表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
4章.ギルド活動!(主人公視点:ドク)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/663

#9-4.報告「コーラル村襲撃」について

「悪逆の塔に入った俺達の前に、変な、亡霊みたいな男が現れてさ……『何だこいつ?』って不用意に近づいたら、変な空間に飛ばされたんだ」

教会の奥の懺悔室にて。

以前綺麗な歌を聞いたここでは今、カイゼルが、ミゼルに事情を聞かせていた。

俺も後で話を聞かせるつもりだったので、一緒になって。

「そこでは、何匹ものでけぇドラゴンがいてよ。俺達、霊や悪魔の対策はばっちりだったが、まさかドラゴンが出るなんて思いもしなくて――ボコボコにやられちまったんだ」

「悪逆の塔にドラゴンが……? あそこは貴方がたも知っての通り、悪魔と霊種族しかいない場所だったはず……」

「ああ。そのはずだったんだ……だが、本当にいたんだよ! なんか、やたら広い場所でさ、馬鹿でかい赤いドラゴンを中心にして、ドラゴンが一杯!!」

カイゼルも冗談を言うような場面ではないらしく、ギリ、と、悔しさを滲ませてテーブルを叩いた。

飲みながら話せるように、とミゼルに出された紅茶が、ぴちゃりと跳ねる。

「それで、ドラゴンの群れに敗れ、逃げ出したと?」

「いや……俺達も逃げようとしたんだが、なんか、変な壁みたいなのに遮られちまってよ。転送陣も転移アイテムも使えねぇ。もうダメだ……そう思ったときに、ウィッチが現れたんだ」

「ウィッチが?」

カイゼルとミゼルのやりとりを聞きながら、「なんとなく俺達と話の流れが似ているな」なんて思った物だが。

そこで助けが入るというのは、なんとも都合がいいというか、かっこよく感じてしまった。

「赤い帽子のウィッチだった。一人でドラゴンの群れ相手に果敢に挑んでな――最後には赤いドラゴンも倒しちまった。確か、『セキ』とか名乗ってたかな。金髪の若い女だったよ」

アレはすごかったぜ、と、顎を撫でながらに語るカイゼル。

さっきまでと違い、どこか愉しげな、いや、浮ついた顔をしていた。

「その乱入してきたウィッチは何者なのでしょうか?」

「解らん。解らんが……そいつのおかげで俺たちが助かったのは確かだぜ。『無事でよかった』とか言ってたし、何か知ってそうなんだがな」

俺達の方のマジシャン二人組みたいに偶然その場に居合わせた、とかではなく、初めからそうなる(・・・・)のを見越してその場に現れたのだとしたら、今回の件、もしかしたらそいつらに関係があるんじゃ、と、勘ぐってしまう。

