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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
4章.ギルド活動!(主人公視点:ドク)

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#9-2.無事帰還

 後に残ったのは、茜達を探して入った、あの地下通路への入り口のあった廃屋。

気がつけば俺達は、そこに立っていた。

地下通路への階段もいつのまにか消えていて、あるのはただ、焼け落ちた部屋のみ。

「……帰るか」

しばし呆然としていたが、なんとなくそんな言葉が口から出てしまう。

「そう、ですね……」

ドロシーも、あわせてくれる。

皆とぼとぼと歩き出し、薄暗かった場所から外に出ると――もう夕方になっていた。


「ああ、そうか……まだ、こんな時間なんだな」

当たり前のように夜を過ごしていたように感じていたが、そんなはずはないのだ。

ゲーム内での時間経過は、リアルと直結している。

反転こそしているが、ゲーム内で深夜ともなれば、それはもう、リアルでは寝過ごしているレベルで朝なのだ。

当然、ログアウトする気がなくたって強制的にリアルの自分が目を醒まして落ちてしまっているはずだ。

それが発生しない。これ(・・)自体がおかしなことだったのだ。

「なんか、すごく長いこと居た気がしますねぇ……」

茜が眼をコシコシとこすりながらドロシーの隣に立つ。

「本当、そう……」

ドロシーも手の平をぎゅっと握りながらそれだけ返し、口元を結ぶ。

夕焼けの色は俺達に優しく、そして何故だか、目もとには優しくなかった。

あの狂乱の夜は、悲劇の一夜は、全て演劇(・・)だったのだ。

それが何だったのかは解らないままだが、無事に生きてこうして元の世界に戻れた。

それは、嬉しい事なんじゃないかと。


「いやはや、我輩も生きて帰れたようでよかったぞ」

「ほんとう、どうなるかと思っちゃいました」


 そうして、忘れていたが、このマジシャン二人も俺達同様『生還者』だったらしい。

二人、ほんわかとした顔で夕陽を眺めていた。

「お前らは、どういう経緯でこの村に?」

かたや初級マジシャン、かたやよく解らん初級マジシャン。

二人揃ってにしろソロにしろ、ここにいるというのはいささか疑問が残る二人組であった。

どうやってここにきたのか、気になったのだ。

「私は腕試しでここにきたんです。光魔法の修練もかねて!」

「我輩は極炎魔法を遠慮なく撃てる場所を探していたのだ……そこで、『彼女』と出会った」

「私もです。丁度このあたりで歌ってるのを見かけて――気がついたら」

説明ながらに、先ほどまで俺たちがいた廃屋を見つめる。

『彼女』というのは、茜達も見た亡霊だったのか。

今となってはソレが何であるのかはもう解らないが……やはり、こいつらも『巻き込まれた口』らしかった。


「あの、皆さん。ほんとにありがとうございました。皆さんのおかげで私、なんとか戻ることが出来ましたし……」

「我輩からも礼を言うぞ。このハイアット=アーマルディ! この恩は決して忘れん!!」


 二人揃ってぺこりと頭を上げる。仲が良いなこいつら。

その仕草に、俺もドロシーも、その場にいた皆全員が吹き出しそうになっていた。

「礼を言うのはこっちのほうだぜ。お前らの協力が無かったら、この結末はなかったかもしれんし、な」

特に色白眼鏡の極炎魔法とやらは、あの状況下では本当に助かっていた。

最初に役立たずだなんて思ったことを後悔している。

こいつらに限らず、誰かしら一人欠けてたら多分、俺達は全滅してたんだと思う。

そうなっていたらと思うと、今でも震えが止まらない。

そうだ、俺もきっと、怖かったんだ。死ぬのが。絶望の中、倒れてしまうのが。あきらめてしまうのが。


「お二人は、これからどうするおつもりで?」

にこやかな雰囲気の中、ドロシーが二人の元に近づき、問いかける。

「私は、もう少し旅をして、力をつけたいと思います。今のままだと何かあった時に活躍できないですし……それに、こういう事があったって、知らない人に教えてあげたいんです!」

