確認してしようとしても体が動かない。
「金縛り?」
疲れがたまってるのかぁ・・・位にしか感じなかったが、それは一瞬で覆ってしまった。
「お前は何をしに来た」
「2度とくるな」
「ふざけるな」
私の耳元で説教が始まった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
私は一生懸命に謝り続けていると、いつの間にか寝ていました。
これは、今からおきる出来事の予兆と警告だったのだと後々気付きました。