「まあ、俺の方はそんな感じだよ。結局、悪逆の塔攻略は失敗に終わっちまった。状況が状況だから、皆無事に生還できただけめっけもんだけどなぁ」

「……そうですね。ミルクいちごの皆さんが誰一人欠けることなく戻れたのは何よりだと思いますわ」

思案顔でカイゼルの話を聞いていたミゼルだが、話が終わったらしいと判断したのか、静かに微笑んでいた。



「ドクさんの方のお話を、まだ聞いてませんでしたね」

そうして、俺の方へと視線を向ける。

どうやら俺の番が来たらしい。

「ああ、それなんだが……カイゼル。お前、『コーラル村襲撃イベント』って覚えてるか?」

話す前に一つ、カイゼルに確認と、それ次第で伝えたいことがあったのだが……やはりというか、襲撃イベントの事を出すと、暗い顔になっていた。

いつも陽気にがはがは笑うこの親父が、だ。それだけでもう、察しがついてしまう。

「……やな事思い出させないでくんな。すまねぇがドクさん。関係ない話なら俺はここらで――」

そして、不機嫌そうに席を立とうとする。

「まあ待てよカイゼル。今回の事、お前も関係する事かもしれん」

いや、間違いなく関係していたに違いなかった。おそらく、俺よりも当時のことについて詳しかったんじゃないかと思っている。

「……どういう事だよ?」

不機嫌さはそのままに、訝しげに俺の方を睨みつけながら、また席に戻ってくれる。

一応、聞くだけは聞いてくれるらしかった。


「実は、自分のとこのギルメンがコーラル村跡地に度々足を運んでいる、と、ドロシーから相談されてな」

一から説明するのはしんどいが、これに関してはミゼルに対しての説明も含めてなので省略はしない。全部話すことにした。

「ドロシーから聞くに、ギルメンはそこで『歌をうたう亡霊』と出くわしたらしいんだ。その時は大丈夫だったらしいんだがな」

「亡霊って……」

話の繋がりを感じられたらしい。カイゼルももう、さっきまでと同様、真剣な顔つきに戻っている。

ミゼルはというと……黙って聞くつもりらしく、眼を閉じ、胸の前で祈るように手を組んでいた。

「まあ、その時はちょっとした好奇心と、ドロシーがあんまり心配そうだったからっていう軽いつもりでさ、一浪と二人、ドロシーに協力してやろうって、コーラル村に向かったんだよ。そしたら……やっぱ廃墟でな。人っこ一人いなかったんだ」

「そりゃそうだろ。あの村は……もう、三年も前に――」

「ああ、過去の襲撃事件で悲惨な事になってたっていうのは知ってたつもりだった。だけどな……探索を続けていく内に、おかしな光景に出くわしたんだ」

そこで誰もいなければ、何もなければ、話はそれで終わっていた。

だが、俺達は見てしまったのだ。そこにあるはずのない(・・・・・・・・・・)光景を。


「――そこは、酒場だった。地下にある、割とどこの街にでもあるような酒場でな? そこに、たくさんの冒険者と、村人と――歌姫がいたんだ」


 俺達も、カイゼルと同じだった。

見た光景こそ違えど、あるはずのない光景に、いつの間にか埋もれてしまっていたのだ。

「歌姫って……なあおい、それってまさか、『ミレニア』って娘じゃないだろうな!? 黒髪の、小さな花をつけた――」

カイゼルは、鮮明に覚えていたらしい。

やはり、こいつはあの村に行った事があったのだ。

俺が本質的に知らない、もう、知る事の出来ないあの村の、平和だった頃を知っているのだ。

「……俺達は、『襲撃イベント当日』のあの村に居たんだ。黒猫の、ドロシーが探してたメンバーも、そこに居た」

カイゼルの疑問に、敢えてすぐに答えることはせず。そのままに話を続ける。

「ルーキーばっかりだったよ。上位職も数えるほどしかいなくて。どいつもこいつも、今なら二線級未満の、古い流行の装備をつけてた。イベントが行われた当時なら、きっと考えうるだけの上等な装備だったんだろうな」

「ああ……」

息を呑みながらに、カイゼルは、俯いてしまう。

思い出したくない過去だったのだろう。傷口を抉るような真似をしている自覚はある。

だが、これは必要なことだった。

今後、同じようなことが起きないとは限らないのだから。


「襲撃イベントは、最初こそ大したものじゃなかった。強くてもメタルバウ位のもんでな。黒猫の連中と協力して、死者の一人も出さずに乗り越えたさ。だが、そんなものは前座でしかなかったんだ」

灰色の波を目の当たりにしたその瞬間を思い出しながら、奥歯を噛み、こぶしに力を籠める。

「――千年ネズミだった。大量のネズミを引き連れて、村を襲撃してきてな。まず、酒場の外に居た奴らの大半が、そいつらに飲み込まれたらしい。骨しか残ってなかったよ」

「今でさえあいつを倒すのはホネだって言われてるもんな。ルーキーや二線級の装備しかない奴らじゃ、太刀打ちできるはずがねぇ」

「ああ、全くだ。それでも、俺達はなんとか崩れそうになった酒場から脱出して、迎撃態勢を整えていったんだ。転送陣や転移、そういった効果のアイテムでの脱出は不可能らしかったから、な……」

