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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
5章.正体不明のお姫様(主人公視点:サクヤ)

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#2-1.スイーツ スイーツ! スイーツ!!

 お二人に誘われ向かったのは、リーシア東にちょっと前にオープンしたのだというレストラン『プリムローズ』。

可愛らしいピンクの星型のお店で、前々から気にはなっていたところだった。

それなりにお高いらしいのが入れなかった理由だけれど、こんな機会が訪れるなんて、すごく嬉しい。


「わあ、プリムローズ……♪」

とっても乙女チックな丸文字の看板をくぐり、真っ白なドアのまあるいノブをローズさんが開くと……そこは別世界。

壁紙の色はクリーム色とピンク系のあわせ技。

入ってすぐのカウンターの上には可愛らしいクマさんのぬいぐるみがちょこんと座っている。一瞬で眼が魅かれてしまった。


「いらっしゃいませ~♪」


 そうして、カウンター脇で私達を待っていた店員さんは、赤と(みどり)のチェック模様のミニスカートに白いフリル付きのブラウス、ピンクの猫柄模様のエプロンという出で立ち。

黒いソックスと頭の白いベレーがアクセントになっていて、可愛すぎる!

しかもこの店員さんが見慣れた可愛い系の人で制服との相乗効果が――

「――って、プリエラさん!?」

色々乙女チック空間に眼と心を奪われて気づくのが遅れたけれど、私達の前に立っているのは間違いなくプリエラさん。

「えへへー、いらっしゃいサクヤ。ローズとドロシーも!」

そうこうしている間もプリエラさんはにこやかあに声をかけてくれる。

ドロシーさん達は特に驚きもしていない辺り、もしかしたら知ってたのかもしれない。

「こんにちはプリエラ。制服変わった?」

「前は黒いエプロンでしたよね。チョーカーがちょっと犯罪チックだった気がしました」

「いやー、前のも可愛いと思ってたけど、他の店員の子に不評でさー。店長がこないだ夜なべして縫ったの」

「夜なべで制服ができちゃうんですね……すごいなあ」

ぱっと見で雰囲気が違ってくる店員さんモードのプリエラさんも、話してみるといつもと変わらない様子で、安心して話に入り込めた。

だけどプリエラさん、スタイルが良いから短いスカートがちょっと危なっかしく見える。

男の人はあんまりこないお店だろうから問題にならないのかも知れないけど……

「それじゃ、席に案内するね! 三名様ごあんなーい♪」

フリフリと揺れるプリエラさんのスカートを心配しながら、先を歩く二人についていく。



 案内された席はお店のカウンター近く。

店内が一望できる、丁度真ん中のテーブル席だった。

軽く見渡すと結構賑やかで、女性客ばっかり、楽しそうにお喋りに華を咲かせている。


「私はピーチティーとパンケーキを」

「そんじゃ、私はストロベリーグランデとプリンパフェ。生クリーム特盛りでよろしく!」

「あ、あの、私はアイスコーヒーとチーズケーキパフェを……その、生クリーム多目で」


 渡されたメニューに眼を通してしばし。

悩んだ末に三人ともがメニューを決めて、丁度現れたプリエラさんに伝える。


「かしこまりました♪ ピーチティーとパンケーキ、ストロベリーグランデと生クリーム特盛りのプリンパフェ、アイスコーヒーと生クリーム大目のチーズケーキパフェですね? 少々お待ちあれ~♪」


