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新メンバーになるかもしれない二人と会うことを決めてから数日後、雄也たち3人は、冒険者ギルドの食堂で、件の二人と会うことになった。時間は昼下がりである。
「よう。あんたらが紅玉さんの話してた3人組だな? 俺がロッシュ、こっちの小さいのがスピカだ。よろしくな!」
そういって、気さくに声を掛けてきたのは、ロッシュと名乗る男性のコマンドナイトである。鉄製のプレートメイルに身を包んだ大柄な青年の傍には、スピカという名の魔術師の少女が、その大柄な陰に隠れるように、雄也たちの様子を伺っている。
ロッシュは背が高いが、スピカは逆に背が低く、その差は頭4つ分程度といったところだ。そんな二人が寄り添うように立つ――――というより、小さな少女が大柄な騎士の足元に纏わり付くのを見ていると、
「なんだか、憲兵さんを呼ぶべきだと即断したくなる光景ですね」
「ちょ、気持ちは分かるけど、違うから、犯罪じゃないから!」
ぼそりと呟いたアイリスの言葉に、ロッシュは慌てた様子で否定する。本当ですか? と、アイリスは幼女趣味の犯罪者を見るかのような目でみつめた。そんな彼女に、弁明するように、大柄な騎士の青年はさらに言葉を続ける。
「こう見えても、俺とスピカは同い年だし! 17歳同士だから問題ないだろ?」
「17って、あたし達より年上!? こんなちっちゃくて可愛くて――――おっぱい大きいのに!?」
「………」
思わず言ったその言葉に、食堂のあちこちから視線が集中する。その視線が嫌だったのか、スピカはますます、大柄な騎士の陰に隠れるような仕草を見せた。
その後、雄也たちも自己紹介を済ませてから、5人はテーブル席に着く。そうして、適当な食事と飲み物を注文したあとで、ロッシュがおもむろに、雄也に対し話を始めた。
「さて、顔合わせとしては色々問題だったと思うが、とりあえず、パーティを組もうって考えは変わらないってことでいいのか?」
「はい。俺たちとしては、パーティの戦力を充実させたいと思ってましたからね。ええと、ロッシュさんはレベルはいくつですか?」
「俺もスピカもレベルは5だ。立ち振る舞いを見るに、お前さんたちもそのあたりだろ?」
「ええ。俺はレベル6、リセラはレベル4、アイリスは3です」
雄也の言葉に、ロッシュは頷くと、うんうんと頷いた。
「まあ、そのあたりだろうな。あと、そんなかしこまった話し方をしなくても良いぜ。同い年くらいだろうし、気楽に話そうや」
「………そういうことなら、そうさせてもらうよ、ロッシュ。それで、パーティには二人一緒で参加するってことでいいんだな?」
「ああ。入るときも、出て行くときも二人だ。あと、プライベートは適当な付き合いにさせてもらうぜ。クエストの時は同行するが……まあ、半分臨時パーティみたいなスタンスになるな」
ロッシュの言葉に、雄也はなるほど、と呟く。
「それは、大きなクエストの時は組んで、それ以外はお互い、小さなクエストで生活を立てる。ってことか」
「ああ。ま、そういうことだな。普段はそっちは三人でやってて、俺はスピカと仕事を請けるが、ダンジョンアタックや護衛任務とかの時は、都合を合わせて協力するってことでどうだ?」
「そうだな、四六時中仲良くってのも、余程気心知れた仲じゃないと難しいだろうし、俺はその条件で良いと思うけど、リセラたちは……」
さっきから、ロッシュと雄也の話に割り込んで来ないリセラたちはというと………小ぢんまりとしたスピカを気に入ったのか、リセラとアイリスは、小柄で胸だけ豊満な少女を挟んで、和気藹々と楽しんでいるようであった。
「ほーら、スピカちゃん、あーんして!」
「うーむ、このおっぱいが、おっぱいが理不尽です。いったいどうしたらこんな風になるのでしょうか。さわりたい、ああ揉みまくってみたい……」
「………ぅざい」
小さな声で、ポツリとスピカが呟くが、リセラもアイリスも、そんな呟きを気にとめもせず、スピカを彼女たちなりに可愛がっているようであった。
「――――……は、なんだか仲良くなってるみたいだな。スピカが受け入れてもらえるかが心配だったが。仲良くやれそうじゃないか、なあ、雄也」
「……そうともとれる、のか?」
明るく言うロッシュの言葉に、雄也は首をかしげる。
そんな彼に、手に持ったグラスを掲げて、ロッシュはニヤリと笑いを浮かべた。
「とりあえず、まずは乾杯しようぜ。で、食い終わったらまずは草原に行ってみるか。お互いの実力も、まずは見ないといけないだろうからな」
その提案に異論はなく、昼過ぎからは、近郊の草原にて、モンスター狩りをすることになったのであった。