このあたりはカイゼルの体験と酷似している点だと思う。

逃げられなかったのだ。追い詰められ、危機的状況だったにもかかわらず、逃げることは許されなかった。

「出来る限りの準備をして、千年ネズミ本体をなんとか……一か八かでも倒すことが出来れば。そう思って挑んだ。挑んだはずだったんだ」

「……何が起きたんだ」

その先を察したのか、カイゼルが眉をひそめながら、俺の顔を睨み付ける。

「――ミレニアは、俺達を応援してくれていた。歌を歌って、俺達を元気付けようとしてくれていたんだが――どういう訳か、その歌が聞こえ始めた直後、百日ネズミがレイスに変貌してな……まず、前衛の一人が無数のレイスに噛まれて一瞬で霊象レイスになっちまった」

レイスに変貌、のあたりで、何か覚えがあるのか、ミゼルはピクリ、眉と耳を動かす。

黙ったままだが、もしかしたらこいつには心当たりがあるのかもしれない。

「なんだそりゃ……そんな情報、はじめて聞いたぞ。なんで百日ネズミがレイスになるんだよ?」

「俺だってよくは解らんさ。ただ――霊象レイスが他のレイスに触れて、その触れられたレイスが霊象レイスに変異して――気がつけば、ほとんどのネズミは霊象レイスになっちまってたんだ。そして、そんなヤバい状況下だったにも関わらず、ミレニアは幸せそうに、愉しそうに歌を歌っていた」

あの光景は、今思い出しても奇妙かつ、恐ろしげな光景だった。

まるで歌姫が霊象レイスを歌で指揮してるかのような、そんな風に見えてしまったのだ。

「その時の俺は追い詰められていたからな……疑いもなく、彼女を攻撃するようにドロシーたちに伝えた。結果として、それは正解だった訳だが――」

ホーリーライトレイの一件までは話す必要もないだろうと思い、割愛した。

「ミレニアを倒した直後、真っ暗な空間に変わったんだ。そこで、生き残った俺達以外の、それまで一緒に戦ってた奴らが、ぼんやりとした姿で現れて、事情を説明してくれた」

「……ドクさんも、真っ暗なところに放り出されたのか」

「ああ。なんでそうなったのかは解らんが、そいつらの説明によれば、『ミレニアの姿をした何か』に操られて、過去をなぞった劇のようなものに参加させられていたらしい――何人かは巻き込まれて、そいつら同様劇の参加者になったまま帰れなくなったようだが」

これに関しては、俺達よりもミゼルの方が詳しいかもしれない。

不安ごと・心配事の相談受付というのは、教会の役目のひとつでもある。

ハイプリエステスは常に人の心の不安を取り払う為、色んな人の話を聞いている。

立場上、そうやって戻らなくなった人の事も知っているのではないか、と。


「その場にいた奴らの中に、カイゼル、お前に会ったらよろしく頼むって伝言を頼んできた奴がいた。ロカっていう奴なんだが……」

そうして、カイゼルに対しての本題に入る。

流れの説明も必要ではあったが、こいつにとってはこちらの方が重要だろう。

「ロカだと!? あの、戦士のロカか!? 襲撃の防衛に誘ってくれた――」

「そうらしいな。お前に『もしこれなかったのを気にしてるなら、もう気にしなくていいって伝えてくれ』と頼まれたんだ」

目を見開き、肩を震わせたカイゼルに、一番伝えたかった事を伝える。

「……う、く……くそぉ――」

するとどうだろう。カイゼルは悔しげに歯を噛み、ズドン、と、テーブルに拳を叩き付けた。

茶がこぼれ、ボコリとテーブルが抉れるが、それを気にする奴はいない。


「――し、仕事がちょっとだけ遅くなって、寝るのが遅れちまったんだ。その所為で、俺はあいつらと合流できずに――ログインした時には、もう村は壊滅しちまってた。俺があの村にたどり着いたときには、もう(・・)何もいなかったんだ」

泣き声を噛み殺しながらに。拳を叩き付けながらに。

カイゼルは、一人漢泣きしていた。

慰める事なんてできやしない。

ミゼルも解っている。黙ったまま、ただ、カイゼルが泣くままにさせてやった。


「うぐ……す、すまねぇな。ガラにもなく、情けないところを見せちまった」

少しして落ち着いたのか、カイゼルは鼻を啜りながら、晴れがましい顔で照れくさそうにしていた。

ミゼルと顔を見合わせ、小さく頷く。話の再開だ。

「俺としては、今回の二つの事件、類似部分が多いように思えるんだが、ミゼルはどう思う?」

さっきまでだんまりのまま話を聞くだけだったミゼルに、ここまでの経緯からの感想を問う。

ミゼルも閉じていた眼を開き、静かに、言葉を選ぶように語り始めた。

「……気になる点は多いですね。カイゼルさんや黒猫の人たちが事前に目にしたという亡霊の存在、そこに在る筈のない光景と遭遇し、そこにいる筈のない敵と戦わされたこと――どうやら、私たちが知り得ない何かが起きているようですね」

