心温まる鍋
大学を卒業して社会人になった。
卒業論文を作成する過程で過去の例題が必要になり、懇意にしていた先輩の助力を借りた。
変だけどいい人だったので他にもいろいろ相談させてもらった。
例えば就職のこと。
大学で専攻していた分野に進んだ先輩は、知識を活かして働いている。
狭き門の専門分野で先輩が希望の職に就けたのは偏に先輩の努力があってこそ。
凡人並みの努力しかしていない身分で同じ土俵は到底立てない。
大学の就活相談でも難しいと言われるばかり。
もっと広い間口の職でないと年内中の内定は厳しいとまで言い渡された。
就活相談からもらった資料だけでなくタウン求人誌も使って対策を練り、ハウスメーカー支社の営業職の内定をもらった。
いくつ落ちたかは数えたくない。
就職が決まったことを先輩に報告した。
話の流れで一人暮らしのための部屋を探しているという話題になった。
先輩は学生時代は学生寮、就職してから社員寮に入っていたので参考になってくれればと口にしたのだが、
「小石川も一緒に住まないか?」
とシェアハウスを勧められた。
そういう話の流れだっただろうか。
社会人2年で持ち家とか、なくはないだろうが普通家庭持ちがすることだろう。
しかも野郎同士でシェアハウス中とか。
仲良く……悪くはないけど、すごくいいってわけではなかったはず。
社会人になったら普通なのだろうか。常識がわからない。
「お邪魔では?」
やんわり断ろうとしたら、「ぜひ来てほしい」と力強く説された。
なんでも生活能力ゼロなせいで同居人に毎日怒られているそうだ。
緩和剤が欲しいということらしい。
いろいろ条件を提示され、最終的に安すぎる家賃(光熱費込み)に負けてシェアハウスに引っ越した。
いい人たちだけれど先輩相手では緊張するし気を使う。
と、思っていたのははじめの1週間くらいで、なんだかんだ楽しく暮らしている。
ちょっと……事故?……った日があったけど、聞かなかったことにできるくらい成人した大人なので気遣いができる。
というか忘れたい。忘れさせてくれ。
そんな平和なシェアハウス生活を壊す電話が日曜の朝に鳴った。
『今度理香がそっちの大学に行くことになったから、お兄ちゃん、あの子と二人暮らししなさい』
母親からの電話だった。
理香とは5つ離れた生意気だけどそれなりにかわいい妹のこと。
かわいいけれど、兄を敬うことない、それどころかパシリに使おうとするあの妹が兄と二人暮らししたいと思うだろうか。
絶対ないし、こちらもごめんだ。
「俺、今先輩とシェアハウスしてんだけど」
『あんたの家じゃないんだからいいじゃない。なんならこっちで部屋用意してあげるから』
俺の時は出て行くなら自分でやれって言ったくせに、妹にはめちゃくちゃ甘い。
未成年の女の子だから心配するのはわかる。
その優しさを息子にも少しはわけてくれ。
というか、二人暮らしはすでに決定事項なのかよ。
『じゃあよろしくね。あ、あんた宛の郵便物たまってるから、たまには帰ってきなさいよ』
母は言いたいことだけ言って電話を切った。
こちらの言い分なんて聞く耳なさそうだ。
妹が俺と同じ大学に通うならば二人暮らしをしなくても実家から通えばいい。
通学に1時間半程度かかるが通えなくない距離だ。
大学に近い部屋となると、シェアハウスと比べて通勤時間が延びる。
さらに、高田先輩の美味い飯が食えなくなる。
というか、家事は全部自分でやらなくてはいけなくなるし、家賃が倍以上になる。
絶対に嫌だ。
空腹で階下に降りるとソファに先輩たち(一人抜け)が寛いでいた。
「おはようございます」
「おはよう」
「はよ」
「おはよー」
あいさつをすると当たり前のように返ってくる。
妹なら返してこない。
