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リセラとアイリスのレベルも上がり、多少は楽にクエストをこなせるようになってから、雄也たち三人は、新たにパーティメンバーを募集することにした。
現状、3人という人数は、一人ぼっちよりはよいものの、大きな任務を受ける際には、やはり心もとないのが現状である。護衛などのクエストをこなす時は、ペアで分担行動が出来るように、4人以上のパーティが望ましいとされていたのである。
そんなわけで、新しいメンバーを募集することにしたのだが……
「やっぱり、火力が必要なのよ! 魔法使い、それも女の子が望ましいわ」
「いや、まずは前衛だろ。ナイトとかディフェンダーとか、そういう職業を勧誘すべきだと思うぞ。あと、性別は男性のほうが俺としては助かるんだが」
と、リセラと雄也の意見が割れたのである。ここはギルドの食堂。そこで、加入するメンバーの条件などを話し合っているところであった。
ちなみにアイリスは、どちらにも付かずにお茶を啜っている。
「なんでよ、魔法使いがいると色々便利なのよ。火とか起こせるし、いろいろ知っているし、何をおいてもメンバーに加えるべきでしょ」
「だけどな、そうやって増えたのを誰が守るんだよ。前衛が俺一人で、リセラとアイリス二人を守るのも難しいだろうし、ここは硬い前衛職を優先すべきじゃないか」
「……まあ、その言は一理あるかもだけど、それだったら女の騎士とか探せば良いじゃない。なんで男の方が良いっていうのよ?」
「単純に負担の問題だ。主に、俺の心な。これ以上パーティに女性比率が上がり続けると、精神的につらくなるんだよ」
「んー………でもなあ、あんまり男の冒険者はいい印象がないからなぁ……雄也は別として。アイリスはどう思う?」
わいのわいのと、雄也と言い合っていたリセラは、のんびりとお茶を飲んでいるアイリスに話を振る。シスターの少女は、友人の質問に、一口お茶を啜ってから、呆れたような口調で返答をした。
「どうも何もないですよ。こうやって、どんな人が欲しいかなんて話し合っても、とらぬたぬきのぽんぽこり~んですから。条件に合った人なんて、そうそう見つかりませんよ」
「皮算用だって言いたいのか」
「そうです。ですから、最初に二人のいっていた条件で、さっさと募集してみたらいいんじゃないですか。もし、条件に合う人がそれぞれいるなら、そのときに話し合えばすむことですからね」
アイリスの言葉に、それもそうだ、ということで、雄也とリセラは二人そろって、受付にメンバー募集の紙を提出しに行ったのだった。
「男性の前衛職と、女性の魔術師ですね。提示された、ご希望に合う人は――――少々お待ちください」
受付嬢の紅玉は、そういうと、カウンターの奥に消える。どうやら、適合する人物がいるか、調べに行ったようであった。
「いい人が見つかると良いんだけど」
「そうだな」
そうして、少し待っていると、紅玉が再び奥からカウンターまで戻ってきた。
「お待たせしました。ご希望に合う人は、それぞれいましたが……ひとつ、問題がありまして」
「問題、ですか?」
「はい。男性の前衛職と女性の魔術師は、ちょうど一人ずついましたが……この二人は、同じパーティで行動したいと条件を出されてます」
ようは、仲間に加えたければ、両方を仲間にしろ、ということらしい。
「俺たちとしては、どっちも必要だと思うので、パーティに参加してもらっても問題ないと思うんですが、どうしてそんな条件を出したんでしょうね?」
雄也の問いに、紅玉は、そうですね。と、頬に手を当ててから、小首をかしげる。
「同じパーティという条件なら、身内とか、恋人だから、という理由が妥当だと思いますけど、詳しいことまでは聞かないのが暗黙の了解ですから」
紅玉の言葉に、リセラは苦いものを飲み込んだときのような顔をした。
「うーん……確かに、メンバーは欲しいけど、どうしようか、雄也。もし恋人同士で、四六時中いちゃつかれたりしたら、それはそれで迷惑だと思うのよ」
バカップルは遠慮したい、と言外に告げるリセラ。その点は雄也もまったくの同意である。
「まあ、その点は、会ってみないと分からないんだろうなぁ。紅玉さん、その二人に、連絡をつける事ができますか? 日時を指定して、話をしたいんですけど」
「はい、かしこまりました」
「うう………不安だなぁ」
あまり乗り気ではない様子で、リセラは溜め息をつく。
こうして、日を改めて、雄也たちは男性の前衛職と、女性の魔術師にあうことになったのであった。リセラは不安そうな顔を隠そうともしなかったが、
「まあ、当たって砕けろですよ」
と、話を聞いたアイリスは、こともなげにそう言ったのであった。