祈りの姿勢を解き、俺達を見回す。

「ミルクいちご同盟の方々も、黒猫の方々も、そしてドクさん達も……無事戻れた事、そのものは喜ばしい事ですが、今後も似たようなことが起きないとも限りません」

「ああ、俺もそれが一番怖ぇと思った」

「あんなこと、もう二度と、誰にだって味わわせたくはないな」

ミゼルの言葉は、俺の、いや、俺達の懸念と合致する。

実際にソレを体験し、その脅威を知った身としては、到底捨て置けない事態だった。

「ドクさんの話も踏まえてだが……今回の件は、今まで居なかったか、存在を知られていない未知のモンスターが、俺達の目に触れるような場所に現れるようになった結果、と思って良いのかい?」

「恐らくは――ですが、公式サイドからのその手の情報は欠片もない辺り、不具合によって生まれた状況の可能性も全くないとは言い切れませんね。いずれにしても運営さんに報告の必要があります」

これがバグによるものなのだとしたら、俺達だけでどうにかできる問題じゃない可能性もあった。

下手に関わって今度こそ帰れなかったら、そう考えればここは無理に手を出さずに運営サイドに頼るのが妥当というものだろう。

だが、こないだの『居ないはずの時間帯に湧いたマタ・ハリ』といい、最近は変な現象が起きすぎている。

何かの前触れなんじゃないかと、もう少し警戒する必要があるのかもしれない。

「このことは、混乱させない為にも一旦は伏せて置いて下さい。私達が独自に広めるよりも、運営さんに周知してもらったほうが混乱は少ないはずですから――」

「そうだな」

「俺もそう思うぜ。こういうのは、運営さんに頼んだほうがいい」

ギリ、と真剣な目つきで見つめてくるミゼルに、俺達は頷いて同意する。

「――結構です。ではお二方とも。本日はご苦労様でした。どうか、ゆっくり休んでください」

俺達の態度に安堵してか、最後の一言を言う時だけ、ミゼルは柔らかな微笑を見せてくれていた。


-Tips-

ウィッチ(職業)

魔法職系上位職の一つ。呼び名は特にない。

ウォーロック系統の前衛・中衛職で、万能型。

プレイヤー自身の好みの色のとんがり帽子とブラウス、ミニスカート、武器として箒やモップ等の掃除用具カテゴリーのものなどが職業としてのカラーとなっている。

尚、スカートの下にはスパッツかドロワーズを履くことが義務となっている。


同じ魔法職系別系統の上位職であるメイジと比べると『メテオストーム』以外の範囲破壊魔法の性能に乏しい反面、箒などを活用しての高機動戦闘、奇襲やヒット&アウェイなど、様々な戦術選択ができる点がメリットとなっている。


また、バトルメイジと比べた場合、詠唱速度では負けており、魔法の火力でも負けているが、近接戦闘能力はややウィッチの方が優れている。

装備可能な防具こそ種類が乏しいものの、足回りの速さは魔法職系トップで、三次元的な戦いが可能な事から特に対人戦闘にはめっぽう強い。


同じウォーロック系列の同位別系統職であるウィザードとの最大の差異はその高速移動時の手段の差であり、ウィッチは物理的に掃除用具などを用いて空を飛ぶことができるが、ウィザードは転移魔法(奇跡とは別扱い)によって移動距離を短縮する事ができる。


特徴的なスキルとしてウィッチの代名詞たる超広範囲物理破壊魔法『メテオストーム』、

自身の武器に魔法を直接付与する『マジプラ』、

箒などの掃除用具カテゴリーの武器を活用しての強斬撃攻撃『ブルームバッシュ』などがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