 注文時、そつなくメモを取っていたプリエラさんは、全部聞き終わるや、満面の笑みでお辞儀して去っていく。

慣れてるなあ。


「プリエラさん、結構手馴れてるんですねえ」

さっき案内された後に聞いたのだけれど、やっぱりプリエラさんはこのお店でバイトをしていたのだとか。

私はまだリアルでもアルバイトというものをしたことがないので、こういうのがてきぱきこなせる人っていうのが羨ましく思える。

というか、すごく感じる。

「プリエラは結構器用だよ? オープンカフェで調理係やってた事もあったし、ファンシーショップで働いてた事もあったし……剣士ギルドの受付嬢とかしてた事もあったわね」

「基本的に狩りをしない人だから、生活にはかなり工夫が必要みたいで、割と手段は選んでない印象があるわね」

普段全く見ることのないプリエラさんの苦難の日々を垣間見てしまった気がする。

いつもはニコニコしてるから解らないけれど「プリエラさんも大変なんだなあ」と。

「でも、嫌がってしてる仕事はないのよ。楽しんでるし、仕事そのものは真面目に要領よくこなすから、雇う側も大体笑顔なのです」

「さりげなくハイスペックなんだよねー。そして爽やかなので人に好かれるという」

「あー……なんとなく解る気がします。その、人に好かれるっていうのは」

一緒にいてすごく楽しいし、安心できるし、とにかく時間が過ぎるのが早く感じる。

結構勢い任せなところとか天然さんなところとかもあるけど、一緒にいて飽きることが無いっていうのはすごいと思う。

この辺り、ローズさんもドロシーさんも楽しげに語ってくれるので、他の人もきっとそうなんじゃないかなあと。


「お待たせしました! ピーチティーとパンケーキはドロシーだよね。ストロベリーグランデと特盛り生クリームのプリンパフェはローズ! それから、アイスコーヒーと生クリーム多めのチーズケーキパフェはサクヤ! どうぞごゆっくりー♪」


 ほどなくして、プリエラさんが他のウェイトレスさんを連れてスイーツを持ってくる。

お喋りに華が咲きそうだったけれど、一旦中断。

テーブルに置かれた甘いものを前に、女の子は一瞬無口になるのだ。

そう、眼を奪われて。心を奪われて。鼻先をくすぐられて。


「食べよっか」

「うんうん」

「えっと、いただきます」


 三人、目配せするようにして小さく頷き、テーブルに置かれたスイーツに手を伸ばしていく。


 ドロシーさんのパンケーキは、シンプルだけどまあるい手の平大のパンケーキが三枚も積まれていて、更にその上にオレンジソース。

お皿の隅っこには特大の生クリームの山にチョコソース。

地味にココナッツの粉末が振られているのもポイントが高い。

お皿とは別にメープルシロップやハニーシロップ、ココナッツソースなどが用意されていてカスタマイズ可能という自由度の高さ。

お手軽そうに見えてかなりスイーツ力が高いと思う。


 ローズさんの場合、まずストロベリーグランデがすごい。

イチゴのジェラードの乗ったストロベリーシェイクにバニラシェイクという二部構成。

サイズも大きめで、ちょっとしたパフェ用のグラスを使っている。

更にプリンパフェ。大きなプリンが一番上に乗っているのはいわずもがな、間にはさくさくのコーンの層やビスケットの層、バニラアイスの層なんかが丁寧に敷き詰められている。

一番上のチョコレート掛けのバナナとかリンゴとかも豪勢で、更に生クリーム特盛りだからか、なんかもうすごいことになっていた。

その姿はまるでタワーのよう。

リアルだと、ちょっと糖分とかカロリーとかが怖いレベルだと思う。


 私のチーズケーキパフェも、中々のものだと思う。

構成はローズさんのプリンパフェに似ているようで、カシューナッツ入りのチョコレートアイスが乗っていたり、間にチョコブラウニーが詰まっていたりと、かなりアレンジされている。

肝心のベイクドチーズケーキもかなり濃厚。

ちょっとチーズ臭い感じなのもポイントが高い。女の子受けはし難いかもしれないけれど。

食べながらにちょっともさもさしてくるのだけれど、コーヒーには合うと思う。ブラックだと特にいい。


 三人、とても幸せな気持ちのまま食べているんだと思う。

私もそうだけど、ドロシーさんもローズさんも顔が緩みっぱなし。

タクティクスのときのキリッとしたお二人とはまるで違う、油断しきった顔が見られて、なんとなくお得な気持ちになった。


「んー……いいわねえ。甘いものは」

「心が満たされるよ~。現実でこんな甘いものばっかり、滅多には食べられないしねえ」

「幸せです」


 満たされた心持ちのまま、ぼんやりと窓の外を眺める。

まだ雨は降ってない。案外、持ちこたえてくれているらしかった。


-Tips-

プリムローズ(店舗)

営業時間(ゲーム時間で):10:00~20:00


リーシアに最近オープンしたレストラン。

『女性向け』を前面に出しており、そのピンキーなカラーとマッチした豊富なバリエーションの甘味によって女性客に絶大な人気を誇る。


飲食店ではあるが冒険者酒場などのように情報交換の場として活用される事は少なく、あくまで食べる事、そこで休憩する事がメインの場となっており、冒険や商売に疲れた女性の憩いの場として常に賑わっている。

反面、男性客にはこの外装のカラーや女性客の多さから近寄り難い雰囲気をかもし出しており、あまり利用される事はない。

ただし、ウェイトレスの制服は男女共に一定の人気があり、これを見たいが為周囲の視線に耐えながら通う猛者も少数だが確認されている。


レストランだけあって甘味以外にも料理のラインナップが充実しているが、一部店員(主には店長)の暴走によって常識的にはありえないメニューも少なからず存在しており、注文の際には注意が必要である。

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