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zip.13

オルクスの街付近で、凶暴なモンスターといえば、南の森に生息するジャイアントベアや、草原を数十頭が一塊になって爆走するキングバッファロー、山脈部で空を飛び、人も獣も区別なしに襲う、ウッドワイバーンなどがいる。

そういった獣には、退治すると報奨金が出るものもあり、冒険者たちの糊口をしのぐのに一役かっている。

それとは別に、角が素材として、肉が食用として重宝されているモンスターも、冒険者たちの標的とされることとなる。

新メンバーを加えた雄也たちが狙うのは、以前、遠目からひたすら矢で狩った大角や、小さくても美味しい肉となるホーンインパラなどである。

どちらも、身の危険を感じると、自らの角を使って突進してくる相手であった。

「よーいしょい!」

鈍い音と共に、ロッシュのかざした大盾が、大角の突進を食い止める。

重装備であるロッシュは、小揺るぎもせず、逆にぶつかってきた大角の方が弾きとばされた。そのタイミングを見計らって、魔術師の少女、スピカが杖を向ける。

氷弾フリーズバレット

言葉と共に打ち出された氷塊が、大角の身体に穴を開けて、絶命させた。

その様子に、周辺の様子を伺っていたリセラが喝采を叫んだ。

「ナイス、スピカちゃん! 次の獲物はー、右手の草むら、ホーンインパラがいるわ」

「よし、じゃあ俺が大回りで逆側から追い込む。アイリス、一緒に来てくれるか?」

「はい、二人組ツーマンセルですね。見通しがよい草原とはいえ、トラブルがあった時の備えは必要ですからね」

リセラが索敵をし、好戦的な大角なら、ロッシュの防御力で正面から対峙し、気の弱く、逃げることの方が多いホーンインパラに出くわした場合は、逃げづらいように挟み撃ちで追い込み、それでも逃げ切ろうとした場合はリセラが狙撃するという方法をとっていた。

そうして、夕刻になるまでに、十数頭のモンスターを狩るという成果をあげる事ができたのであった。


「いやー、なかなか大収穫じゃないか! やっぱり人手が多いと安定して稼げるもんだな」

倒したモンスターを換金し、酒場で乾杯するころには日も落ちて、夜の帳が下りていた。

大角のつの5本、ホーンインパラのもも肉が11個と、そこそこの売り上げになったこともあり、ロッシュは上機嫌である。

「しかし、雄也。お前さんの銃、だったか、あれには驚いたぞ。予備動作もなく、玉を飛ばすとか、戦いに幅が出来て良いなぁ。俺は守ることしか芸がなくてな」

「いや、ロッシュが盾役をしてくれて助かるよ。攻撃を受けてくれる味方がいれば、安心して戦えるからな」

そういって、雄也は酒瓶をもって、ロッシュのジョッキに酒を注ぐ。

「それに、スピカの魔法にも助けられたし、パーティに入ってもらってよかったと思うよ」

「………」

と、雄也はスピカに顔を向けるが、魔術師の少女はというと、無言で顔を背けただけである。戦闘の時も、呪文を唱える時以外はまったく言葉を発しようとしない様子に、人見知りなのかと、雄也は内心で思う。

と、二人のことをべた褒めする雄也に不満を持ったのか、リセラが手を上げて声をあげる。

「雄也、あたしは? あたしもしっかり活躍したでしょ?」

「ん、ああ。リセラも敵の探索ありがとうな。シーフの探索スキルも、頼りになるって、あらためて分かったよ」

「ふふん、そうでしょー?」

「それに、アイリスの治癒にも世話になったし、やっぱりパーティって良いものだな」

しみじみと雄也が言うと、我が意を得たとばかりに、ロッシュが大きく頷いた。

「そうだろ、そうだろ。協力し合う関係! 仲間同士の親睦、パーティってのは、こうでなくちゃな! おーし、どんどん呑むぞ!」

「………」

はっはっはー、と笑うロッシュをスピカがじっと見ているが、特に何をいうこともなく、視線を手元に戻す。

その後も、しばらくの間、飲み食いをしたあとで、その場はお開きとなり、解散となった。


「それじゃあ、また今度な、お前たち」

「………」

ジョッキで二桁は呑んだのに、確かな足取りで歩いていくロッシュ。そのあとを、まったく呑んでいないスピカが小走りに追いかけた。

雄也たちはというと、呑みつぶれてグロッキーなリセラを、雄也が背負い、宿に戻ることにしたのであった。ちなみに、教会を寝床にしているアイリスはというと……

「あ、今日は私も、雄也さんたちが宿泊しているお部屋に泊まりますから。いつも駄目だというリセラちゃんも、今日は酔いつぶれてますから構いませんよね?」

などと言い出して、雄也を困惑させた。二人で泊まっている部屋は、けして狭くはないが、人が一人増えれば、その分窮屈になるのは目に見えている。どうしようか、と思う雄也であったが――――

「えーと」

「というか、酔いつぶれたリセラちゃんと、二人っきりなんてそんなシチュエーションにはさせませんから。いいデスね?」

と、据わった目でアイリスに言われて、雄也も断ることはできなかった。

そうして、宿に戻った雄也たちは、ベッドをリセラとアイリス、床で布団を敷いて雄也が寝るという形で落ち着くことになった。

「ふふ、リセラちゃんとこうして寝るのは、小さかった頃以来ですね」

幸せそうに、そう呟くアイリスの声を聞きながら、雄也は目を閉じる。

それなりに飲んだ酒のおかげで、すぐに睡魔がおそってきて。雄也は眠りの園へと、意識を飛ばしたのであった。

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