絶対だと言い切れる。
「朝から電話してたな。仕事か?」
部屋が隣の高田先輩に聞こえていたらしい。
販売業の高田先輩が日曜日に家にいるのは珍しい。
「いえ、実家です」
「大事でもあったの?」
「なんでも、妹が大学に進学するんですけど、母親が妹と一緒に暮らせって言ってきて……」
「小石川、この家出るのか!?」
「嫌ですよ!嫌だからどう説得しようかなと」
「嫌なら嫌って言えばいいだろ」
「聞きませんよ、うち親は。妹を優先しますから」
「妹ちゃんが反対すればいいんじゃない?」
「嫌がるでしょうけど、未成年のうちはって同居に頷かされます」
「女の子じゃねぇ」
「心配なんだろうな」
常備してある食パンをトーストしてコーヒーを入れる。
もちろんインスタントだ。
たまごを1つもらって目玉焼きも焼く。
ハムかベーコンが欲しかったがなかった。
和食が食べたい。白米とみそ汁が恋しい。
「今日の晩飯は、寒くなったし鍋でいいか?」
「賛成!」
「水炊きなら歓迎だ」
高田先輩がスマホを操作しながら言った。
先輩たちはすぐさま反応を見せる。
俺は口のつめたトーストに水分を取られているので挙手で賛成を示す。
「買い物行ってくるから」
共有財布というものが存在する。
基本的に自分の分は自分で、という方針だが居間や台所やトイレや風呂、共同スペースに必要なものや一緒に食べる食事など全員から定額徴収し共有財布に入れて出費はそこから出す。
金子先輩が管理していて毎月支払っている家賃から一部を入れている。
足りなくなったら追加を徴収、前の月の繰越し分が出ることもある。
買い物は高田先輩が行くことが多いので高田先輩がほぼ預かっている。
金子先輩に向かって高田先輩が手を出す。
今財布は金子先輩が持っているということだ。
「用事があるから帰るの夕方くらいになる」
「わかった。水炊き楽しみにしている」
「普通の寄せ鍋(塩)だっつーの」
「白米炊いておきますね」
「頼む」
そういえば、保存食棚にインスタントの鍋用のダシがあったなぁと思い出した。
今夜は久しぶりに和食が食べれる。
締めは雑炊にしてもらおう。
昼過ぎ。インターホンが鳴った。
かなり古くなっていたインターホンは金子先輩が新品と取り替えたので真新しい鐘の音がした。
取り次ぎに出た金子先輩が少し困っている。
誰かが通販で頼んだ品物が届いたわけではないらしい。
「小石川、妹さんが来たぞ」
「はあ!?」
ありえない。
妹が自ら兄に会いにくるなんて。
嫌われてはないと思うけれど、好かれているかと聞かれれば自信がない。
あいつにツンデレ属性なんてあったのだろうか。
慌てて玄関の扉を開ける。
そこにいたのは紛れもなく実妹の理香だった。
「お兄。ひさしぶり」
「お、おう。ひさしぶり」
普通に話しかけられ怯んでしまった。
今さら兄の威厳なんてあったものではないが、とりあえず普通に接しなければならない。
「寒いから入れてくれない?」
「えぇ!?」
男しかいない家に女子高生を入れるのは正しい行為だろうか。
実兄がいるのだからありではあるけど、良くない気がする。
「話がしたいの」
「……駅前のファミレスに」
「遠いしお兄とカップルに見られるのイヤなんだけど」
「…………」
入れたくない。
話などせず帰ってほしい。
「入ってもらえばいいじゃない」
俺の背後から蝦名さんが顔を出す。
自分がいるから大丈夫だと言いたいのだろう。
けれど、蝦名さんは美人キャリアウーマン風な見た目の男。性別を詐称している。
「お邪魔しまーす」
「あ、おいっ!」
理香は俺の脇をすり抜けてずかずか入り込んでいった。
玄関から廊下をまっすぐいった正面が居間なので迷う足取りなどなく居間に入る。
