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zip.25 24はキングクリムゾンされました

オルクスの街の朝は早い。

朝日が昇ることにあわせて鳴きだす鶏の声と共に、朝1番から市場に出る者、街を出て次の目的地に向かう者、朝餉の準備を始めるものなど様々である。

朝の光が降りそそぐ宿の一室で、人の気配を感じて目を開けた雄也は、不機嫌全開で顔を覗き込んでくる金髪のシスターの少女に、寝起きからギョッとする事になった。

「おはようございます、雄也さん。ゆうべはおたのしみでしたね」

「お、おはよう、アイリス。何か怒ってないか」

「そう見えます? ええ、そうですね。大怪我をした雄也さんに付き添って、割と私、この人のこと大事に思ってるなーとか思ってたら、おとなしく寝てなきゃいけない夜のうちにリセラちゃんと一線を越えたこととか、朝一にリセラちゃんがやってきて夜の行為をとろけた頭で延々と言ったこととか……怒ってませんよ?」

「色々と申しわけありませんでした」

と、ベッドの上で土下座をする雄也。

それを見て、多少は溜飲が下がったのか、アイリスは一つ溜め息をつく。

「まあ、朝からそれだけ元気なら大丈夫そうですね。怪我はふさがっても、大量の血は流れたわけですし、その上で精も抜けたらポックリ逝っちゃうんじゃないかと、怒りながらも心配していたのですが」

「……俺って、そこまで拙い状態だったのか? いや、今朝も何か気だるい気はするんだけど」

「その大半は、リセラちゃん相手にあれこれしたせいだと思いますけどね。ともかく今後は、体調を整える為に自重してください。ほら、まずは朝食をとりに食堂に行きましょう。気だるいというのなら、肩を貸しますから」

そういって、雄也の肩を支えて移動の手助けをするアイリス。雄也にしてみれば、首を切られてから先日の夜半に目覚めるまで、一瞬の空白の時間であり、自分が病人という自覚もあまりない。

だが、失血はそれなりには身体に影響を与えているようで、アイリスが肩を支えてくれるのは、ありがたかったのであった。


「さあ、それでは頂きましょう。健康な身体を作るには、まずは食事からですから」

「ああ、いただきます」

食堂のテーブルについた雄也の前に並んだ料理は、小麦のブレッド、野草と海草と貝の卵スープ、アオバイ(うなぎ)の串焼き、旬の果実である。

匙を手に取り、スープをすする雄也に、アイリスは小首をかしげながら聞く。

「味はどうですか? なるべく胃が驚かないように薄味にしましたけど」

「ああ、美味しいよ。この料理はアイリスが?」

「はい。ミタマさんに、血と精がつく料理を教えてもらいましたから。当面は、三食このスープを飲んでもらいますからね」

本当は、私が手ずから、あーん、と食べさせてもよかったんですけど、といいながら、アイリスはジロリと雄也を見つめる。

「夜中にハッスル元気があるのなら、その必要もないみたいですね」

「いやー、アイリスの料理は美味いなあ」

形勢不利な気配を感じ取ったのか、雄也はそんなことを言いながら、食事を進める。

そうして、食事を終えると、雄也はアイリスに支えられ、再び部屋に戻った。


「まあ、二、三日もすれば全快するでしょうし、これを良い骨休みと考えて、当面は食っちゃ寝で過ごしてください」

「そう言われると、起きて動きたくなるんだけどな」

「ねてろ、と私は言ってるのですが」

据わった目でアイリスに睨まれ、雄也は大人しく、布団をかぶりなおした。

「まあ、どうしても寝れないのなら、子守唄を歌うなり、添い寝するなりしますから言ってください。添い寝のほうは、出来れば夜の方がありがたいのですがね」

そういって、アイリスは雄也のベッドの傍に椅子を置き、腰掛けて本を読み始めた。

その様子を見ながら、雄也は目を閉じる。朝からの二度寝に、寝れるかとも思ったが、睡魔はすぐにやってきて、雄也を眠りの淵に引き込んでいったのであった。


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