zip.10 幕間
オルクス近郊の草原――――あいも変わらずクエストをこなしていた日々の合間の休日。
雄也は仲間を連れずに、一人、野生の動物たちがはびこる、この場所に来ていた。
人目を忍んでここに来たのは、自らのスキルである、圧縮、解凍の確認作業のためである。
「zip!」
雄也の突き出した手の先、十メートルほど離れた空間の空気が凝縮されて、小さな一つの玉になる。
「……やっぱり、10メートルくらいが限界か」
そういうと、雄也は背後を向き、解凍のキーワードを唱える。
「thaw」
その言葉に合わせるように、圧縮された空気が開放され、爆風が起きる。それを背中に受けながら、倒れないように雄也は地面を踏ん張った。こうして、圧縮と解凍を行いながら、スキルの応用点を探している最中である。
「解凍の場合は、圧縮の時みたいに視認していなくても、距離の目算が合えば解凍出来るみたいだな。解凍する対象は、指定しないといけないけど」
たぶん、圧縮の時ほど複雑なことをしているわけじゃないからだろう。ただ元に戻すっていう感じだからかな……そんなことを呟く雄也。
「そうなると、前に考えてたあれも出来るかな……やってみるか」
そういって、懐からあるものを取り出す雄也。それは、ぱっと見は灰色の拳銃に見えた。
もちろん、本物の銃ではなく、圧縮によってそれっぽく形を仕上げたものである。
「瓶に圧縮した空気の玉を入れて風を打ち出す事ができたんだ。あとは、その応用で弾丸を打ち出せれば……そうなると、形は変えるべきだよな」
そう呟きながら、手に持った銃を更に形を変えて圧縮しなおす。発射口と、弾丸をこめる穴と空気の玉をつめる穴が繋がった形に変化した銃に、空気を変化させて作った弾丸と、発射用に作った玉をそれぞれ込めた。
そうして、少し遠くで草をもしゃもしゃと食べている大角に向けて、雄也は解凍のスキルを使う。
「thaw」
空気の弾け飛ぶ音が聞こえた。弾けとんだ空気の圧力に押され、銃口から発射された弾丸は、狙い違わず大角の頭部に当たり、大角はぐらりと身体を傾げ、どうと草むらに倒れた。
獣を倒す事ができたものの、雄也は難しい顔をして考え込む。
「充分使えるみたいけど、このままだと連射は難しそうだな」
オートで装填できる機能は、圧縮スキルでは再現できない。まだまだ、銃として使うには、改善点は山のようにあるのであった。
そうして、雄也のスキルの実験は、その後もしばらくの間続き、いくつかの新しいスキルの使い方を発見した。
それらが今後使われるかどうかは、まだ誰にも分からないのであったが。