「こんにちは。小石川一郎の妹の理香です。突然お邪魔してすみません」
「ゆっくりしていってね」
「いらっしゃい。コーヒーでいいかな?」
「ありがとうございます。お気遣いなく」
以前からこの家に住んでいたかのように自然に食事用の椅子に座った。
お前が気遣え。
気遣うどころか早く座れと顎で指示する。
イラっとしながら刺さる視線を無視してコーヒーを入れる。
砂糖とミルクは置いてやらない。
無糖のコーヒーに顔をしかめながら啜る。飲めるようでなんとなく悔しい。
2口飲んだところで本題に入った。
「今日ママから電話あったでしょ?」
「ああ」
「じゃあこれ。忘れる前に」
「?」
「お兄宛の郵便物」
輪ゴムでまとめた封筒やはがきの束を机の上に置いた。
けっこうな量で、厚さ5センチはある。
公的には住所変更していないので郵便物は実家に届くものが多い。
「ありがとう」
「うん。お兄のおつかいした偉い妹のお願い聞いて」
「勝手に来て偉いかどうかは置いておいて、お願いって何?」
「…………お兄と二人暮らしするって、ことにしておいて」
「は?」
ことにしておく、ということはどういうことだろうか。
一緒に住みたくないけど我慢してやる、ということか。
一緒に暮らすていで自分は別の部屋を借りる、ということか。
「パパとママが心配してるってのはわかってるんだけど。ちょっと過保護かなって。志望校は遠いし一人暮らしはするんだけど、防犯のためにお兄名義にしてもらえたら」
理香の目が泳いでいる。
妹が嘘つくときの癖だ。
「正直に言え」
「………………友達と一緒に住むので名義貸して下さい」
ため息が出た。
俺に犯罪の片棒を担がせるみたいなことは止めてほしい。
志望校は俺の母校ではなく県外の大学だった。模試でA判定もらっているのでほぼ確定。
母校の方も候補に入っていたが第一志望ではないらしい。
地元からもこの家からもかなり遠いので強制的に二人暮らしするなら勤務先を考えないと行けない。
妹の都合で転勤なんてするわけないだろう。
しかも、俺が住むていなら部屋の家賃は俺持ちになる。
なぜ住んでもない部屋の家賃を払わねばならないのだ。
必至に隠そうとすることも怪しい。
「それって彼氏とか?」
「違う違う!女の子!ちゃんと友達!」
「じゃあ、ちゃんと言えばいいだろう。やましいことがないならさぁ」
「やましくない、けどさー。絶対ダメって、言われるもん」
「遊びに行くんじゃないんだから」
「お兄はいいって言われるからじゃん!」
「日頃の行いだろ」
妹は見た目が派手なわけでも不良行為をしているというわけでもない、どこにでもいる普通の女子高生だ。
人並みにおしゃれや遊びに興味があるらしく、休みのたびにどこかへ出かけていた。
充実していたようで帰ってくると疲労をにじませつつも大量の買い物を担いで自室にこもっていた。買ったものを堪能していたのだろう。時々漏れ聞こえる笑い声は不気味だったけれど。
バイトも頑張っているようだし問題はないように思える。
差があるとしたら成人した長男と未成年の末妹というだけ。
「もう願書出しちゃったもん。今更大学変更できないよ」
「だから正直に話せばいいだろ」
「正直に言ったら絶対ダメって言う!」
話は堂々巡り。
はなからダメと決めつけている。
「友達と一緒なんだろ?」
「うん。年に2回会う程度なんだけどね」
「なんだそれ」
「SNSで知り合ったの!メッセージのやりとりとか、時々リモート通話とかしてて」
「それで夜中に話し声が聞こえてたのか」
「その子と大学近いからルームシェアしようってなってんの」
友人とのルームシェアはすでに決定事項のようだ。
すぐにばれる嘘をついても意味がないだろうに。
「やっぱりちゃんと親に説明しろ。俺もついててやるから」
