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zip.17

異空ダンジョンと呼ばれるものは、通常の迷宮とは違う法則が適用される事が多い。

入るなり火山の火口付近だったり、入り口からすぐ、果てのない砂漠が広がるダンジョンもある。

『長行く(おさゆく)べき地下道』も、異空間ダンジョンであり、雄也たちの目の前には、人が並んで行進でき、天井も十メートルほどの高さという、大きな道が続いていたのである。また、壁からは苔の一種が光を発しており、松明などをつける必要もなかった。

「これがダンジョン………」

「正確には異空ダンジョンだな。当分は一本道だが、想像してるより中は広くて入り組んでるから注意な」

「……分かってるわよ」

感慨深げに呟いているところに、横合いからロッシュに声を掛けられ、リセラは少々不満げに言う。自分は初めてくるところなのに、以前来たことある人がいるのが、何となく面白くなかったのである。

(そういう気持ちは分からなくもないが、ずっと呆けたままだと、先に進まないからな)

そんなことを考えながら、リセラの不満げな顔をあえてスルーしながら、ロッシュはことさらに明るい声を出す。

「さて、それじゃあ隊列の確認をするぞ。一番前は俺、その次がリセラの嬢ちゃんだ。モンスターの攻撃は、まあ、このダンジョンの敵なら俺ひとりでしのげれるだろ。リセラの嬢ちゃんは、罠や索敵、あと、戦闘のときはクロスボウで攻撃を頼む」

「はいはい、わかってるわ」

「………で、列の中央がスピカだ。魔法は射程も長いし威力もあるけど、接近戦になったら一番柔らかいからな。無理せず、自分の判断で攻撃するんだ。いいな?」

ロッシュの言葉に、スピカは無言で頷く。普段は離れないようにピッタリ寄り添う事が多いとはいえ、ダンジョン内ということもあり、自重しているようであった。

「それで、その少し後方にアイリスの嬢ちゃん。回復も出来るし、いざという時はスピカを守ってくれると助かる」

「お任せされましょう」

「ああ。で、最後尾が雄也だ。ダンジョンもそうだが、パーティで行動してる時は、後方からの襲撃も考慮に入れないといけないからな。メンバーが少ない時は後回しになる事が多いが、しんがりは重要な役だからな、よろしく頼む」

「了解」

ロッシュの言葉に、雄也もまじめな顔でうなづいた。


そうして、雄也たち一行は、広大な洞窟の通路を歩き出した。

光る苔が照らす道を進んで十分ほど、雄也たち一行の前の道が左右に分かたれて奥に続いていた。

「分かれ道ね、どっちに進みましょうか?」

「ロッシュは以前来た事があるんだろ? その時はどうしたんだ?」

リセラの言葉に、雄也はロッシュに話を向ける。コマンドナイトの青年は、うーん、と少々考えながら口を開く。

「俺のときは左だったが、あまりそういうのは参考にしないほうが良いかもな、今回はともかく、他のダンジョンの時にどうしていいか分からなくなるだろ」

「それもそうか」

「あと、現在位置の把握は、誰がするんだ? マップもつけずにダンジョンにもぐるのは、地図無しで旅行するようなものだけど、リセラの嬢ちゃんか、スピカのどっちか、やってくれるか?」

ロッシュの言葉に、リセラは眉をひそめて首をかしげる。

「あたしは、周りに集中したいんだけど………」

「それじゃあ、スピカだな。荷物の中から、方眼紙とコンパス、あと、ペンとインクを出してくれ。ここまでの道筋を記録するんだ」

スピカは、分かった、と呟くと、筆記用具と下敷きの板、方眼紙を取り出して記入を始める。マップを書き終わると、それを見てから、リセラが提案を口にした。

「それじゃあ、今回は右に行ってみましょうか? なにか面白いものを発見するかもしれないし」

特に反対意見を言うものもなく、リセラとロッシュを戦闘に、一行は右の道に進んだのであった。



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