金髪ツインテ娘は、中々殊勝な娘だった。元気一杯に笑い、手に持ったクリスタルの杖を振り回す。

ドロシーが誘わないならサクヤのいい仲間にでもなってくれればと思ったが、旅に出るのでは仕方ないと、諦める事にした。

「我輩はしばし、メイジ大学にて魔法の研究をしたいと思っている。リーシアに滞在し、機会があったら皆ともまた、顔を合わせることになるかもしれぬ」

尊大な口調で口元をにやつかせる色白眼鏡は、大仰に手振りしながら、手の先から炎を出す。

「最強の獄炎魔法――いつか、我が身が扱う事の出来る、その日の為に!!」

……色々と行動に難のある奴だが、努力家なのはいい事だと思った。サクヤとはあまり会わせたくないが。

「では、お二人をギルドに誘うのは遠慮したほうがよさそうですね。もし行くあてがなければ、と思いましたが」

ドロシーも色白眼鏡の口調には困惑していたようだが、とりあえず、と、話をまとめにかかった。

「折角ですが、長く一緒にいると別れがつらくなってしまいますし……」

「ククク、ギルドには入ってやれぬが、我輩の力が欲しくなったらいつでも言うが良いぞ! 此度の縁と恩義、決して忘れるものではないのだからな! クハハハッ」

まあ、こいつらがいいのなら、それでもいいに違いない。

生きてさえいれば。そう、生きてさえいれば、また会う事だってあるのだろうから。


 そうして、とりあえずはリーシアに戻ろう、という事になり、ドロシーが恐る恐る転送陣を地面に描いてゆく。

そうしてトン、と杖先でスイッチ――ポワンとした光が地面から溢れ出し、目的地(リーシア)へと繋がる。


「良かった……これで皆、帰れますね」

「良かったぜ。これでまだつながらなかったらどうしようかと」

「やめてくださいよー一浪さんっ! 『夢が終わったと思ったら夢じゃなかった』とか怪談過ぎますよーっ」

「ふふっ、さあ、帰ろう。私達の街へ」

「おなかすいた……」


 皆が口々に笑いながら、ポータルへと入ってゆく。

俺もみんなの後に続いて入ろうとして、「そういえば」と、その足を止めた。

周囲をぐるりと見回すと、晴れやかな風が頬を撫でる。

「……ゴースト、いなくなったな」

俺とドロシーだけが残った村の中。

確か、俺たちがここに来たときはゴーストだらけだったはずのこの村が、やけに静かで。

どこか救われたような、清浄化されたような、そんな気がしたのだ。

「この村に起きた悲劇が、大量のゴーストを生んでいたのだとしたら――私達は、彼らの救いになれたのでしょうか?」

「どうだろうな……そうであって欲しいが――」

結局、アレが救いだったのかなんて、俺たちには解らなかった。

笑いながら消えていく奴らに「良かったな」なんて、言えた義理は無いのだ。

特に俺は。あの時。襲撃イベントが起きたその日にその場所にいなかった俺には。

安穏とした中生きていて、そんなことが起きていた事すら知らず、聞いた後も忘れ去っていた俺に、そんな事を想う権利など、ないのだと思えたのだ。


――それが、どこか悔しかった。

どうせなら、最初から救いたかったじゃあないか、と。


「……歌?」

それは、いつから聞こえたものだろうか。

ポータルのみが光るその夕暮れの中。

どこか聞いた事のある女の声で、静かな歌が聞こえたような気がした。

揺らめく夕陽の中に一点、黒い、翼の生えた影のようなものが見えた気がした。


 そうして、ハラリ、と一枚、黒い何かが俺の足元に落ちてきた。

「……羽根、か」

カラスのソレよりも艶やかで、黒い羽根が一枚。キラキラと妙な光を残していて、変に神秘的に感じられたからか。

なんとなしに拾って、懐に入れる。

記念品、なんて集めるようなほど素敵なイベントでもなかったが。

何故か、忘れてはいけないような気がしたのだ。

「ドクさん……?」

首をかしげながら俺の顔を見つめるドロシー。

もうすぐポータルが消えるらしい。

そのままでは二度手間なので、と、さっさとその中に足を踏み入れた。



 リーシアの街は、いつもと変わりがなかった。

晴れやかで温か。人が沢山いて、皆楽しそうで幸せそうだ。

――ああ、ようやく帰ってきた、という気になる。

ただの気まぐれでコーラル村に向かおうとした割には、随分と長い強制イベントだったな、と、深いため息が出てしまう。

「とりあえず、別れる前に教会に行くぞ。大丈夫だとは思うが、一応全員清めてもらえ。ミゼルに今回の事を説明しときたいし、な」

「私も同感です。さあ、皆さん。お疲れでしょうが、もう少しお付き合いくださいね」

ドロシーの掛け声に、皆が小さく頷く。

先ほど別れのような事をしておいてアレだが、マジシャン二人にももうちょっと付き合ってもらうことにする。

今大丈夫だから問題ないとは思うが、万一別れた後に赤黒い骸骨になってしまいました、なんてなったら目も当てられない。

皆安心ニコニコ笑顔で別れたいものである。


-Tips-

デュエリスト(職業)

戦士系下位職業の一つ。特別な呼び名はない。

戦士系別系統職の戦士と異なり重厚な鎧などは身につけず、胸当て一つで身軽さを活かして斧やハンマー、剣などでダメージを稼ぐ前衛職。


基本的には1:1の戦いを前提にした職で、戦士系でありながらその戦闘スタイルは剣士系に近いものがある。

ただし剣士系と異なり武器に自由度が高いのと、持ち前の筋力の高さから重量物を自在に持ち歩ける力強さが特色となっている。


地形に関係なく1:1ならば優位に戦える反面、複数相手では剣士系以上に不利となり、狩りにおいては立ち回りが難しいテクニカル職、どちらかといえばボス狩り向きであると言える。


特徴的なスキルとしては両手持ちのハンマーを地面に叩き付けて強振動を起こして近接者の姿勢を崩させる『ハンマーストライク』、

片手斧を投げつけ中距離の相手にダメージを与える『アックスブーメラン』、

剣による超近接ノーディレイ攻撃『ゼロ斬り』などがあり、そのほか武器によって様々なスキルが用意されており、多芸である。


上位職として『グラディエーター』『バーサーカー』などがある。

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