「……わたしの味方?」
「ああ。援護してやる」
引っ越すより簡単なことだ。
すぐに転勤は無理。
やっと半人前程度に仕事を覚えたのに1年未満で職場を変えるのは大変すぎる。
この家から出て行く気は毛頭ない。
彼女ができれば別だけど。
「ちゃんと話する……」
はじめからそうすればよかったのに。
口をすぼめて俯く妹は、幼い頃俺の後をついって回った頃の面影と重なった。
生意気でかわいげがないけれど、やっぱりかわいい妹だ。
「ただいま」
高田先輩が帰ってきた。
両手に買い物袋。かなり買い込んできたようだ。
「知らない靴があったけど」
「お邪魔してます……」
理香を見るとまず俺を睨んだ。
きっと女を連れ込んだと思われた。
「違います。妹です」
「小石川理香です」
「どうも、高田です」
お互いぎこちない挨拶をする。
心なしか理香が嬉しそうにしている。
高田先輩はイケメンだから見とれてしまうのかもしれない。
応援はしないけど。
「なに~お客さん~……って女の子じゃん!」
あくびをしながら階段を下りてきた生丸さんに見つかった。
夜まで寝ていればよかったのに。
兄として会わせたくない要注意人物だ。
さっさと理香を帰らせよう。
「小石川の妹か~。かわいいね~」
「触らないで下さい」
妹をなでようとした手を叩き落とす。
せめて顔と手を洗ってからにしてほしい。
妹が目を丸くして俺を見ている。
家にいる俺しか見たことないから他人に手をあげるところなど初めて見て驚いたのだろう。
生丸さんにしかしないけど。
口元押さえるほど驚くことだろうか?
「駅まで送るから遅くならないうちに……」
「えー、メシ食ってけばいいじゃん」
「未成年を夜遅く出歩かせるわけには……」
「私の車使っていいわよ。おうちまで送れば安心でしょ」
「俺も問題ない」
「1人2人増えようが変わんないだろ。鍋だし」
「女の子だぞ。変わるだろ」
「そこじゃない健吾」
「あの……じゃあ、ご飯いただいちゃいます。家に電話入れますね」
スマホを持ってそそくさと廊下に出て行った。
なんでそんなに嬉しそうなんだよ。
「あ、米炊くの忘れてた」
全員揃っていても台所に立つのは高田先輩1人だ。
1人でぱぱっとできてしまうということもあるけれど、自分のテリトリーに他人が入ることを嫌がる節がある。
特に金子先輩と蝦名さんは絶対的に立ち入り禁止を食らっている。
メインは魚。身が締まったタラだ。
切り身のタラに塩をふってしばらく置き、水気が出たらキッチンペーパーでさっと拭く。鍋で煮込むと身が崩れるので半分に切る。
ネギと白菜を洗って切る。
ニンジンは皮を剥いて輪切りにして下茹で。
春菊は食べやすいように3等分。
しらたきの代わりに結びこんにゃく。パックからザルに開けて水を切る。調理済みなので下茹ではなし。
きのこはしいたけとえのきだけ。しいたけはいしづきを取って笠に切れ込み入れる。えのきだけは根元を切って束をほぐす。
豆腐は木綿。六等分に切る。
サブメインは牡蠣。すでに下処理された加熱用。水に浸かった袋入りの牡蠣をザルに開ける。さらに水で洗うのは念のため。
だしはインスタントだから準備はこれで完了。
米を炊くのを忘れていた罰として俺も少し手伝った。
先輩が1人でやった方が早い、絶対。
ホットプレートのつけかえの鍋型に材料を並べ、だしをかけて電源を入れる。
温度は最高温。ふつふつしてきたら少し下げる。
全体的に火が通ったら牡蠣と春菊を後投入。牡蠣に火が通ったら完成だ。
鍋の周りには箸休めのタコ刺と大根サラダとイカのフリッター。
コロッケは用事先でもらってきたもので人数分なく、半分に切って盛ってある。
鍋の取り皿はお碗。金子先輩がセットで買っていたので数は足りた。
直箸しないようにお玉をセットする。
「いただきます」
理香は進んで鍋の取り分けをはじめる。
気を回したんだろうけど、一応お客さんなので座って食べていてほしい。
テーブルは4人掛けなので二人余る。
申し訳ないけど高田先輩と生丸さんは居間のローテーブルに座ってもらった。
先ほどから理香がチラチラ居間の方を気にしているけど、本人たちからの申し出なので遠慮は無用だ。
それとも高田先輩が目的なのだろうか。
兄としては本当にやめてもらいたい。あっちも女子高生なんて相手にしないだろうけれど。
チラチラ見ては嬉しそうにする妹を兄は見たくない。
インスタントのだしだけど美味い。
野菜の甘味と海鮮のだしが溶け出して塩味なのにまろやか。
アサリとかハマグリが入っていても絶対美味い。
少し時期が外れているので春になったら身の大きなアサリを食べよう。酒蒸し、バター醤油焼き……うん、居酒屋行こう。
合間に食べるシャキシャキ大根サラダは醤油ベースのタマネギドレッシングで食べる。口の中がすっきりする。
タコ刺とフリッターは、少ない。食べ始めより半分は減っている。
「金子先輩、海鮮好きっスね」
「うん。美味いぞ」
シーフードハンターによって食べ尽くされる前に取り皿に確保しておく。
「おかわりもらうぞ」
高田先輩がお碗を持ってこちらのテーブルに寄る。
2つのお椀にたっぷり装って戻っていった。
一方、生丸さんはビール片手にテレビを見ている。
高田先輩がなんだかんだ生丸さんの世話をしている。本人がそれをどう受け止めているかわからない。
「ねえお兄」
「なに?」
「あの2人って仲いいの?」
「高田先輩と生丸さん?いいんじゃない?小学か中学来の付き合いだって」
「幼なじみ!?ちょっとおいし……」
どこに興奮ポイントがあったか知らないけど、人の腕叩くのはやめろ。
鍋の中身が7割方減ったところで高田先輩が再び台所に立った。
鍋に湯を足し、調味料を適当に入れ一煮立ちさせる。
そこに投入させるのは乾麺。
ラーメン用の乾麺を3つ入れてほぐし、蓋をして3分。締めのラーメンの完成だ。
「トッピングはセルフな」
冷蔵庫からネギと茹で卵とメンマを出してテーブルに並べた。
用意が良すぎる。
もしかして米を炊き忘れるのも予想済みだったのだろうか。
締めのラーメンはずるい。お腹いっぱいなのにラーメンを見たら別腹ができる。
いろんなだしがとけだした汁を吸ったラーメンは美味かった。
「ごちそうさま」
すっかり暗くなった外は寒さが増していた。
鍋でせっかく暖まった体がすぐに冷えてしまう。
車の暖房をマックスにしてもなかなか暖まりそうにない。
実家まで車で2時間弱。電車より遅いが、電車で帰るより早く家に着く。
夜遅いのでそのまま実家に泊まりたかったが明日は月曜、仕事があるので即Uターンしなければならない。
後日改めて実家に行くと妹と約束した。
「お兄」
「なに?」
「あの家で暮らすの楽しい?」
生まれ育った実家を出た生活は、就職して一変したこともありまさに四苦八苦。
家でやってもらっていたことを自分でやらなくてはいけない大変さ。
大部分は先輩たちにやってもらっていた、今もか。
それはそれで大変なことが多かったけど。
気のおけない人たちとの共同生活は。
「うん。楽しい」
きっと一人だったら体験できないことばかりだろう。
帰った家に明かりがついていない寂しさ。
誰かが帰ってきたときの安心感。
今日のようにみんなで食卓を囲む温かさ。
共同生活で良かったと思う。
「そっか。いいなぁ」
妹も俺と同じ道を進むというなら応援したくなる。
きちんと親を説得してやろうじゃないか。
一区切りとなります。
次回の更新は間が開き、11月頃となります。